がんになると知り合いからはもちろん、知り合いじゃない人からも色々なモノや色々なことを勧められます。

ましてや、手術まで辿り着くことさえ難しい膵臓がん。

サプリメントなど勧められた経験がある患者さんは多いと思います。


私も初発で手術はできないと診断された頃、あるおじさんにがんについての色々なことについて、説明を受けたことがあります。

あの頃、アブゲムをしながら倦怠感としびれに悩まされていた日々でしたが、今、思えば下痢と糖尿病が無いだけ元気だったんですけどね。

でも、あの時はあの時なりに非常につらかったのです。

手術=寛解、たとえ70%の患者が再発しても自分は寛解する30%に入るだろうという謎の希望がありましたから。

手術を心待ちにしていたあの頃、我が家に知人の紹介で修理にきたおじさんがいました。

おじさんは腕が良く、料金形態も安く、とても良心的な方でした。

1回じゃ終わらないから、とサービスで2回来てくれることになりました。

私は抗がん剤中なので、なるべく体調の良い日を希望した所、そこからおじさんのがんトークが始まりました。

まず、抗がん剤は医師の利権にだまされているだけだからすみやかに辞めて

「クエン酸と重曹を飲みましょう」

から始まりました。

そして、

「がん患者が増えるほど世界の数パーセントの富裕層は潤う、製薬企業と繫がっているから。」 

「飛行機雲を見たことあるでしょう?アレは実はがんの毒素を地底人たちが撒いているのです。姫香さんは運悪くそれを吸い込んだのでしょう。」

「富裕層は人口を減らして、世界を独占するためにコロナワクチンを打たせている。」

「がん患者が増えたのも世界の富裕層のしわざ。」

などと語り始めました。

しまいには仮面ライダーの敵役らしき怪獣の写真のスマホを見せて、

「これは地底人で富裕層から依頼されて地球人ががんで亡くなるように仕事している」

と言いました。 

また、ダイアナ妃の死を否定し、  

「彼女はまだ生きている」

とスマホの写真を見せました。

ダイアナ妃ファンだった私は

「その写真、ダイアナ妃の若い頃の写真じゃないですか?」

と言いたかったけど、お喋りな私がツッコめないほど、おじさんのほうがお喋りでした。

おじさんは本当に親切で修理代も破格にしてくれたし、

「がんに効く神社へ姫香さん、連れて行くからいつでも連絡下さい」

と言ってくれたので、優しい方なんだと思います。

おじさんにはそれきりお会いしていませんが、もし、私のがんが地底人のしわざなら地底人を恨もうと思っています。

何かを恨まなきゃやってられないくらい痛くて怠くてつらい毎日だから。