温かい風が、頬をなぜる。
兵庫北部。
京都や兵庫というのはおもしろいもので
京都駅や河原町 神戸や姫路は知っているけれど
それ以外の山側の場所は全くの未知…
そんな人が、ものすごく多い。
かくいう私も、つい最近までは山側は謎の領域として認識していた。
今回、そんな謎の地域に足を踏み入れたのは
どうしても、見てみたいものがあったから。
植村直己冒険館!
植村直己といえば、世界初の五大陸最高峰登頂を成し遂げ
北海道~鹿児島を徒歩で縦断したり
北極圏12000kmの犬ぞり探検を達成した
国民栄誉賞の冒険家。
最後は、世界初のマッキンリー冬期単独登頂を果たし
その帰り道に遭難して、いなくなっちゃったんだよね。
この冒険館には、その数々の冒険に使われた道具が展示してある。
先日東尋坊で崖を降りた際
その死線をくぐるような体験にゾクゾクしちゃったんだ。
この逆境を超えてみせる
そんな気持ち。
眠れなくなるほどに血が滾る感覚。
そんな死線の中に自分を見つけてしまう人たちの気持ちは
わからなくはないんだ。
だからここへ来てみたかった。
私もいつか
ヒッチハイクで世界一周します! とか
世界最高峰の山に挑みます! とか
そんなことを言いだしちゃったらどうしよう…。
氷点下20℃や30℃の中でも耐えられる装備。
テントや寝袋も展示してある。
たった一人で生きられるための道具たち。
なんかこの展示を見ていると、泣けてくる。
誰もいない北極で
こんな小さなテントと寝袋で
どれだけの孤独を越えたんだろう。
彼は冒険中、日記や手紙をよく書いていたらしいけれど
そうでもしないと耐えられなかっただろうと思う。
誰かが自分の存在を知ってる、待ってる。そう思わないと進めないよな…。
ここの道具には、そんな無限の孤独が染みついてる。
その残滓が流れ込んでくるような気がするんだ。
犬ぞり訓練をしていた時の、イヌイットの道具。
縄文時代の人かよ…
と思うような、超原始的なアイテムの数々。
これでトドの肉とかさばいてるんだもんなあ…。
信じられないよ。
植村直己は、イヌイットともすぐに打ち解けて仲良くなったという。
私には持論があってさ。
人が良く優しくて、人を愛すことが出来る人ってのは
基本的にさびしい思いをしてきた人だと思ってる。
だから、自分に関わってくれる人に無条件に感謝できるし
嬉しいとか、楽しいとか、そんな感情を与えたくなる。
人の中に自分を見つけるタイプ。
「植村直己は誰からも愛される人でした」と一言に書いてあるけれど
こういうのを知れば知るほど
彼の人生の、描かれない一面が見える気がするよ。
まあ、私の勝手な想像だから、まったく見当違いかもしれないけどね(笑)
冒険に行く時は、これくらいのリュックをしょっていたらしい。
何キロくらいなんだろ?
まあ、私も普段重いもの背負って仕事してますから
余裕でしょ♪
ふぬ!!
くっそ重……ッ!!!
これ30kgは下らないだろ!
このタイプのリュックの背負い方はもちろん知っているけれど
油断したらひっくり返りそうなくらい重たい…っ!
めりこむんじゃないのか、床に><
私に冒険は無理です…orz
こんなん持って、1分立ってるだけでもしんどいわ。
これで山登りなんて……ブルブル
部屋の奥には、犬ぞり体験コーナーがあった。
おは♥
体験とはいえ、別に犬ぞりをやってみることはできないんだけど
実物大のテントと犬ぞりに入ったり乗ったりできる。
いや、いくら植村直己が背低かったからって
ぜんぜん足りない広さだと思うけどなあ…。
この中にあらゆるものを置いてなんとかなってたんでしょ?
犬ぞりも、こうしてみると思ったよりも狭い。
ホントにこの上に乗って行ってたの?ってくらいに。
単純なつくりだから壊れない、なんて書いてあるけど
いやいやそういう問題?っていう。
海でももっとしっかりしてるよ。
こんな装備で一年半なんて、死ににいくとしか思えないもの。
植村直己が生きた時代には、私は生まれてなかったけど。
彼が生きていた時は
世間はどんな風に彼をみていたんだろうなあ…。
中庭に、ボルタリングの体験コーナーがあった。
15メートルくらいの壁を、石を使って横移動して
端まで制覇できるかな?というもの。
こんなん余裕っしょ♪
というわけで、さっそく壁に飛び乗って、移動してみる。
え、超きついんだけど…。
ボルタリングってこんなしんどいの?
15mどころか半分も耐えられなかった。
こんな簡単そうなのに…うそでしょ?
悔しい……。
いつか絶対リベンジしてやる。絶対だ!
「山では絶対死なない」
そう言っていた植村直己が、山で消えた。
冒険の中で生きた人間が
最後の冒険だと決めて臨んだ冬のマッキンリーを登りきって
もうやることはないって、神様に言われたんだと思ってる。
本望だとは、言わないけど。
私は、冒険を人生にすることはできない。
だけど、人生を冒険しつづけることは、できる。
出来ないことはない。
そういう思いは、きっと同じだから。
『みんな、それぞれが、何か新しいことをやる。
それはすべて冒険だと、僕は思うんです。』
『出発するとすぐ、帰ることばかり考えるんですよね。
毎日先に進みながら、いかにして先に進むかじゃなくて、いかにして引き返すかっていうことばかり考えてるんです。
それがある一定のところまで進むと、もう引き返しのきかない状況までくるわけです。
そこで初めて、先に進むことだけしか考えなくなるんです。』
【中編に続く】