それは何の変哲もない日のことだった


メンバー皆の視線は珍しい光景に向けられていて


その姿を見逃しまいとしている


かくいう私、山﨑天もその一人である


「何してるの?理佐」


「何って、こばのこと後ろからぎゅってしてる」


「そうだけど、じゃなくて珍しいじゃん」


「いや、友香が私とこばがあまりにも一緒に
いないから心配だって言ってきて」


「うん」


「なんで、なんでしつこいからこうすれば何も
言わないかなと思って」


「じゃあゆっかーに言われたから来たの?」


「それもあるけど由依の話してたらくっつきたく
なった」


「んふふ、そっか」


なんて会話を聞く耳立てて聞いていたメンバーは


菅井さんの方を見て「よくやった」という視線を
送っている


「でしょ」と言わんばかりの顔で返す菅井さんを
見てまたあの二人に視線を戻すメンバー達


「あ、今日ご飯なにがいい?理佐」


「あれ?今日私が当番じゃなかった?」


「先週代わってもらったから今日は私だよ!」


「そうだったっけ?」


「そうです!それでなにがいい?」


「なんでもいいよ、由依が作ったご飯なら」


「なら帰ってから決めればいっか」


「うん、ぜんぜんいい」


「ぜんぜんって言ったーやっぱ口癖だね」


「いーのー!もう天ちゃんが指摘しなきゃ由依に
いじられなかったのに」


と言う理佐さんはチラッとこちらに視線を向ける


当然ずっと見てたから目が合ってしまうわけで


やばいと思ったけど先に視線を逸らしたのは
理佐さんだった


その後理佐さんは


「んーゆいちゃん」


と由依さんの肩に頭をグリグリして


「ごめんねー、もう意地悪しないから」


と由依さんは優しい声色で答えていた


あーやばいやばい皆も私も口元が緩んでいる


そりゃそうかあんな会話普段聞けないもんな


そして何よりなんか理佐さんが幼い


由依さんといるといつもああなのだろうか


かわいい


そう思ったと同時に隣から同じ単語が聞こえた


ひかる声出てるよ


きっと無意識だからわざわざ伝える事はないか


ひかるに向いていた視線は先程同様、二人がいる
位置へ戻す


「由依、飲み物買ってくるね」


「はーい!行ってらっしゃい」


理佐さんが楽屋から出たことにより


必然的に集まった


どこかへ向かう由依さんを追いかける視線達


菅井さんの前でピタリと止まった由依さん


「ゆっかー」


「どしたの、ゆいぽん」


「理佐に嗾けたでしょ」


「え、あ、いや」


先程のドヤ顔していた姿は跡形もなく


由依さんをみて明らかに動揺する菅井さん


「その、二人が心配で…」


「私と理佐で仕事とプライベートは分けるって
決めたから心配しないで」


「あ、そうなんだ。ごめんね」


「謝らないで、ごめん。責めたい訳じゃなくてね、今の理由はあくまで建前なの」


「ん?」


由依さんはメンバー達を見回し


「私が、私といる時の理佐をメンバーに見せたく
ないだけなんだよね」


「えっ?」


「現にさっきの理佐を見てかわいいって思った
子いたからさ」


こちらを向いた由依さんは私ではなく隣にいる
ひかるを見ていたようで


なんで、バレてるのという顔をしてるひかるに


ひかる、ごめん。声出てるよって言ってあげれば
良かったと後悔してると


続く由依さんの声


「私の理佐だから変なことしないでね」


傍から見たら菅井さんに向けられてる言葉たちは


先程の光景を見ていたメンバー達に言われていると


誰もが分かる


少々、凍りついた楽屋内に戻ってきた理佐さん


「見てー友香!夏なのに温かいの売ってたー」


菅井さんの近くに由依さんがいるからなのか


由依さんといる時の感情が抜けてないのか


にこーっと笑う理佐さんは幼さ全開で


メンバーが理佐さんかわいいと思ったことも


由依さんのはぁーというため息でビクッと
なったことも


手に取るように分かって感情がダダ漏れでリンク
している事に少し可笑しくなった


「ゆっかーごめん。」


そう呟いた由依さんのごめんは


菅井さんを利用して皆に忠告したことへなのか


これからの行動へなのかは分からないが


ニコニコの理佐さんの手を取ってそのまま
楽屋からいなくなってしまった


何かから解放されたかのように一気に騒がしく
なる楽屋は


かわいいとかやばいとかこわいとか色んな感情の
言葉が飛び交っていた


数分して戻ってきた二人


由依さんはとても満足そうに微笑んでいる


楽屋から出たあとの二人が何をしていたかは
メンバー誰も分からない


ただ満場一致で言えることは


理佐さんはすごい人に愛されているということだ

















色んな意味ですごい人に








































おわり。