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「バイロケーション(表)」

 監督:安里麻里
 脚本:安里麻里

 水川あさみ 千賀健永 高田翔
 滝藤賢一 浅利陽介 酒井若菜 豊原功補

 

ストーリー的には「もう一人の自分」がいるという設定以外の予備知識は何も持たず、好きな女優さんのひとりでもある水川あさみ主演ということで足を運んだのが正直なところでした。

当然「裏」と「表」の意味もよく分かりませんし、そもそもバイロケーションという超常現象の概念が存在することも知りませんでした。

多くのレビューが比較対象のキーワードとしているドッペルゲンガーのことも言葉として耳にしたことがあるくらいで、同じく超常現象の概念だということも初めて知りました。

でも、面白かったです。

某大ヒットハリウッド映画のタイトルが躍った宣伝コピーも特にチェックしていなかったのでよかったのかもしれません。

途中で「矛盾してるな」とか「それってどうなの」と思うシーンがあって、「あーやっぱり角川のホラー映画だったか…」とがっかりしかけましたが、それがすべてラストに向かっての伏線になっていたことに気づいたときには「やられたー!」と素直に白旗を上げました。

この作品を受け入れられるかどうかのポイントって、虚構の中のリアリティをしっかり意識できるかどうかなのかもしれません。

基本的に映画はフィクションですからすべて作り物の世界です。
仮に実話に準じたストーリーだとしてもそれは脚本があって役者が演じるフェイクであることは変わりません。

ただその虚構の中に成立するリアリティを実感できたとき、その作品を観た人にとっては完全にひとつの世界観をもってくるのだと思います。

まあ細かいところは気にせずに…という感覚ですかね。

少なくともこけおどしの怖がらせ映画ではないですから「全然怖くない」とかいう感想も成立してしまうわけですが、もっとグロくてエグイ作品じゃないとダメだというのも違うのかな。

これはホラー映画ではなくてスリラー映画でしょうね。

かつてのヒッチコック作品がそうであったように、いわゆる怖がらせることを目的とした恐怖映画ではなく、スクリーンに対峙する観客の五感を刺激するのがスリラーもしくはサスペンス系の作品です。

たぶんホラー映画というジャンルが一般的になるのは70年代後半からのオカルトブーム以降で、さらに血しぶきや悲鳴が飛び交うスプラッター系の作品がカルト的なものからメジャー化していく過程で、この手の作品の系譜がすべてホラー作品というカテゴリになっていった気がします。

つまりいつの間にか「恐怖」は感じるものではなくて見るものになってしまった。

下手にハリウッド映画を持ち出したプロモーション展開で損をしているかもしれませんが、久しぶりに最後まで頭を使う映画を堪能しました。

もちろん近く公開の<裏>も期待していますし、設定が一部違うらしい原作小説も読んでみようと思います。

主演の水川あさみはもともと華のあるタイプの女優さんではないのでこういう役柄は合っています。
「半沢直樹」でブレイクした滝藤賢一の存在感はさすがですし、ジャニーズの二人も頑張っていたと思います。
ただ豊原功補はちょっと一人だけ役者としての時代が違うのかなという印象です。


 2014.1.23 MOVIX伊勢崎 シアター5

 おすすめ度…★★☆☆☆ 満足度…★★★★★