ある考古学教室の午後 その1 | 旅するとんぼ玉~まあちゃんの備忘録。

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常々、地元の伊予の発掘事情についても知りたいな~と思っていたら、
愛媛大学公開講座で、文京遺跡について教えてくれるという。
さっそく、申し込みをした。

土曜日の午後、1時半から4時半の3時間。計5回。
愛媛大学法文学部の考古学の先生方が順番に講義をされる。
合計15時間で3000円だ。
行ってみると、私を入れて計6名の受講生。

なんて贅沢な講義なんだろう・・・しかも、安い!!
なんだか申し訳ないような気分で、そわそわと席に着いた。

見渡すと、私を除く5名のかたがたは皆少なくても70歳は過ぎていると思われる。
う~む。これは、これは。。

第1回目は、
「分銅型土製品-顔を写した呪術具」 田崎博之先生

文京遺跡は、ちょうど愛媛大学キャンパス地下に位置し、今から2千年ほど前の弥生時代における西日本有数の大規模集落遺跡だ。

ここで、発掘される分銅型土製品というのがこれだ。
分銅型土器まつやま
写真をクリックして拡大。

かわいい顔が彫りこんである。ラブラブ!

まずは、実物大で方眼紙にスケッチするのが考古学の基礎なのだそうだ。

ここで、年配の受講生が良い質問をした。
「今は、写真という実物をそのまま正しく写せる道具があるのに、それではだめなのですか?」
先生、
「自分で細部まで観察し、描き取ることが大切です。そこに、思わぬ発見があるのです
・・・・なるほど。。。

これが私のスケッチ。
土器写生

左下の点線部分が、もともとこうであったであろうという形なのだ。
この形が、江戸時代の金座で使われた分銅に似ていることから分銅型土製品と呼ばれている。
この分銅型土製品は、瀬戸内を中心とする西日本でのみ見られるのだそうだ。
主に、岡山、山口、愛媛、香川。

発掘状況などから推測するに、主に祭礼などに使われた呪術具であり、額に面(めん)のように着けて使用したのではないかということだった。

地方によって形や表情に特徴がある。
これが岡山発掘。
分銅型土器岡山
写真をクリックして拡大。

ね、顔が違うでしょ。
松山のはどれもニコニコ笑っている。
2千年前から県民性は変わらないのかもしれない。
伊予は、昔から”よもだ”言うては笑いよったんじゃろうか。。


このニコニコ土製品が福岡県春日市須玖岡本遺跡から発掘されている。
福岡では、こういった土製品は通常見られないので、明らかに松山と関係があると思われる。
当時、須玖岡本では青銅器が盛んに作られていたのだそうで、これを学びに来た松山の人々が、自分たちの祭事に用いるために作り使用したのではないか。。との説が立つ。


とすると、2000年も前に、技術を習得するために海を渡り、彼の地に滞在する。。といった文化がすでに育っていたのか・・とあれこれ想像すると楽しい考古学なのです。