「長崎―閃光の影で―」 | MCNP-media cross network premium/RENSA

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「長崎―閃光の影で―」(2025/アークエンタテインメント)

 

 監督:松本准平

 脚本:松本准平 保木本佳子

 

 菊池日菜子 小野花梨 川床明日香 水崎綾女 渡辺大

 加藤雅也 有森也実 萩原聖人 利重剛 池田秀一 南果歩

 

 おすすめ度…★★★☆☆ 満足度…★★★★☆

 

 
原爆投下直後の長崎で、疎開で帰郷していた若い女学生たちが懸命に命と向き合っていた姿を原爆投下から一ヶ月間の日々を追いながら描いていく。
 
原案となったのは日本赤十字社の看護師たちによる手記「閃光の影で-原爆被害者救護赤十字看護婦の手記-」で、実際に当時救護に当たる女学生だった山下フジヱさんも出演して、その目を通してあの頃を語るというスタイルになっている。
 
その山下さんの声を美輪明宏がナレーションで語るのが少しわかりづらかった。
 
看護女学生のスミ・アツ子・ミサヲの三人は、大阪の空襲で看護学校が休校したのを機に故郷の長崎へ疎開してくる。
 
汽車の車窓から長崎の海を目にして長崎に帰ってきたことに安堵する冒頭のシーン。
車窓から浦上天主堂が見えると喜ぶが、その後の悲劇を知るものとして切なくて胸に迫る。
 
疎開の長崎でも赤十字病院で経験を積むアツ子に対して、実家で両親とともに静かに暮らすスミ、そして父親とともに教会に通う敬虔なクリスチャンのミサヲ。
 
スミが母親のお使いで祖母の元へ向かう途中で原爆が投下される。
アツ子は市内の赤十字病院で被爆し足を負傷するも一命をとりとめ、ミサヲは教会の帰りに被爆し負傷した父親と貨車で避難する。
 
通りがかった赤十字の救護隊のトラックに乗り込んだスミは、瓦礫と化した市街地で救護活動を行い、その後国民学校に設置された救護所へと向かう。
 
そんな三人が救護所で再会し、被爆者たちの救護活動に従事する。
 
被爆者たちの悲惨な姿を視覚的に見せるシーンもいくつかある。
目を背けたくても凝視させられる傷口に蛆の湧いたワンカットのインパクトは強烈だ。
満足な麻酔もなくのこぎりで足を切断、両目をガラスで潰された妊婦、朝鮮人差別もしっかり映像に残している。
 
両親が無事だったスミは幼馴染の勝から誘われて救護所を離脱しようとするが、その勝が原爆症であることが判明し戻ってくる。
 
隣人でありながら両親と妹の死を目の当たりにしたアツ子はそんなスミに怒りをぶつける。
 
そんな二人を静かに見守っていたミサヲは救護活動を終えた列車の中で自らの被爆を知る。
 
そんな17歳の三人の女学生たちの葛藤も描きながら一ヶ月にわたる救護活動を時間軸に沿って描いていく。
 
ひとつ分かりにくかったのは三人の位置関係。
 
一見すると田舎の風景が広がるスミとアツ子が隣人として暮らす地区は爆心地に近く、スミは離れた祖母の家へのお使いで被爆を逃れたということだと思うが、アツ子の家族が丸焦げの遺体となっていたのに対して、スミの両親が無事に避難できたのはなぜか。
 
一方でミサヲは礼拝で街の教会に出かけて被爆し、瓦礫の中で父親の生存を知り、市街地ゆえに避難するための貨車に乗り込んめたのだろう。
 
スミを演じる菊池日菜子は『か「」く「」し「」ご「」と「』の現代の女子高生パラとはまったく違うキャラクターで同一人物とは思えないほどだが、横顔やあごのラインなどにパラのイメージが確認できる。
 
アツ子役の小野花梨はこの手の作品のバイプレイヤーとしては常連で若手ながらある種の貫禄さえあるが、個性的な声とビジュアルもあって少しイメージが固定してきている気がする。
 
ミサヲを演じた川床明日香はたぶん女優さんとして認識するのは初めてだと思うけれど、この先もこの名前には注意していこうと思う。
 
スミの両親に加藤雅也と有森也実、ミサヲの父親に萩原聖人、救護所の事務局長に利重剛、看護婦長に水崎綾女、軍医に渡辺大、孤児院の女性に南果歩、映画好きには堪らない役者が顔を揃える。
 
この時期、8月15日の終戦に合わせて戦争映画が公開される傾向にある。
今年もこの時期に合わせて「雪風 YUKIKAZE」も公開。
 
先に公開された本作と「木の上の軍隊」もあり、いずれも戦争の悲惨さや悲劇性だけではなく、戦後80年経つこの時代だからこそ生きることそして生きて語り継ぐことがテーマになっているようだ。
 
今回はタイムテーブルの関係で「雪風 YUKIKAZE」と迷ったが、先に上映スタートの「長崎 閃光の影で」を選択。
終映後には「雪風 YUKIKAZE」も観られたが、改めて日を置いて観ることにした。
 
長崎の原爆投下を描いた映画としては黒木和雄監督の「TOMORROW 明日」(1988)があってオンタイムで観ているものの記憶は薄い。
あの作品でヒロインだった南果歩が、こうしてまた長崎の原爆に関する作品に出演していることにも意味があるのだろう。
 
エンドロールに流れるのは長崎出身の福山雅治の“クスノキ”だが、福山雅治自身の歌声ではなく、ヒロインを演じた三人の若手女優の声で、まるで祈りをささげる讃美歌のように歌うのがよい。
 
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