朝ドラ「虎に翼」で、放火事件の証拠物として提出された「朝鮮語の手紙」の翻訳について、主人公が疑問を呈する場面があった。
検察側の提出した日本語訳に、
「私が中を完全に燃やしてしまったせいで、心配をかけただろう」
と書かれていて、これが容疑者の自白ととられたのだ。
ところが、これは、「私が気をもませてしまったせいで、心配をかけただろう」と訳すのが正解で、
確かに「燃やす」という語句が使われているけれど、前後の言葉との組み合わせで、
「気をもませる」とか「心を苦しめる」という意味になるのだという事実が提示された。
つまり、慣用句。
悪意なき「誤訳」が、大変な誤解を生むことがある。
翻訳はこの「慣用句」というのが厄介で、私も失敗したことがある。
ずっと前の話だけれど、
あるアフリカ伝世のビーズについて、ある文献に「buy beads for a song」と書いてあった。
(正確な全文は忘れてしまったが)
これを私はそのまま訳して、「歌のために、欧米人がビーズを買った」
と、解釈してしまった。
アフリカの歌が聞きたくてビーズを買っただなんて、なんだか素敵な話だなあ…と妄想し、何かに書き記したのだが、
後に、この「buy for a song」は慣用句で、実際は「ただ同然で買った」とか「格安で買った」という意味であった。
…全然ちゃうやん!
この時、翻訳って難しいと思ったものだった。
それを、思い出したので、ちょっと書いてみました。
現在、インターネットで自動翻訳をしてくれる便利な機能があるけれど、慣用句を解さないので要注意ですにゃ。