広い部屋。
でも空気は重かった。
さっきまで100人以上いた会場。
今、この部屋にいるのは――わずか40人。
落ちた人たちの涙が、まだ頭から離れない。
アリスは椅子に座りながら、小さく息を吐いた。
「受かったんだ……私……」
まだ信じられない。
番号札を何度も見てしまう。
その時――
「浮かれてる場合?」
聞き覚えのある声。
レイナだった。
黒いジャケット姿のまま、壁に寄りかかっている。
「次の審査、もっと厳しいよ。」
「え?」
「グループ審査。」
レイナは冷静に言った。
「実力だけじゃない。協調性も見られる。」
その瞬間、スタッフが入ってくる。
「皆さん、次の審査を発表します。」
部屋が静かになる。
「次は――5人1組のチーム審査です。」
ざわっ……。
空気が揺れる。
知らない人と組む。
しかもライバル。
簡単じゃない。
「今からチームを発表します。」
スタッフが名前を読み上げる。
そして――
「アリスさん。」
「レイナさん。」
え……?
アリスの目が大きくなる。
まさか。
「ユナさん、ミオさん、サラさん。」
同じチームだった。
レイナは小さくため息をつく。
「最悪。」
「えぇっ!?」
アリスが焦る。
すると、隣にいた明るい女の子が笑う。
「よろしく〜!私はユナ!」
元気いっぱいの18歳。
空気を変えるタイプ。
その一方。
長身でモデルのような女性――サラは腕を組んで言った。
「私は負けるために来たんじゃない。」
空気が少しピリつく。
そしてミオ。
静かで大人しそうな女の子。
でも、どこか強い目をしていた。
「……よろしく。」
チーム結成。
だけど、誰も心を開いていない。
その時。
スタッフの声。
「課題曲はこちらです。」
流れ始めたのは、激しいダンス曲。
しかも練習時間は――
たった24時間。
「嘘でしょ……」
アリスの顔が青くなる。
ダンス経験が少ない。
ついていける自信がない。
するとレイナが即座に動く。
「時間ない。まず立ち位置決める。」
真剣な目。
別人みたいだった。
「アリス、ダンス苦手?」
「え……少し……」
「じゃセンター後ろ。」
少しショック。
でも正しかった。
サラが冷たく言う。
「足引っ張らないでね。」
空気が止まる。
アリスは俯いた。
悔しい。
でも何も言えない。
その時だった。
「そんな言い方なくない?」
ユナが前に出た。
「まだ始まってないじゃん!」
サラは目を細める。
「甘いね。」
「オーディションは戦い。」
「弱い人を助けてたら負ける。」
沈黙。
空気が張り詰める。
すると――
レイナが低い声で言った。
「ケンカしてる暇ある?」
全員が静かになる。
「勝ちたいなら、まず踊る。」
その言葉で練習が始まった。
でも――。
アリスは振り付けについていけない。
何度も間違える。
何度も止まる。
そしてサラがついに言った。
「……もう無理じゃない?」
アリスの心が少し折れかける。
その時。
レイナが突然、音楽を止めた。
「アリス。」
「はい……」
「夜まで残るよ。」
「え?」
「私が教える。」
その言葉に全員が驚いた。
冷たいと思っていたレイナが――?
でも彼女はそっぽを向いたまま言う。
「勘違いしないで。」
「チームが負けるの嫌なだけ。」
だけど。
その言葉の奥に、少しだけ優しさが見えた――。
第3話 つづく
