「みーっけ」
「見つかってなどおらん」


「いや、見えるから。だから、見つけて話しかけてるんじゃん」
「わしは、誰とも話してなどおらん」


「あっそ、じゃあね、ばいばい、ばかじぃじぃ!」
「な、待ちなさい!」


「なによ!」
「いや、見つかってはおらんが、話はしよう」


「わがまま、頑固、気まぐれ、ばかなじぃじぃと話す義理なんてない!」
「あ、やー、待て、待てと言っている!」


「ごめんなさいは?」
「は?」


「ばいばい」
「あー、待て、待て! 悪かった、悪かった! わしが悪かったから許してくれ!」


「悪かったって言い方、嫌い。そして、上から目線な言い方も嫌い。ごめんなさいじゃなきゃ、嫌」
「むむ、仕方ない」


「仕方ない?」
「いや、わる……ゴメンナサイ」


「よく出来ました。許してあげる」
「全く、近頃の」


「何?」
「いや、何でもない」


「で、本当は助けて欲しいんでしょ?」
「そ、そんなことは……ある」


「だと、思った」
「ふん」


「じぃじぃ、じゃあ、他に言うことがあるでしょう?」
「ない!」


「じゃ、いつまでもそこにいてね」
「それは困る!」


「じゃあ、いつまでも意地張ってないで、素直になってお願いしたら?」
「それが嫌で、困ってるのがわからんのか」


「わかってるから、わざと言ってるの」
「な、小娘のくせに」


「小娘ですが何か? じぃじぃを今助けられるのは、残念ながらこの小娘だけですけど、何か?」
「生意気な口ばかりききおって、どうしてくれよう!」


「うん、どうしてくれようなのは、こっちなんだけど」
「何をバカな!」


「状況把握をしっかり!」
「しっかりしておるわ!」


「それじゃ、わかるよね。じぃじぃは今、どこにいる?」
「……木の上におる」


「じぃじぃは今、どうしたいの?」
「……降りたい」


「じぃじぃは、なんで降りられないの?」
「……怖くて、ひとりで降りられ……ない」


「ぷぷっ」
「笑うな!」


「じゃ、じぃじぃが今、私に言うことは?」
「バカ小娘めが!」


「帰るよ?」
「……ゴメンナサイ」


「それから?」
「……タスケテクダサイ」


「あとで、よく出来ましたのはなまるをほっぺに、二つ描かなきゃね」
「死んでもさせん!」


「死んだら困るよー。まだまだわたしにいじめられるのが、じぃじぃなの。ふふ」
「ふふ、じゃない。まったくバカにしおって、これだから……」


「ぶつぶつ言ってないで、ほら」
「ほら?」


「抱きとめてあげるから、飛び降りといて」
「出来るわけなかろう、タワケが!」


「できるよー、じぃじぃ、軽いし」
「何を言うか、ばか者! お前みたいな貧弱な小娘なんかに、このわしが抱きとめられるはずがなかろうが!」


「バカなのは、じぃじぃだよ」
「何を抜かす」


「いくら貧弱な小娘でも、私の身長より二倍もない高さで降りられなくなった猫一匹、抱きとめるくらい、私だって出来るよー」
「猫って言うな!」


「猫だから。じぃじぃ猫のジージー」
「猫じゃない!」


「わかったわかった。猫じゃない猫じゃない。さ、飛び降りといでー。まさか、こんな高さでわざわざキャッチしてもらえるのに、飛び降りれないなんて言わないよねー、じぃーじぃ」
「言うか! よし、小娘め、目にモノ見せてやる! うにゃー!」


「え、待って! 突然すぎるし、飛びすぎ、それじゃ…………、ベチャって、あーあ」
「……お前なんぞ、信じたわしがバカだった……」


「ごめんね、大丈夫? よしよし、じゃあ、おうちまで抱っこしていってあげるね。よいしょ、よしよし、まずは帰ったらキレイキレイしてあげますよー。じぃじぃ!」
「いやじゃー!」
望。


基本的に
こんな仕事を職業にしてる人は
自分からは死ねない。
死にたくても死ねないの方が
正しいかな。
他人を殺すことに長けているから
自分も殺せるかっていうと
そうじゃないみたいな。
人を殺すってことは
自分は殺されないように
生き延びなきゃいけない。
ていうことは
他人を殺すと同時に
自分が死なない術を
身につけてしまう。
そうなると自分がいざ
死にたいとき死ねない。
無意識に死なないように
自分を守ってしまうから。
ホントホント。
そこら辺でどっからでも
殺せそうな人ほど
どうでもいい理由で
簡単に絶望をうまく作り上げて
勝手に死んでる。
何の躊躇いもなく惜し気もなく
たった一つの命をポポイとね。
だから
殺し屋を職業にしている人は
大概生きることに対して
執着が強すぎて死ねない。
あ、自分からは、ですよ。

まあ、極端な極論ですけどね。

というわけで
殺し屋は絶望では死ねない。
絶望の先にある希望に
しがみついてる。


あなたの希望は絶望中ですか?

