見た目で判断しないでよ | 大池田劇場(小説のブログです)

見た目で判断しないでよ

         見た目で判断しないでよ
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 千佳大尉とアマンダ少尉は惑星アトランチスに来て

いた。
 「この星の人たちは帝国側から中立の立場へと外

交スタンスの変更を考えているらしいの。」
 二人は大事な外交文書の輸送を任されていた。
 宇宙船は小さな島に着陸した。座標は向こうが指

定してきたものだ。
 「ここから先は一人で来てほしいということだから、

アマンダお願いね。」
 電子地図に場所はマークされている。
 銃の腕はアマンダの能力の方が抜きんでている。

千佳大尉は宇宙船で留守を守ることにした。
 「ちょっと暗くて怖い星ね。」
 日の光があまり差さないらしい。昼間でも暗い星だ

った。
 「こんな星に住む人ってどんな人たちなんだろう。」
 帝国軍側に居た星系の人はグロテスクな姿をした

人が多いのである。
 道がぬかるんでいて気持ちが悪い。湿気の多い星

だった。
 地図に示されたとおりに進むと沼地に出た。白い服

を着た少女が水の中に立っている。
「私はこの星の外交官よ。」
女性はアメルと名乗った。
 体は小さいけどよく張った胸とお尻。これで成人して

いるのだろう。
「私より小さい女性は初めて見るわ。」
 アマンダは彼女を見て驚きの声をあげた。身長は1

メートルを少し超えるくらいだろうか?
 「小さい?私が・・・?身長は5メートルもあるのよ。」
 アメルはそう言って不思議な顔をした。
「・・・。」
アマンダはどう返していいか分からなくなって一瞬言

葉に詰まった。
「あははっ、どう見たって私のほうが大きいよ。」
 彼女は、アメルが冗談を言っているのだと理解した。
「うふふ、どうかしらね。」
とりあえずアマンダは預かってきた文書を預けようと

した。
 これで任務は終了である。
「ごめんなさい、私は水の中から出られないから、あ

なたがこっちへ来てくれないかしら?」
 アメルはそういってアマンダを誘った。
 「水の中に入るの?」
暗くって足元がまるで見えない。入り込むには勇気が

いる。
 それに何かの罠かも知れなかった。アメルはみたと

ころ水生生物とも思える。
 水の中に入っては抵抗ができない。
 「私を騙そうとか・・・、そんな気はないよね?」
水はとても冷たい。寒さに弱いアマンダはブルブルと

震えた。
 ひざ下まで水につかってしまい、服もブーツもびしょ

濡れである。
 「向こうの小さな島までお願いね。岸に小さな机が置

いてあるから、そこでサインするわね。」
アマンダはアメルに導かれるまま、沼の奥へと進んだ。
 「水の底が見えないから怖いでしょうけど、大丈夫。深

くはないわよ。」
言われるように水深は一定しているようだ。
 「あっ!」
 アメルは小さな叫び声をあげてアマンダを見た。 
 腰に差していた細い剣を抜く。
「足元に凶暴な爬虫類が居るわ。じっとしていなさい。」
反射的に銃を構えたアマンダを声で制すると、アメル

は剣を暗い水中に突き刺した。
 30センチほどの小さな生き物が急所を突かれて浮か

び上がった。
 「なんだろう、みたこともない生き物だわ。」
 アメルは不思議そうにその生物を見た。
「ありがとう。よくこんな暗い所で見えたわね。」
アマンダには水の中はまるで見えない。まるで墨汁の

中を歩いているように思える。
 「この星は暗い、闇の星。目はあまり役に立たないか

ら、私たちは視力がよくないの。」
目で見ているわけではないようである。
 「へえ、耳が発達しているのかな?」
水中の音が聞こえるのだろうか?
 「うふふ、違うわ。レーダーみたいなものを体に持って

いるといったほうがいいかな?」
何かの不思議な能力があるらしい・・・。
 やがて岸につき、アマンダは陸に上がって落ち着くこ

とができた。
 服はびしょ濡れで寒い。
「私たちは以前は帝国の主張に賛同していたの。でも

あまりにも彼らは乱暴で・・・。」
アメルはそう言って愚痴を言った。何かひどい仕打ち

を受けたようだ。
 「これが連邦軍大統領の親書よ。」
アマンダは持ってきた書類を差し出した。
 「ありがとう、連邦が守ってくれるのなら、帝国側から

離れることができるわ。私たちは戦闘に参加することは

できないのだけれど・・・。」
味方にはならなくても、中立の立場をとってくれれば

連邦としては大助かりである。
 必要な土地も提供してくれるらしい。
 消極的な同盟である。
「じゃあ、書類にサインを押すから持って帰ってね。」
 この書類にサインをもらうと条約が発令し、連邦軍が

