「ハート・オブ・ビースト」
“HEART OF THE BEAST”
(2026/アメリカ/東和ピクチャーズ=東宝)
監督:デヴィッド・エアー
脚本:キャメロン・アレクサンダー
ブラッド・ピット J・K・シモンズ アンナ・ラム
オーディン
おすすめ度…★★★★☆ 満足度…★★★★★
ジェームズが川でフライ・フィッシングをするシーン、「リバー・ランズ・スルー・イット」(1992)みたいだと思ってしまった。
「リバー・ランズ・スルー・イット」といえば若手時代のブラピが注目を浴びたロバート・レッドフォード監督作品で、そのブロンドのビジュアルもあって、次の時代のレッドフォードとしばらく言われたりもした。
その後も「スパイ・ゲーム」(2001)で俳優としても共演するなど、ハリウッドの次世代のスターとしてキャリアを重ねる原点となった作品でもある。
ロバート・レッドフォードはあの頃から監督業で成功したり、サンダンス映画祭の主催など新しい才能を映画界で発掘する仕事も続けてきた。
ブラッド・ピットも本作も含めて2000年代以降は本格的にプロデュースにも進出、同世代のトム・クルーズと共にハリウッドを牽引している。
そういえば同じサバイバル作品としては晩年のロバート・レッドフォードも「オール・イズ・ロスト~最後の手紙~」(2013)で海上で遭難した男の孤独を演じていた。
「ハート・オブ・ビースト」はほぼ全編にわたってブラッド・ピット演じる退役軍人ジェームズとともに戦場を生き抜いた戦闘犬オーディンの生死をかけたサバイバルが緊張感ある映像で描かれる。
開巻すぐに既視感を覚えたのは直近で観た「ラスト・サバイバー」の影響だろう。
あちらはセスナで山間部に不時着、こちらは水上セスナでアラスカ奥地の川に墜落する。
墜落したのが川だったことで一命をとりとめたジェームズのサバイバルがここから始まる。
まずは墜落途中で機外へ放り出された愛犬オーディンを救出、さらに水中に沈んだ機体からテントや必要な機材を搬出する作業が続く。
何とか一命をとりとめたオーディンと100キロ離れた道路があるエリアまでの移動が始まるが、巨大な熊に襲われたり、野生の狼の群れに囲まれたり、渓谷にかかっている丸太橋から転落したり、たどり着いたはずの平原が湿地帯だったり、次々と困難が立ちはだかり疲弊していくジェームズ。
腕の骨折で折れて突出した骨を強引に戻したり、狼に腹を食いちぎられたり、かなりえぐい映像も散見されるので注意。
そんなジェームズの孤独と寄り添う愛犬オーディンが語らずも発する表情が素晴らしい。
これを演技といっていいのかわからないが、下手な脚本より十分に訴えかける目線で語り駆けるオーディン。
ブラピがオーディンに語りかけるリズムも淡々としながらも最小限の言葉で二人(あえて)の間で交わされる感情を的確に表現している。
細かいことが気にならないといえば嘘になる。
最初に襲い掛かる巨大熊のシーンはかなり安っぽく映り、思わず往年の動物パニック映画の「グリズリー」(1976)を思い出すし、狼に囲まれた場面はさすがにあそこまで二人で立ち向かうのは厳しいだろうと思ってしまった。
ただ動物ものにありがちなハートウォーミングとかそういう簡単な話ではなくて、戦場で戦ってきたジェームズだけでなく戦闘犬のオーディンにもPTSDがあって、ラストではその戦闘犬の現状についてのメッセージもクレジットされる。
前述のハリウッドでのプロデュース展開について改めて思ったのは、よりエンターテインメント性に振り切っているトム・クルーズに対して、ブラッド・ピットはドラマ性に重きを置いているのだろう。
アラスカの奥地が舞台ということで終盤に唐突にオーロラが空を彩るシーンがあるものの少し演出過剰な気もした。
映画のラストでジェームズのオーディンへの思いがあふれる手紙が読まれるシーンはやはりウルっときた。
こういう犬映画(あえて)が話題になると犬好きには堪らないなどというコメントが多いけれど、自分は犬を飼ったことは今まで一度もない。
それでも一人暮らし相棒としてペットはいるので語らずも心を通わす思いは同じだ。
だからいつもきっと伝わっていると思って語りかけるようにしている。
MOVIX伊勢崎 シアター5



