前橋シネマハウス…前橋テアトル西友閉館から14年振りのスクリーン。 | MCNP-media cross network premium/RENSA

MCNP-media cross network premium/RENSA

音楽(Music)・映画(Cinema)・小説(Novel)・舞台(Play)…and...

出会いの連鎖-RENSA-を求めて。

メディアの旅人はあなたです。

前橋市内に数年前にオープンしたミニシアター系の映画館である前橋シネマハウスにようやく行くことができました。
 
ここは旧前橋テアトル西友でかつては毎週のように通っていたわけですが、シネコンでの映画鑑賞がメインになってしまって以降、どうしてもこうしたミニシアターへ足を運ぶのを躊躇してしまうことが多くなって、以前に高崎にオープンしたシネマテークたかさきも一度くらいしか行けてない。
 
自分が映画少年だった頃、前橋市内にはたくさんの映画館がありました。
 
前橋市内で主に映画興行を展開していたのは野中興業という会社で、前橋の中心街には前橋オリオン座というロードショー館を持ち、その前のアーケード街はオリオン通りと呼ばれていました。
 
オリオン座はその後スクリーンが二分割され、同じフロアの右手が松竹邦画系をメインにした前橋中央、左手は外国映画メインの前橋オリオンという名称になり、さらに数年後には前橋オリオン1・2という分かりやすい表記になり、観客動員数によって作品が振り分けられるようになります。
 
また80年代の映画産業の再興を受けて、階下のスペースを改装して映画館2館を増設、前橋シネマ1・2として展開。
主に東映邦画系と洋画作品のロードショー館となります。
その後これらの映画館の呼称は、前橋オリオン1~4という名称で統一されます。
 
同じく市街地の銀座通りと呼ばれたエリアには前橋国際東映が看板を掲げていましたし、洋画中心の上映館として前橋シネマという映画館も新設されました。
この前橋シネマでは「荒野の七人」や「風と共に去りぬ」といった往年の名作のリバイバル公開もあって嬉しかった。
 
後に国際東映の閉館を受けて、前橋シネマの移設という形で、2館共に先のオリオン座階下の前橋シネマ1・2へとなっていきます。
 
一方前橋駅前には前橋文映という映画館があり、洋画を中心にロードショーと名画座の中間のようなスタンスで、学生向けには低価格の料金設定もうれしかった。
 
後に映画館の一階と二階部分を分けて、文映イエロー・レッドという2館になり、イエローは東宝邦画系のロードショー館として機能していた。
前橋文映は確か県外の興行会社が経営していて、閉館後は駅前の再開発の中で新しいビルの中に映画館も入るという話もありましたが、工事中に地下から天然温泉が湧き出てしまい、そのまま日帰り温泉施設になってしまいました。
 
他にもタクシー会社の二階に前橋スバル座という小さな映画館もありました。
実はこの映画館の記憶があまりない。
 
今回色々過去の情報をチェックし直す中で、改めて思い出すことになるわけですが、自分が当時つけていた映画鑑賞記録を振り返ったら、「バック・トウ・ザ・フューチャー」とかかなりの本数の外国映画を観ているのに、映画館そのもののスクリーンの記憶が思い出せない。
 
自分のメモとして残っているのは、にっかつスバル座⇒前橋スバル座⇒文映スバル座と名称を変えて閉館したらしいという記録。
そうか、成人映画から外国映画のロードショー館になって最終的には文映の傘下に入ったのか?
 
さらに市街地の外れには前橋会館があり、自分が映画館で映画を観るようになったころには、日活ロマンポルノと独立系の成人映画専門の上映となっていました。
 
その他、前橋東宝電気館という映画館もあって、幼少期に一度だけ母に連れられて「ゴジラvsヘドラ」を観ていますが、その名の通り東宝の封切館だったようです。
ただし自分が自分の意志で映画館通いをする頃にはなくなっていました。
 
そんな中1987年に前橋市内に画期的な映画館がオープンします。
 
前橋テアトル西友1・2。
 
その名の通りシネセゾン系のテアトル西友の映画館で、ロードショー作品もありますが、特集上映やアート系作品などを中心にラインアップ、いわゆるミニシアター系の映画館として、当時地方では珍しかったレイトショーで別番組を展開するなど、本格志向の映画ファンにとっては宝物のような映画館でした。
 
1992年の記録には…「ポンヌフの恋人」「プロスペローの本」「バートン・フィンク」「裸のランチ」「夢の涯てまでも」「美しき諍い女」「ウルガ」…今思い出してもワクワクするようなラインナップ。
 
