ペットショップにて | 大池田劇場(小説のブログです)

ペットショップにて

        ペットショップにて
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「奥様、ご注文の子達入りましたよ。気に入ったのが

ありますか?」
ペットショップの女子店員は、お金を持っていそうな中

年の婦人に声をかけた。
 旦那が最近亡くなり、一人で淋しい生活を送っている

らしい。
「この品種は、今大人気ですのよ。小さくて大人しいの。

それに臭いがほとんどしない子なんです。」
店員は檻の中で大人しく遊んでいるいる子達を指さし

てそう説明した。
 「この子、良さそうね。メスなの?」
婦人はそのうちの一匹が気に入ったようだ。
 「さすがにお目が高いですね。この子は今回入荷した

中で、一番値段が張った子なのです。」
店員は檻の中に手を入れてその子をつまみ上げた。
 「でも、メスだと増えると困るわね。ある程度自由にさ

せてあげたいし・・。」
 メスと聞いてちょっと迷っているようであった。
 「大丈夫ですよ。うちの店ではちゃんと手術して出荷

しますから・・。」
知り合いの動物病院へ頼んでくれるようである。
 「そう、お願いできるのね。自分で病院へ連れて行く

のはやっぱりちょっと可愛そうだし・・。」
病院で騒がれるのも嫌だし、終わった後のぐったりし

た様子を見るのはつらいものである。
 「値段の方は両手ぐらいかな?」
婦人は両手を広げて合図した。
 「そうです、そんなものですね。少しおまけしますよ。」
結構な値がするようである。
「毛並みの良い子ね。」
婦人は愛おしそうに顎の下を撫でた。
 「そうでしょう、黒い毛に艶があるでしょう。これほどの

子はあまり居ないのですよ。」
自分も抱いてみたくなったのだろう。
 店員の手から受け取ろうとした。
 「抱くと暴れるのね。爪を立てたわ、おお痛い。」
 大人しく抱かせてはくれないようである。
 扱いの慣れた店員のようにはいかない。
 「抱くのを嫌がる子が居るのです。徐々に慣れていくと

思いますけどね。」
しばらく家に置いて、ペットとの信頼関係を築いてから

のことになりそうである。
「大きな瞳が可愛いわね。」
婦人は顔をのぞき込んだ。
 動物は怖がって目を背ける。
 「そうでしょう?緑とか青とかありますけど、やっぱり黒

いのが一番ですよ。見ているとすいこまれそうです。」
中年の婦人は購入を決めたようである。
 店員に紙幣を十枚渡した。
「首輪は女の子だし、赤かピンクがいいかな。」
 次に、動物の装飾品に目が行っているようである。
 「そうですね、やはりピンクがお似合いだと思いますよ。

あまり首輪を付けない人が多いですけど、つけないと役

所に捕まっても助けてあげられないですからね。」
首輪なしで自由にさせていると、戻して貰うのが難しく

なる。
 ちゃんと首輪に持ち主の名前を書いておいた方が無

難である。
 「こんにちわ、私が新しいお母さんですよ・・。」
婦人は動物に話しかけた。
 「・・・・。」
怖がっているのか知らん顔をして横を向いている。
 「もし、言葉が分かったらといつも思うわ。」
婦人はつれなくされて淋しそうである。
 「それは無理ですよ。鳴き声からかなり感情の理解は

出来ますけどね。」
「それじゃ、この子をもらうわよ。」
動物にはかわいいピンクの首輪が付けられた。
 売約済みとなったので別のカゴに入れられる。
「ちょっと暴れているわね。」
 カゴに入れられるのを嫌がっているようだ。
 どこかへ連れて行かれるのがわかるのだろう。
 「環境が変わるので怖がっているのでしょう。すぐにな

れますよ。」
 店員は笑ってそう言った。
 よいご主人に貰われて幸せになることだろう。
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 『やめて、出してよ。私をどこへ連れて行くつもりなの

?』
 女の子は必死で檻を叩いた。
 『出して、助けて!私は地球へ帰りたいの・・・。』
 今、アルファ星のカエル人の間では、ペットとしての日

本人女性が大人気である。


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