「スリー・ビルボード」(2017/英=米/FOX)
“THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI”
監督:マーティン・マクドナー
脚本:マーティン・マクドナー
フランシス・マクドーマンド ウディ・ハレルソン
サム・ロックウェル アビー・コーニッシュ ジョン・ホークス
ピーター・ディンクレイジ ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ
おすすめ度…★★☆☆☆ 満足度…★★★★☆
胸くそが悪くなる映画。
でも目を背けられない映画。
舞台はアメリカ南部のミズーリ州の田舎町エビング。
娘がレイプされたうえに焼き殺されたミルドレッドは、町外れの三枚の看板に一向に進まない捜査を非難する広告を出す。
しかし名指しで非難された警察署長ウィロビーだけでなく、平穏な町の住民たちもミルドレッドの行為に批判的で、そのことが原因で学校でいじめにあう息子のロビーも母親のやり方に反感を持つ。
そんな中でもウィロビーは捜査がなかなか進まない現実を謝罪する一方で、自らが末期がんであることを告げ平穏な余生を送らせてほしいと理解を求めるが、ミルドレッドはそれを知った上での告発だと突っぱねる。
ウィロビーを慕っている差別主義者の警官ディクソンもミルドレッドへの圧力を緩めない。
看板を貸した広告代理店のレッドに詰め寄り、ミルドレッドが働く土産物屋の友人デニスをマリファナ所持で逮捕する。
さらにミルドレッドの元夫チャーリーも彼女を非難し、亡くなった娘アンジェラも自分と暮らしたいと話していたと告げる。
その言葉に返す言葉もないミルドレッド。
実はアンジェラがレイプされたとき、ミルドレッドは車を貸してほしいという彼女と口論となり「夜道でレイプされるたらどうする?」と言った娘に「レイプされればいい」と言い放ったのが最後の会話になっていた。
やがてウィロビー署長はミルドレッドの目の前で吐血して入院、一度自宅に帰った晩に自殺してしまう。
怒り狂ったディクソンは広告代理店に乗り込みレッドを窓から放り投げる暴挙に出るが、ウィロビーの後任として着任してきた黒人のアバークロンビー署長に目撃され即解雇されてしまう。
ウィロビー署長の死、レッドの災難、次々に起こる悲劇に、怒りの矛先をどこへ向けていいのかわからなくなるミルドレッド。
そんなある日、三枚の看板が放火されるという事件が起こる。
警察による犯行だと思い込んだミルドレッドは火炎瓶で深夜の警察署を襲撃してしまう。
無人だと思っていた署内には解雇されたディクソンがいて火だるまになって飛び出したところを救助される。
彼を救ったのはかつてバーでからかった小人症のジェームズだった。
すべてを悟ったジェームズはミルドレッドを庇って一緒に家にいたと証言する。
亡くなったウィロビーは家族だけでなく部下やミルドレッドへも自らの思いをつづった手紙を残していた。
その手紙で看板の賃貸料の一部をウィロビーが払ってくれたことを知る。
ジェームズへのお礼を兼ねた食事の店に若い恋人と一緒にチャーリーがやってくる。
看板に火をつけたのは自分だと告白するチャーリー。
気づけばミルドレッドの怒りは同席していたジェームズへ向かっていた。
自らの怒りのために多くの人たちを傷つけてしまったことを知るミルドレッド。
一方で入院先の病室でレッドと同室になったディクソンは初めて謝罪の涙を流し、退院後は真犯人と思われる男を見つけ、ミルドレッドにも改めて謝罪する。
ミルドレッドの行為でそれぞれの怒りを誘発された人たちは、事件とのかかわりの中で自分なりの贖罪へと導かれていくのに対し、犯人が捕まらない以上はその怒りの矛先を収めることができない。
よく怒りの連鎖ということがいわれるが、本作においてはミルドレッドの怒りだけが行く当てのない迷走を続ける。
多くの人々の謝罪や告解を経てもなおおさまらないミルドレッドの怒りはどこへ向かっていくのだろうか…。
その逡巡と怒りの感情を見事に演じきったフランシス・マクドーマンドが素晴らしい。
映画で見たのは「スタンドアップ」とか「ムーンライズ・キングダム」以来かな?
今回の演技が強烈に焼きつけられたので次も期待です。
サム・ロックウェルにウディ・ハレルソンというバイプレイヤーも存在感があって引き込まれた。
ウディ・ハレルソンって「ハンガーゲーム」シリーズのヘイミッチ役だったのか?
髪型が全然違うからまったく気づかなかった。
最近の映画で気になっているのが「不能犯」「デトロイト」「スリー・ビルボード」と重い作品ばかりで、スクリーンに対峙するまでなかなか時間がかかっているけれど、他の作品もなんとか観ておきたいところ。
MOVIX伊勢崎 シアター3