け『こんばんは。
管理人の田中さんは、いらっしゃいますか?』
『私が田中ですが……。』
管理人室の奥から、男が面倒臭そうに返事をした。
け『田中さん。私、こういう者なんですが、昨日の事件について少しお話聞かせて頂けますか?』
田中『はい。構いませんよ。』
田中は、垢抜けたネクタイを締め直しながら言った。
け『ありがとうございます。
事件の有った日。怪しい女を見かけたとか?』
田中『ええ。見た事のない女でした。
仕事柄、この街の人間なら大抵わかりますから。』
け『どんな女でしたか?』
田中『後ろ姿しか見てないので、顔や年齢はわかりません。
ただ……。』
け『ただ…なんですか?』
田中『何かに怯えているようでした。
何度も辺りをキョロキョロと見回していましたから。』
け『そうですか。
では、被害者のビスポークはご存知ですか?』
田中『ええ。
最近、よく見かけましたね。
いつも酔っ払って誰かと揉めてましたよ。』
け『なるほど。
ところで田中さん。
この街には古くからいらっしゃいますか?』
田中『いえ。1年程前からですが…。』
け『そうですか。
どうも、ありがとうございました。』
……つづく