かつて田口ランディさんがメルマガの中で

小説を書くようになってから料理ができなくなった

と書いていらした。


当時の私は料理をまったくと言っていいほどしなかったので

いまいちピンと来なかったのだが


どちらも非常にクリエイティヴな作業であるからではないか

と書いていらした気持ちが今は少しわかる気がする。


でも私の認識は少し違って

同じクリエイティヴな作業ではあるけど

執筆は頭を総動員しておこなう作業で

料理は頭を空っぽにしておこなう作業で

という真逆なところがあるように感じる。


真逆なら両立できそうなものだけど

できないというランディさんの言い分はよくわかる。


心が

意志が

気持ちが

両立しないんだと思う。

なにかひとつに込めようとすれば当然だ。



2008年晩夏のスタジアム

まこ兄はピッチの外にいた。


幸か不幸か怪我人が出たために

前半途中からピッチに登場した稲本選手の背番号より

ピッチの外で黙々とアップを続ける

まこ兄を見ていた。


ベンチから伝令が届くたび

自ら確認しに行き

呼ばれた選手に声を掛け

アップを続け

3人目の選手を笑顔で送り出し

ベンチへと引き揚げる

まこ兄を見ていた。


2009年晩夏のスタジアム

まこ兄はピッチの外に出された。


「あのプレーを超えるプレー」を目撃した後

GKが退場になり

前半30分でベンチに下がる

まこ兄を見ていた。


あの150分間は

本当につらかった。


でも

あの150分間

一番つらかったのは

まこ兄かもしれなくて


私も

あの150分間があるから

今もまこ兄から目と心を離せないのかもしれなくて


とてもとても遠かったけど

あの150分間

ずっと同じような感情を抱いていたのかもしれなかった。



もしかしたら

その人も

もっと一緒にいたい

あと1分でも1秒でもいいから

ここにいたい

と思ってくれた時があったのかもしれなかった


でも

そう言ってしまうと

時間を忘れて

壁の外に出て

危ない目に遭いそうな

私を守るために

そう言ってくれなかったのかもしれなかった



執筆でも料理でも

お金をもらえるようになる気はまったくないけど

執筆にも料理にも

今の自分の精一杯を精一杯に込めたいと思う。


そうだ。

執筆と料理は

今の自分の誠心誠意を全力で込めるところが同じだね。


昨日

夏らしい料理に挑戦できたし

秋らしい料理に挑戦するまでの間

もっかい

頭を総動員できるかな。