いわゆるハリウッド系の外国映画以外は、ほとんどこの前橋テアトル西友で観ていたといっても過言ではない。
 
しかしレンタルビデオの時代になって、映画館の興行が下火になる中、前橋市内の映画館が次々にその役目を終えてしまいます。
 
2000年には前橋文映が閉館。
2003年には前橋オリオンが閉館。
2006年に前橋テアトル西友が閉館。
 
前橋テアトル西友の閉館はけして経営的な問題ではなく、リヴィン前橋となった本館の西友が閉店して前橋から撤退することに合わせての閉館だったわけです。
 
その翌年に現在のユナイテッド・シネマ前橋がオープンするまで前橋から映画館の灯が消えてしまいました。
 
その頃にはシネコンのMOVIX伊勢崎も稼働していて、映画は主にそちらで観るようになっていたし、前橋の映画興行が衰退するずいぶん前から、すでに映画を観るために高崎へも出かけるようになっていたし、本当に観たい作品は上京しても観たりしていましたが、さすがにこの事実はショックでした。
 
その後、2009年にシネマまえばしとして再オープン。
しかし常設の映画館というよりも特集上映や名画の上映などにシフトしていたこともあって、その時期に映画館を訪れる機会はなかった。
 
さらに旧プレビ劇場(現:MOVIX伊勢崎)やイオンシネマ高崎などにも足を運ぶようになったし、生活習慣の一部として映画を観るというスタイルは維持されていきます。
 
でも、やっぱりアート系の作品はなかなか上映されない。
その意味ではシネコンの隆盛は痛し痒しの部分はぬぐえません。
 
2011年にはそのシネマまえばしも休館。
 
そして2018年に前橋シネマハウスとしてオープン。
 
その事実は知っていましたが、なかなか足を延ばせない。
車でさっと移動してシネコンで気軽に映画を観るというスタイルが当たり前になると、どうしてもやや駐車場が不便だったり、新しいシステムを熟知していない映画館へ出向くのが面倒に思えてくる。
 
そんな中での新型コロナウイルスによる映画館の自粛休業という想像もしていなかった出来事。
 
自分にとっては日常であったスクリーンで映画を観るという当たり前のルーティンが消滅した2ヶ月。
 
順次、自粛休業明けの映画興行が再開される中で、新しい映画館を開拓するのならこの時期しかない。
 
そういう思いもあって、開業から2年を経てようやく前橋シネマハウスを訪れることになりました。
 
あの頃、何度も通った自走式の立体駐車場に車を乗り入れ、お馴染みのエレベーターで映画館のあるエリアへ。
 
目の前には確かにあの頃と同じ光景がありました。
 

 
前橋シネマハウス。
 
 
もちろん新型コロナウイルス感染症対策も重要。
 
 
上映作品は3作品、レイトショーなしで毎回入れ替え制。
 
 
入場前に映画館の前を懐かしく見渡します。
 
 
かつてはこの先に前橋西武がありました。
 
 
エントランスは昔のままのようです。
 
 
まずはチケットカウンターで鑑賞券の購入。
 
事前にチェックしておいたメンバーズの年間会員に加入同時で割引料金が適用されることを確認して、まずは会員登録を申し込み。
 
 
ちなみにまだ300番台でした。
これでこの映画館に通う理由ができました。
 
 
メンバーにはAとBがありますが、ひとまず今回はBで登録です。
年会費1000円で通常料金の1700円から400円割引ですから、三回通えば元は取れるという計算です。
 
個人的には確かにその会員割引特典もありますが、こうしてメンバーになることで定期的に通う下準備ができたという意味が大きいですね。
 
映画鑑賞ごとにスタンプが押されて、ポイントに応じて無料鑑賞ができるのはありがたい。
 
 
もっとも一年でどのくらい埋まるのか、現状ではちょっと想像ができません。
 
 
客席内は自由席です。
これも映画ファンには実はありがたいシステムです。
もちろん混雑時には指定席の恩恵もあるのでしょうが、観たいときに自分のスタイルで鑑賞できるのは助かります。
 
自粛前のユナイテッド・シネマ前橋では平日は基本的に自由席で発券手続きが簡略化されていました。
 
スクリーンはシネコンと違って小さめですが、これは昔から変わらないので問題なし。
 
キャパシティに見合ったスクリーンサイズというのも映画館にとっては重要なことだと思います。
 
 
発券されたチケットには上映作品のオフィシャルデザインがプリントしてありました。
 
シネコンシステムが定着してわざわざ前売り券を購入することがなくなりましたが、やはり旧来の前売り券の半券が残るというのは映画ファンにとってはいい思い出になります。
 
 
この回の上映では客席には自分を含めて10名弱の入場でした。
もちろん座席も間引きされていて、実質のキャパは40名を割ります。
 
 
シネコンと違ってドリンクホルダーもありませんし、昔のままのシートなので若干座面も狭くなっていますが、座ってすぐにあの頃の懐かしい質感が伝わって逆に安心しました。
 
この先この前橋シネマハウスで出会うであろう作品に胸を躍らせつつ、新しい映画館を開拓したという思いで、これからも映画を楽しんでいけたらと思います。