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「BAD LANDS バッド・ランズ」

 (2023/東映=ソニー・ピクチャーズ・エンターテインメント)

 

 監督:原田眞人

 原作:黒川博行

 脚本:原田眞人

 

 安藤サクラ 山田涼介 生瀬勝久 吉原光夫 大場泰正

 淵上泰史 サリngROCK 天童よしみ 江口のりこ 宇崎竜童

 

 おすすめ度…★★★☆☆ 満足度…★★★★☆

 

 
原田眞人監督が直木賞作家黒川博行のクライム小説「勁草」を安藤サクラ主演で映画化した本作。
まさに日本のピカレスクロマンとでもいうべき作品でなかなか面白かった。
 
ただし前半は重いというか緩い。
特殊詐欺グループの犯行を淡々と描いていくのだけれど決して楽しいものじゃない。
 

グループの指示役である安藤サクラ演じるネリと組織を牛耳る生瀬勝久演じる高城とのやり取りなどは確かにテンポよく見られるが、やはりどこか胸くその悪さは否めない。

 

弟ジョー役の山田涼介の登場までも時間を要すので、彼目当てにスクリーンに駆けつけたファン層には退屈だろう。

 
一方でグループの犯行の裏で動いている警察チームの地味ながらプロ集団ともいうべき描写は興味深く、一時期個人的に安藤サクラと区別がつかなかった江口のりこのキャラクターもいいアクセントだった。
 
そのジョーが暴走してヤクザとひと悶着起こすあたりから物語のテンポが一気に再加速していくのだけれど、その前までに乗り遅れてしまうと結構苦痛の140分になってしまうかもしれない。
 
なおこのシーンでジャニーズからもう一人友情出演しているのでファンにはたまらないだろう。
 
そういえば原田眞人監督の作品ってここ最近ほとんど観ていないな。
 
もともと映画職人というか重厚な作品を撮る人で、どこか疲れるという印象が残っていたのと、ここのところ岡田准一と組んだ作品が続き、その他にも木村拓哉や二宮和也をメインに据えたりと、いま何かと話題になっているジャニーズ系の主役ばかりが続いているのはやはり何かあるのかな?と否が応でも考えてしまう。
 
お気楽な映画好きにとってはエンタメの世界なんて楽しませてくれてなんぼみたいな感覚もあったりするので、まったくもって嫌なご時世になったものだと思う。
 
ちなみにこの上映前に流れた今後の上映予定の予告編。
「サイレントラブ」(山田涼介)・「アナログ」(二宮和也)・「おまえの罪を自白しろ」(中島健人)・「法廷遊戯」(永瀬廉)・「キリエのうた」(松村北斗)…現在上映中の「禁じられた遊び」(重岡大毅)もそうだけど、ジャニーズ抜きには今の日本映画界は成立しなくなっていることを改めて実感する。
 
閑話休題。
 
ジョーの暴走でネリと組織の間にもトラブルが勃発。
さらに警察の包囲網も迫りネリとジョー姉弟は最後の賭けに出る…。
 

全編に飛び交う関西弁と西成地区ならではの猥雑な空気感が相まって、さらにピカレスクロマンの雰囲気がスクリーンに満ちていく感じがいい。

 

かっこつけるとかクールとかそういうことではなくて、人間臭さとかがそのまま空気となってスクリーンに満ちていくのが心地いい。

 

これが東京歌舞伎町あたりが舞台となるともっとアジア色が加わったりして、結果としてもっとエロスやバイオレンス系に染められていくのかもしれない。

 

劇中でもかつてネリをDVで苦しめたサリngROCK演じるエグゼクティブが登場するけれど、同じ悪でもまったく異質なものだということがよくわかる。

 

日本映画のクライム系というとどうしてもヤクザ同士の抗争や安易な犯罪ストーリーや時にはコメディ要素でお茶を濁すことが多かったけれど、ここにきて藤井道人監督などの健闘もあってこういうスタイルの作品が増えてきたようだ。

 

個人的にはあまり得意ではないし、ここしばらくはやや食傷気味で避けてきたのもあるのだけれど、久々にこういう作品に出会うとまた観たくなる。

 

ジョー役の山田涼介はこれまでも様々な役どころを演じているのでうまい役者だとは思うけれど、今回も感じたキレイすぎる感じがもっとシャレた狂気を感じさせるようになるといいと思う。

宇崎竜童が演じた曼荼羅はまさにその究極形なのかもしれない。

 

実はこの日シネコンに立ち寄った時間では特に観たい作品がなく「ジョン・ウィック:コンセクエンス」とこの「BAD LANDS バッド・ランズ」が同じタイムテーブル。

 

いずれもクライムアクションっぽいしどっちにしようか迷って、「ジョン・ウィック」はシリーズ未見だったこともあって最終的にこちらを選択。

 
こういう出会いもある意味シネコンならではも楽しみ方なのかなと改めて思う。
 
 ユナイテッド・シネマ前橋 スクリーン4