それを見ないで(商標権に気を付けろシリーズ第二話) | 大池田劇場(小説のブログです)

それを見ないで(商標権に気を付けろシリーズ第二話)

            それを見ないで!
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 あれから1ケ月が過ぎた。
 美しい女神、白い恋人に助けられた私は、そのまま彼女の

家に住んでいる。
 不思議なことに彼女の小さな家の裏にはもう一つ、別棟の

大きな建物があった。
 「いいこと、私が家を留守にしているときも、絶対にあの建

物の中を覗かないでね。」
私が、建物に何の気なしに近づこうとすると、温厚な彼女

が急に眉を吊り上げてそうきつく私に注意した。
「わかったよ。」
 ここは彼女の家である。
 見るなと言われたらその命令を聞くしかない。何が入って

いるか見てみたかったが・・・。
 この建物以外でも彼女にはいくつもの秘密があった。
 私は彼女の名前をまだ知らないのである。
白い恋人は私が勝手に彼女につけた名前だった。
 「ねえ、よければ君の名前を教えてくれないか。君とか、

あなたとかでは呼びにくくて・・・。」
 私は思い切ってそう聞いてみることにした。
「私の名前は▽×▲××○よ!」
彼女は掃除しながらめんどくさそうにそう答えた。
「えっ、よく聞き取れなかったのですが・・・。」
どう聞いても日本語ではない。
 知りうる限りの外国語でもこんな発音は聞いたことがなか

った。
「もし、私の本当の名前を言うことができれば、あなたと私

は離れられない関係になってしまうの。」
 何かの昔話でそんなことを聞いたことがある。
 あれ・・・?あれは雷様に名前を付ける話だったかな?
 鬼に橋をかけてもらう話だったのかな?
 よく解らないけど、名前を言うことができたら奥さんになっ

てくれるようである。
                 2
よく解らないことがもう一つ・・・。
 彼女はフェレットを飼っているのだ。
 白くてかわいい生き物である。でもなぜか元気がなかった。
 「これ、死にかけているのでは・・・?」
 どうみても弱弱しくて息も絶え絶えのような状態になって

いた。
 名前はルカというらしい。
 私がエサをやっていたがほとんど食べなかった。
 「いいのよ、これで・・・。」
 飼っている割には関心がないようで、ほとんど放置してい

るようだった。
 魔法とかで治してあげられないものなのだろうか?
 どこへも行くあてのない私は、この小さな生き物、おそらく

フェレットの子供を見て一日を過ごしていた。
 「こんちわ、お邪魔するわね。」
 ある日、すごい美人が訪ねてきた。
 彼女の友達だろうか。あいにくと白い恋人はどこかへ出か

けている。
 「ウェパルは留守しているの?」
お客の美人は彼女のことをウェパルと呼んだ。
 私は、女神に助けられてここに居ることを彼女の友人に告

げた。
 「えっ、ウェパルが女神・・・。」
お客さんはそう言うと、目を丸くして驚いた顔をした。
 私は彼女が名前を教えてくれないこと、教えてくれても、よ

く解らない発音で聞き取れないことを彼女に話した。
 「それはきっと、あたし達の間の言葉だわ。人間の呼び名

では彼女はウェパル。」
親切な彼女はそう説明してくれた。
 名前を言うと、彼女と結ばれることになることも話した。
 「くすくす・・・、そんな話聞いたことないわ。ウェパルにか

らかわれたのよ。」
美しいお客さんは楽しそうに笑いながらも、急に何か思い

ついたような顔をした。
 「あっ、でも、もしかしたら彼女なりの・・・。まっ、いい

か。」
 何が「まあいいか。」なのか気になる。
 「え~とっ、何か意味があるのですか。」
私の質問には答えず、彼女はめざとくフェレットの子供を

見つけると、急にそのゲージの前に駆け寄った。
 「これ、これ・・・、ずっと欲しかったのよ。」
愛しそうに死に掛けのフェレットを見つめる。
 小動物は、今にも死にそうな苦しい息をしていた。
 「さあ、立ちなさい。ルカ!」
彼女はそう動物に命令した。どう考えても無理があるよう

に思えたが・・・。
「わかりました、ご主人様。」
 急にフェレットはそう答えると二本足で立ち上がった。背

中にコウモリのような羽根も生えている。
 「フェレットが・・・。」
 パタパタと小さな羽音をたてて彼女の胸へと飛んでいく。
 「これ、フェレットじゃないわよ。オコジョっていうイタチ

科の動物なの。ずっと欲しかったけど珍しいからなかなか

捕まえられなくて・・・。」
 そう言うと彼女は背中に隠していた大きな羽根を取り出

して、天空へと飛び立った。
 「ウェパルに使い魔ありがとうって言っといてね。」
 そう言い残すと女悪魔は、ハヤブサのような素早い動き

で夜の闇へと消えて行った。
                3
 しばらくすると白い変人は鮫のような大きな魚をズルズ

ルと引きずって帰ってきた。
「どうやってそんな大きな魚取ってきたのですか?ウェパ

ルさん。」
ますますわけわからん人である。
 「泳いで取ってきたに決まっているでしょう・・・。あっ!

なぜ私の名前を・・・。」
私は美しい女性がこの家に遊びに来ていたことを告げ

た。
 「くっ、グレモリーの奴余計なことを・・・。」
女悪魔はグレモリーさんというらしい。
 ウェパルは不満げな顔をした。
 「仕方ない、あなたを使い魔にしてあげるわ。」
 えっ、夫じゃなかったの?
 単なる召使い・・・。
 オコジョと同格・・・?
これでも彼女の中では昇格にあたるのだろうか?
               4
 いろんな謎が解けたのか、かえって深まったのか解ら

ないが、残る疑問は裏の建物だけになった。
昔話の鶴の恩返しでは、開けるなといった戸をあけてし

まったために美しい妻を失うこととなる。
 私は召使かもしれないが、彼女とは別れたくはなかった。
「でも居ないときにこっそり見るだけなら・・・。」
 彼女は一度出ていくと、しばらくは帰らないことはだんだ

んとわかってきた。
 「少しだけならいいだろう。」
 私は彼女が何を隠しているのか、どうしても見てみたか

ったのだ。
 建物に近づいてみる・・・。
 なぜか鍵はかかっていなかった。
 「こっ・・・これは・・・。」
 私は建物の中を見て絶句した。
 自転車の車輪・・・、便所のスリッパ・・・、かまきりの

卵・・・、味付けのりが入っていたであろう瓶、ありとあら

ゆるガラクタが集められていたのである。
 「遂に開けてしまったのだな。」
気が付くと、怒りの目にあふれたウェパルさんが私の

後ろに立っていた。
 「おまえ、この中の宝物を盗む気だったのだろう!」
この建物はウェパルさんの宝箱だったようだ。
私に盗まれると思って警戒していたようである。
 「なんで私がカマキリの卵とか、便所のスリッパとか、

盗まないといけないのですか。」
どうやら彼女は、落ちているものを集めたがる性癖を

持っているようだった。
 雪の中で私を助けたのも、単に落ちている物を拾って

きただけなのかも・・・。


 よい子のみなさまへ
 ワンちゃんみたいな性格だったのですね(。・ω・)ノ゙


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(実は一つの話を完結して他の話へ行くという手法

をとっておらず、いくつかのシリーズを並行して書い

ていますので、目次をご覧になった方がわかりやす

いかと思います。きまぐれで他のシリーズへ飛びま

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増刊号の「山池田」です。

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(山池田は登山日記と、自分では今一つと思っている

話を載せています。掲載は不定期です。)