さて
何から話そうか?


いえ
何からも話さなくていいです。





それは、困る。


なぜでしょう?





君と仲良くなれない。


なれなくていいです。





それも困る。


いや
困る必要ないですから。





なぜ?


意味がないからです。





意味なんてモノは
後から勝手について来るもんだ。


人の家にそんな物騒なもの
もってやって来る人と
意味なく仲良くなんかできません。





たいしたことないじゃないか。
ナイフの1本や2本。


あなたが持っているのは
弾が出る拳銃です。
強いて言えば
3丁、所持しています。





いや、さすがの洞察力。
安心して仲良くできそうだよ。
何部だっけ?


帰宅部です。
スポーツなんて
からっきしできません。





じゃあ
なんで拳銃を持ってると
わかったんだ?


あなたが郵便受けから
発砲してきたからですよ。





それは居留守を使う君が
悪いねぇ。


命を脅かす存在が
目の前にやってきたら
回避するのが
当たり前の行動なんです。





与太話も飽きたから
そろそろ本題に入ろう。


遠慮、願いたいです。





強情なのはいいことだが
君に断れる権利なんて
端からないんだよ?


わかっていますよ。
あなたがチャイムを鳴らして
ここにやって来た時点で
断れる自由なんて
ありもしないことぐらい
承知済みです。





お利口だねぇ。
それならさっさと
本題に入ろうじゃないか。


お断りさせていただきます。





いい根性してやがる。


よく言われます。





そうやって何人の殺し屋を
亡き者にしたんだ?


たかだか十数人ですよ。





なら、ここいらで
終わらせといた方が
犠牲者が増えなくて
済むと思うんだが?


殺し屋を
生業にしているような者は
人に殺されたくて
生きているようなモノでしょうに。





だからって、みんながみんな
殺されるために生きているとは
限らないだろうが。


そうですかねー?





生きる為に食ってく為に
殺さないと生きていけない
輩だっている。


そういう人達は
生きていけるように
食べていけるように
なった時点で
生きる意味をなくして
死に場所を探し出すんですよ。





それはお前のことか?


そうでもないですよ。





そうでもあるだろ。


そうですかねー。
そうかもしれませんね。
案外、殺す理由がないと
人なんて殺せないですからね。
特に自分の為の理由がね。





そうかもしれない。
そうかもしれないが
それでも殺すのが
殺し屋ってもんだろう。


んー。





理由がないと人を殺せない
殺し屋がいるとは限らないだろう。
特に
自分の為の理由がなくてもだ。


ややこしい言い方をしますね。





お前だよ。
ややこしいのは。


そもそも殺し屋は
どうやったら死ぬのか?
って話になると思いません?





そもそも俺はお前さんと
哲学的な話をしに
来たわけじゃないんだよ。


せっかく
人が悟りを開きかけているのに
付き合いが悪いですね。





十分すぎるほどに付き合って
やってるはずなんだがな。


ま、いいですけど。





それは俺のセリフだ。


で、何しに来たんです?





それをさっきから
説明しようとしている。


そうでしたね。





いっそ問答無用で殺そうかと
思っていたところだ。


じゃあ、できれば簡潔に
今までの人とは違う
ボキャブラリーを期待しています。





それは雇い主に抗議してくれ。
俺は伝言をそのまま伝えて
やるべきことをやって
早々に帰ることにする。


随分とまあ、味気のない。
仕方がないですけどね。





ああ、仕方ないことだ。
恨むなら俺の雇い主を恨め。


で、伝言って云うのは




『さっさと死んで詫びろ。俺はお前を許さない』
だそうだ。


よくもまあ、飽きずに。





全くだ。
お前、何したんだよ、ホント。


たいしたことないですよ。
そちらの雇い主に頼まれて
「殺し屋の一掃」を
頼まれただけですから。





はっ?


だから
こちらからもお願いしたんです。





何をだよ……。


『さっさと死んで詫びろ。俺はお前を許さない』
と伝えに来る殺し屋をよこすようにと。





………………。


さて
あなたは私を殺せますか?