認知症と間違えられやすい病気に「甲状腺機能低下症」があります。認知症の原因の多くは3つあり、アルツハイマー型・脳血管性型・レビー小体型です。これらはすべて脳に原因があり、認知症とされます。これに対して甲状腺機能低下症は、脳ではなく、甲状腺ホルモンの低下が原因です。
全く別の病気ですが、実際に現れる症状は、認知症に似ています。甲状腺のホルモンが低下すると、体の新陳代謝が悪くなります。その影響で、頭の働きが低下し、物忘れ、錯乱、被害妄想、記憶力の低下、無気力になります。この症状から、甲状腺機能低下症は、アルツハイマー型認知症と間違えられやすいのです。認知症と間違えて、認知症の薬を飲み続けると、脈拍が減るなどどんどん悪化します。この病気は、心臓など機能が低下するので、認知症のような症状だけでなく、心疾患など体調が悪化する可能性もあります。
日本国内の認知症患者は2012年の推計でおよそ462万人いるとみられています。このうち、1割前後は「甲状腺機能低下症」ではとされています。46万人は認知症ではなく、甲状腺機能低下症の可能性があります。日本神経学会など複数の学会は、2017年に策定したガイドラインで、認知症と診断した場合に甲状腺ホルモンなどを測定する検査の実施を推奨しています。
甲状腺の機能の低下が見られた場合には、不足している甲状腺ホルモンを薬で補います。特に体に症状が出ていない場合でも、血液中の甲状腺ホルモンの量が少なければ薬の投与を行います。理由は、甲状腺ホルモンが不足した状態が続くと、心臓や肝臓の機能が低下するなど全身の新陳代謝低下の影響が様々な臓器に現れてくるからです。
治療薬としては、「チラーヂンS」が主に使われます。甲状腺ホルモンは身体から分泌されているものなので、副作用はほとんどありません。
薬の服用は、少ない量からスタートして、2~3カ月かけて徐々に増やしながら適切な量を探ります。