大挙この星を訪れて帝国軍を駆逐するということにな

っている。
 「おい、ちょっと待て!その書類はこちらにもらおう。」
 岩陰から3メートルを超す巨人が現れた。帝国の兵士

である。
 銃を構えている。
「あの小さな爬虫類で私を見張っていたのね。」
 警察犬のように訓練された生き物だったのだろう。
 何らかの手段で連邦軍の接近を知らせていたのだ。
帝国の兵士はアマンダに向かって銃口を向けた。
 「おっと、おかしな真似はやめろよ。連邦のお嬢さんが

早打ちの名人だということは知っているのだからな。」
アマンダは身動きできない。
 「動くと容赦なく撃つよ。」
睨み合う二人の様子を見て、アメルは帝国の兵士に

話しかけた。
「うふふ、実は私も早打ちの名人なのよ。」
そう言ってにっこりと笑った。自分に注意をひきつける

つもりだろうか?
 帝国の兵士も馬鹿ではないので、アマンダから目を離

さない。
 「お前、銃なんか持っていないじゃないか。」
 アメルは右手の人差し指を前に伸ばし、親指を引き金

のように立ててみた。
 「試してみる?もし私に勝てたら、私のこと好きにして

いいのよ。」
帝国軍兵士は彼女が冗談を言っているのかと思った。
 「おまえが俺の相手を?その小さなボディでか?体が

裂けてしまうぞ。」
アメルはミニサイズだったがかなりの美人だった。
 帝国の兵士も興味を持ったようである。
「うふふ、まさか?私は身長が5メートルもあるのよ。あ

なたよりずっと大きいわ。」
そういって左手を自分の頭の後ろに回し、わきを見せて

胸を強調した。挑発的なポーズである。
 「あはは、面白い女だ。よかろう、その挑戦を受けようじ

ゃないか。」
アメルは楽しそうに笑った。
 「そうこなくっちゃ。私はたくましい男の人は大好きなの

。」
 彼女は手で作った銃を帝国軍兵士に向けた。
 「あなたのハートを狙い撃ちとか・・・。」
帝国の兵士はアメルの冗談に笑って見せた。
 「ははっ、もう射抜かれてしまったかな?」
まさか、手から光線が出るわけでもあるまい、そう考え

て油断した。
 「じゃあ、いくわよ。3.・2・1・・・、エイ!」
アメルの掛け声が終わるとともに、帝国軍兵士が悲鳴

を上げる。
 「がぁあああ!」
 もんどりうって兵士はあおむけに倒れた。
 ピクリとも動かない。即死のようである。
 周りの水面には、死んでおなかを見せているたくさん

の魚が浮いている。
 「すごいわ、どうやったの。」
アマンダは本当に手が銃になっているかと思った。
 「あなたが陸に上がっていてよかったわ。水の中に入

っていたら死んでたわよ。」
閉ざされていた厚い雲から、ほのかに太陽の光がさし

たとき、アメルのお尻からは長く伸びた尻尾が見えた。
 太さも胴体と同じくらいの直径を有している。
 「あなた、これって・・・?」
 「驚いた?私が水から出なかったのはこのせいなの。

陸上では重くて動けないのよね。」
彼女はその長い尻尾で水面をパシャリとたたいて見せ

た。
 イルカが跳ねたように大きな水しぶきが立った。
 「この尻尾で叩いたの?」
 「まさか?そんな素早く動けないわ。」
いくら浮力があってもこれだけの大きさのものだ。そう

自由は効かないのだろう。
 「よく見てなさい。」 
 彼女は自分の長い尾っぽを青白くスパークさせて見せ

た。
 雷が落ちたような稲光が水面を横に走る。
 「発電器官なんだ。」
光の速度で水中を走る銃弾と、早打ちをやって勝てる

はずなどない。
 相手は引き金を引く前に瞬殺される結果になる。
 「うふふ、そうなの。私はあなたたちの星の電気ウナギ

に似た生物なのよ。」
 実はアマゾンの電気ウナギも体の4/5が尻尾なので

ある。
 帝国軍の兵士は目を開けたまま、あおむけに水面に

浮かんできた。
「かわいそうに、きっと心臓麻痺で死んだのね。あなた

のハートを狙い撃ちにするって、最初に言ってあげたの

にね・・・。」
彼女は尻尾から微弱な電気を出して、レーダーのよう

に水の中の物を見ていたのである。
 それはもちろん、電気ウナギと同じように、やろうと思

えば攻撃にも使用できたのだ。


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をとっておらず、いくつかのシリーズを並行して書い

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いかと思います。きまぐれで他のシリーズへ飛びま

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増刊号の「山池田」です。

現在、なぞの物質・「福田樹脂」載せています
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(山池田は登山日記と、自分では今一つと思っている

話を載せています。掲載は不定期です。)