白いライトが照らす大きなホール。
そこには100人近い候補者たちが並んでいた。
空気が重い。
静かすぎるほど静かだった。
前には審査員席。
音楽プロデューサー。
有名ダンサー。
芸能事務所社長。
誰も笑っていない。
ただ、真剣な目で参加者を見ていた。
「それでは、一次審査を始めます。」
スタッフの声が響く。
最初の審査は――
“30秒自己PR”
短い。
でも、その30秒で人生が変わる。
アリスの手が少し震える。
「無理かも……」
前の参加者たちはレベルが高かった。
ダンス。
歌。
モデル歩き。
中には元地下アイドルもいた。
歓声すら上がるほどだった。
「エントリーナンバー1932。アリスさん。」
ついに呼ばれる。
頭が真っ白になる。
足が少し震える。
ステージ中央へ。
まぶしいライト。
見えない客席。
怖い。
逃げたい。
その時だった。
後ろの列から声が聞こえた。
「下向くな。」
レイナだった。
腕を組みながら、小さく言う。
「見せたい自分を見せろ。」
アリスは深呼吸をした。
――ここまで来た。
逃げない。
マイクを握る。
「地方から来ました、アリス17歳です!」
少し声が震える。
でも続けた。
「私は特別じゃありません。でも……!」
会場が静かになる。
「誰よりも努力します!」
「歌もダンスもまだ完璧じゃない。でも、絶対に夢を諦めません!」
思わず頭を下げた。
数秒の沈黙。
審査員がメモを書く。
表情は読めない。
終わった。
ダメだったかも――。
そう思い席へ戻ると。
レイナが小さく笑った。
「……少しはマシ。」
「え?」
「泣きそうな顔じゃなかった。」
少しだけ嬉しかった。
だが、その空気は突然変わる。
審査員が立ち上がる。
「ここで一次審査の結果を発表します。」
会場がざわつく。
早すぎる。
誰もが息を飲んだ。
「番号を呼ばれた方のみ、次へ進んでください。」
番号が次々と呼ばれる。
「12番。」
「87番。」
「344番。」
拍手。
涙。
安堵。
でも――。
呼ばれない人もいる。
静かに泣き始める女の子。
スマホを握りながら俯く人。
「1932番。」
……え?
アリスの番号だった。
信じられない。
足が震える。
「うそ……」
その直後。
「417番。レイナ。」
当然のように呼ばれる。
でも次の瞬間。
後ろからすすり泣く声。
仲良くなったばかりの少女――
ミユ(16)
「……落ちた。」
笑顔だった彼女の目から涙が落ちる。
「私、終わった……」
アリスは言葉を失う。
さっきまで一緒に笑っていたのに。
ここでは、友達でも――
容赦なく落ちる。
レイナが静かに言った。
「これがオーディション。」
「泣いても、次に進む人は進む。」
その言葉は冷たかった。
でも――現実だった。
そして審査員の声が響く。
「合格者の皆さん。次は“グループ審査”です。」
ライバル同士で組む。
協力か、裏切りか。
新たな戦いが始まろうとしていた
