「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」
“INDIANA JONES AND THE DIAL OF DESTINY”
(2023/アメリカ/ウォルト・ディズニー・ジャパン)
監督:ジェームズ・マンゴールド
脚本:ジェズ・バターワース
ジョン=ヘンリー・バターワース
デヴィッド・コープ ジェームズ・マンゴールド
ハリソン・フォード フィービー・ウォーラー=ブリッジ
アントニオ・バンデラス ジョン・リス=デイヴィス
トビー・ジョーンズ マッツ・ミケルセン
おすすめ度…★★★★☆ 満足度…★★★☆☆
地元のシネコンの字幕版上映は今週から午後イチとレイトショーの2回のみ(ちなみに吹替版は午前と夕刻の2回)。
タイムテーブルの一時間前の昼過ぎにはシネコン到着も、昼食をとると間違いなくまた落ちそうなのでここは我慢。
改めて本作品を観なおして思ったのは、前回寝落ちしたのは、自分の体調ゆえの問題だけではなかったなということ。
すでにストーリーがわかったうえで観ているせいもあるけれど、前段の軍用列車でのアクションシーンにしても、モロッコに移動してからの延々と続くカーチェイスにしても、それぞれ微妙に長すぎる。
しかもかつて何度も観たような既視感いっぱいの展開なので、ハラハラドキドキよりも先がある程度予想できちゃうし、実際その通りになって「はいお次は」みたいな感じ。
モロッコの追いかけっこは「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」のカーチェイスがすぐに思い出された。
そして夜の鉄道、パレードの群衆、モロッコの市街地と続く追いかけっこは、最後は海底から軍用機へとまさに陸海空の定番アクションシチュエーションのてんこ盛り。
そりゃ飽きるって。
前回落ちかけた場所で今回もちょっとヤバかったのはここだけの話。
それは一連のカーチェイスからギリシャの海底へと話が進むところで、ある意味凡庸な追いかけっこで疲れた後に、暗い深海のシーンでテンポが落ち着くからだと納得。
前提として、自分は「レイダース」からずっとオンタイムでシリーズをスクリーン鑑賞しているものの、特にこのシリーズのファンだということでもないので、前作の内容もほとんど覚えていないくらい。
それでも見せ切ってしまうのがルーカス=スピルバーグのエンターテインメント作品だと思うのだけれど、さすがに時代が変わりすぎた。
我々が観たいのはやっぱりこのシリーズの肝であるアドベンチャーの部分で、けして派手なアクションだけ観たいわけではない。
そもそも「レイダース」以降この最新作まで、シリーズの時代背景はすべて過去になるわけで、そこに今日的なテクノロジーは誰も求めていない。
作品の前段部分の時代背景は1944年、本編上の時間軸はアポロ11号の凱旋パレードのあった1969年、つまりいまから55年近く前。
ちなみに1981年に公開された第1作「レイダース/失われたアーク⦅聖櫃⦆」は1936年の話。
過去の物語だからアドベンチャーとしての要素もたくさん詰め込めたし、そういう意味では遥か未来を舞台にした「スター・ウォーズ」シリーズなどと通じるものがあるわけで、作り手のアイデア次第で観る側を未知なる世界に誘うベースは揃っている。
今回の作品では過去へ戻るというテーマがある。
そう「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズでも好評を博したタイムトラベルを考古学的アプローチで描いた作品ともいえる。
ただこの手のタイムパラドックスや異空間を描く手法は、あの「アベンジャーズ」シリーズのマルチバース概念以降、こうしたエンターテインメント作品であまりにも多用されすぎてすっかり定番化してしまった。
サノスの指パッチンがまさかここまで大きな影響を及ぼすなんて…という感覚をここ最近でも何度味わったことか。
映画は基本フィクションだから、スクリーンでしか体験できないものを観客は求める。
それがエンターテインメントとしての映画の基本だと思うのだけれど、最近はAIも含めていろんな科学的要素が当たり前のように描かれて、観る側の想像をはるかに凌駕するものばかりが増えてきた。
観客も想像するより考えることを余儀なくされるから、そりゃあ小難しい話が多くなる。
ディズニーなどファンタジーが基本の作品が好評なのも仕方ないのかな。
結局は感情的に寄り添えるものだったり、主人公に共感できかどうか、その辺がその人にとっての作品の良し悪しの判断基準になってしまって、誰もがドキドキワクワクして楽しめる映画って実はものすごく限られたものになってしまったのかもしれない。
そういう意味では前作から36年振りに続編公開となった「トップガン マーヴェリック」が世代を超えた多くの観客に支持されたのは、やはりトム・クルーズ演じる主人公のマーヴェリックが同じ時間を経てスクリーンに戻ってきたという厳然たる事実があるからなんだろうな。
もちろん「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」はシリーズのファンにとっては最高の作品になったと思うし、その先も想像させるラストの窓辺のハットのシーンは秀逸だった。
まずはハリソン・フォードに「ご苦労様でした」を伝えたい。
スタントの有無は別にして齢80にしてのアクション作品はそれだけでお見事というしかない。