その16:初めての涙
彼女が日本に戻ってきて会った時の事を書こうと思っていたんだが、沢山のお土産をもらった以外はいつもと変わらないデートだったので省略しようと思う。
今回書くのは日本に戻ってきてから3回目か4回目のデートの時の事。
その日もいつものようなデートをした後飲みに行ったのだが、あほな事に最終電車の時間に間に合わず
俺の家に泊まることに。
二人で20杯以上のビールを飲んだかもしれない。俺も彼女もかなり酔っていた。
家に着き玄関の鍵を開けると母親が出てきた。
「お母さん夜遅くにごめんなさい。 明日早く帰りますから」
と彼女は母親と顔を合わした瞬間謝り始める。
俺の親と顔を合わせればこうなるだろうと予想していた。彼女は本当気を使う子だ。
だから前もって彼女が泊まる事を伝えて、後は気にしないで寝ちゃっていいからと言ったのに・・。
それなのに何で起きているんだと思い母親に文句を言い始めると、彼女が俺の尻をつねってきた。
意味が分からず彼女に「なに?」と聞いても尻をつねるばかり。
あー分かった。文句を言うんじゃないって事か。
俺の部屋に向かう途中もずっと尻をつねられっぱなしだった。
俺の態度が気に入らなかったのだろう。
部屋に入った瞬間。「何で親に文句いうの? わたしの印象も悪くなる。 家に行けなくなっちゃうじゃない。。」
と怒られた。
部屋に入ってからすぐ寝るはずだったのだが、何気ない事からちょっと話がこじれ険悪なムードになった。
酒のせいなのだろうか、俺も彼女もいつも以上に言う言葉ひとつひとつがきつい。
俺もだんだんとイライラしてきてエスカレートしていく。
そして彼女の「触れられたくない部分」を言ってしまったのだろうか。彼女をみると目に涙をいっぱいためていた。
そして・・
「ねぇ そんなにわたしの事信じられない??」
頭の奥までズーンとくる言葉だった。
俺はまるで聞こえていないかのような素振をしベッドに寝転がった。
そんな俺をみて彼女も頭にきたのだろう。
仰向けになっている俺に馬乗りになってきて
「貴方はわたしと別れたいの? 他に好きな人ができたの?」
と聞いてくる。
俺はそれでも黙っていた。
「わたしと別れたら 貴方は心痛くないの? わたしはとても痛いよ」
次々と浴びせられる彼女からの質問。
俺は一言だけ彼女に言った。
「わかんない」
彼女はそれ以降質問してこなかった。
何でこんな事を言ってしまったのだろう。酒のせいなのか?「わからない」って何がだ?今だったら弁解できるかもしれない。早く何か言わないと・・。
しかし、何も言葉は出てこなかった。俺の頭の中はぐちゃぐちゃだった。
彼女もずっと黙っている。
二人とも何も喋らないというおかしな時間が数分続いた。
それに耐えられなくなったのか、彼女が「明日早く起きなくちゃいけないから、もう寝ましょう」と口を開き床に入る。
「おやすみなさい」
その声には力がなかった。
俺は「今日は本当にごめん 言い過ぎた」と言い床に入った。
少し間があって
「ううん 大丈夫よ」
と彼女は言ってくれた。
あれだけの事を言われて大丈夫なはずがない。俺は貴女の質問にもちゃんと答えてないよ?もっと冷たい言葉を言ってくれてもいいのに・・。
貴女は優しすぎるよ。
時計をみると3時半を過ぎていた。
普通だったらとっくに寝ている時間だ。でも今日は眠くない。
彼女も寝れないみたいでモジモジと体を動かしている。
俺はさっきの言い合いの事を考えていた。たぶん彼女も考えているだろう。
俺は彼女を傷つけ泣かせてしまった事がショックだった。そして彼女の質問に対していい加減な態度をとった事を後悔した。
俺が彼女にやった事は彼女の心に刻み込まれただろう。
ほんの数時間前の・・あの楽しい時にはもう戻れないのかもしれないな。
そう考えると心が苦しくなった。
「ねぇ起きて。 そろそろ帰らないといけないから支度して」という彼女の声で目が覚めた。
いつの間にか寝てしまったらしい。
彼女の顔をみると目が腫れていた。
まじまじと彼女の顔をみていると
「目腫れている? あれから泣いたから。 貴方のせいよ」
と彼女は笑いながら言う。
駅に向かう途中は二人とも黙っていた。
二日酔いで頭が痛かったし、寝不足だったのもあるのかもしれない。彼女も辛そうだった。
いつもは30分なんていう時間はあっという間に経ってしまうのに、今日はすごい長く感じた。
駅に着いていつもと同じようにキスをし別れた。
昨日の喧嘩がまとまらないままになってしまったのが悔やまれる。
次会った時、いや・・会えたとき話すべきなのだろうか。でも・・話を蒸し返すのはよくないかもしれない。。
家に着いてからもそんな事ばかり考えていた。
そしてでた答えは「触れない」だった。間違った判断かもしれないけど、今はそれが一番いいのかなって。
ただ誤解を解く為に彼女に対しての「気持ち」はもう一度きちんと伝えようと思った。
今更なのかもしれないが・・。
続きはその17で。