「いぬやしき」(2018/東宝)
監督:佐藤信介
原作:奥浩哉
脚本:橋本裕志
木梨憲武 佐藤健 本郷奏多 二階堂ふみ 三吉彩花
福崎那由他 濱田マリ 斉藤由貴 伊勢谷友介
おすすめ度…★★☆☆☆ 満足度…★★☆☆☆
佐藤信介監督はあまり得意じゃないんです。
とにかく無差別殺人が大好きな監督らしく「GANTZ」二部作で「もう勘弁」という感じで、なんとか「アイアムアヒーロー」で見直したものの、前作の「デスノート Light up the NEW world」や次作の「BLEACH」も含めて、相変わらず無慈悲な作品が続きそう。
今回もある特殊能力を身に着けて殺人マシーンと化した高校生獅子神が、自身の生い立ちと母親への無上の愛を楯に片っ端から殺しまくる。
前半は木梨演じる冴えないサラリーマン犬屋敷の悲哀を描く時間が淡々と続く。
どれもこれもいつか見たようなシーンばかりで、そこまで排除するかと思える辛辣な家族の仕打ちは、観ている自分も同世代だということもあってどんどん不快にさせる。
その一方で突然自分の体が未知なるものに変異してしまった戸惑いだったり、その能力を使って病気の人たちを助けることで自分自身の存在意義を確認する犬屋敷を木梨憲武がオヤジ臭を漂わせながら好演。
獅子神は母親と離婚後外に新しい家庭を作って幸せに暮らす父親を許せず、その怒りの矛先を別の幸福な家族へと向けて理由なき殺戮を続けていく。
彼の行為はその段階でもはやアウトであって、結果として自身の犯行がネットやメディアに溢れ、悲観した母親を自殺に追い込んでしまう。
さらに母親の死を個人情報を暴露したネットユーザーに向けて、その能力で次々に殺し続ける。
ついにはメディアを含めた社会のすべてを敵として文字通りの無差別殺人へと自らを駆り立てていく。
エンターテインメントだから何でもアリだと言われればそれまでなのだろうが、ここまで意味のない殺戮を延々と見せられるのはやはり苦痛だ。
後半の獅子神vs犬屋敷の死闘はそのVFX技術も含めて、日本映画ではなかなかのクオリティであることは認めるけれど、それを最大の見せ場とするにはあまりにも作品そのものの中身が空虚で、今の時代にあえて映像化する意味を読み取れない。
背景にあるネットの暴走や犯罪報道とメディアの関わり等は、これまでもいろんな映像表現で描かれていて、いまさら目新しいものではないし、犬屋敷の家族の再生のドラマとしても薄っぺらさを禁じ得ない。
犯罪者として追われる獅子神をかくまう同級生の女子生徒がかわいいなと思っていたら、エンドロールで二階堂ふみだったと知り納得。
久しぶりの女子高生役もまだまだいけると再確認できたのは数少ない収穫。
ユナイテッドシネマ前橋 スクリーン8