国立劇場文楽公演二月 『妹背山婦女庭訓』


昨日は、よウンコちゃんと一緒に文楽を聴きに行って来ました。


演題は『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』。

三年前の文楽デビュー時の演題です。

よウンコちゃんは文楽初体験ということで、ぜひともあの

吉野川を挟んでの美しい舞台で有名な「妹山背山の段」を

見てもらいたくて、この演題を選んだはずだったんだけど…


2月は「みどり公演」、つまり「よりどりみどり」の三部立て。

今回の『妹背山』は、四段目の「お三輪」の悲劇を中心とした構成。


…あの「妹山背山の段」、やらないじゃん!ショック!


歌舞伎や文楽は、話の筋を把握した上で観に行く方が無難なので

ネタばらしをしてしまいますが、

この「お三輪」さん、本当に「救いが無い」のであります。

サッカーの例に漏れず、せっかく観たもの聴いたもの読んだものを

毎度スッカリ忘れてしまい、常に新鮮な心持ちで楽しめる私ですが、

復習しなくとも、この「お三輪」については、あの救いの無い扱いが

なんとなく思い出されて、気が重くなっていたのでした。


うり坊

玉也さんのチャリ、おもしろかったー。拍手が起こってたよ!

ヒツジ

いいなぁ。観たかったですよ。


お気に入りの吉田玉也さんは「豆腐の御用」という

お多福の人形を遣ってのチャリ場(笑うところ)を担当。

さっすが! ニヤニヤしながら観ちゃいました。


が…

このチャリ場の直後から、お三輪に対する官女4人のイビリが始まり、

それが終わったと思ったら、あっけなく刺殺され…


確かに、お三輪の死は、愛する男の役には立つんだけど、

それにしても救いが無さ過ぎ。会場も引き気味(笑)。


後列のうら若き女性陣は、

「完全にイジメだよねー」「ねー。残酷だよねー」「ホントー」

と感想を述べ合っておられましたが。ごもっとも。


でも、「残酷だよねー」で終わってはいけないと思うのです。


なぜ、こんな理不尽な話が現代まで延々と上演されているのか。

そこを考えねばなりません。


…偉そうに書きながらも専門的には学んでいないので私見ですが、


まず、お三輪をイビるのが、同じ町娘ではなく、官女であることに
意味があるはず。町民ではない、いわゆる特権階級の人々によって
ひどいイジメを受けるお三輪を、町民である観客はどう観ていたか。


鑑賞ガイドによると、この『妹背山』の初演の二年前に、

田沼意次が老中格になっているらしい。江戸時代については

時代劇(実は大ファン。最近ご無沙汰)から得た知識しかないけど、

人々の生活は、自由なように見えても、内実は違ったのではないか。


「三種の神器」を思わせる小道具たちも、つまりは

体制(幕府)批判を匂わせているように思えてくる。


文楽には、現代の感覚からすれば理不尽なことが、いっぱい起こる。

それをただ「理不尽だ、残酷だ」と言ってしまえば、それで終わり。

いつもよりも積極的に「時代に寄り添う」姿勢が必要なのです。


とはいえ、慣れるまでは、なかなか馴染みにくい芸能ではある。

まずは、文楽というものがどんな雰囲気の中でおこなわれるかを

自分の五感で味わってみて、もし不快でなければ、また行ってみる。

それを繰り返していけば、きっと「文楽おもしろい!」と感じるはず。


さすが『妹背山』。通し狂言でなくても充分イケるね。グッド!


『妹背山』と来たら… やっぱ『吉野葛』だよね。少々お待ちを。