1 フランチャイズ・システムの本質

(1)フランチャイズ・システムとは、本部(フランチャイザー)が加盟者(フランチャイジー)に対し「物品販売、サービス提供その他の事業・経営について、統一的な方法で統制、指導、援助を行う」ものです(フランチャイズ・システムの定義については、当事務所ホームページ・ブログ「フランチャイザーの情報提供義務」を参照ください。http://ameblo.jp/m2-law/entry-11745083311.html )。

   このような本部の統制等があるからこそ、例えば、全国何処に行っても「Aコンビニ」という看板を掲げている店に行けば、同じ商品を同じ値段で同じサービスを受けながら購入できます。これが消費者に対する魅力となり、その店のオーナー(加盟者)が何処の誰かに関わりなく、集客を可能にします。だからこそ、加盟者は、本部から独立した事業者として自らの資本と労力を費やして得た利益であるにも関わらず、その一部をロイヤリティという形で本部と分かち合い、本部と加盟者は共存共栄していきます。

   つまり、フランチャイズ・システムにとって、本部の統制等は、本質的なものであり、また、そのこと自体に重要な価値があります。

(2)そこで、公正取引委員会としても「フランチャイズ契約においては、本部が加盟者に対し、商品、原材料、包装資材、使用設備、機械器具等の注文先…について本部又は特定の第三者を指定したり、販売方法、営業時間、営業地域、販売価格などに関し各種の制限を課すことが多い」としながら「フランチャイズ契約におけるこれらの条項は、本部が加盟者に対して供与(開示)した営業の秘密を守り、また、第三者に対する統一したイメージを確保すること等を目的とするものと考えられ、このようなフランチャイズ・システムによる営業を的確に実施する限度にとどまるものであれば、直ちに独占禁止法上問題となるものではない」としています。

2 優越的地位の濫用

(1)しかし、他方で、公正取引委員会は「加盟者に対して取引上優越した地位にある本部が、加盟者に対して、フランチャイズ・システムによる営業を的確に実施する限度を超えて、正常な商慣習に照らして不当に加盟者に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施する場合には、フランチャイズ契約又は本部の行為が独占禁止法第二条第九項第五号(優越的地位の濫用)に該当する」としています。

   そして、公正取引委員会は、その一例として「見切り販売の制限」を挙げ「廃棄ロス原価を含む売上総利益がロイヤルティの算定の基礎となる場合において、本部が加盟者に対して、正当な理由がないのに、品質が急速に低下する商品等の見切り販売を制限し、売れ残りとして廃棄することを余儀なくさせること」を指摘していましたが、近時これに該当する行為があった旨の指摘をしました(平成21年(措)第8号、ただし改正前の独占禁止法第二〇条第一項、同第二条第九項第五号・不公正な取引方法第十四項第四号に関する判断として)。

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(2)その概要は、上記した公正取引委員会のホームページに掲載されているとおりですが、要約するならば、株式会社セブン‐イレブン・ジャパン(以下、セブンイレブンといいます。)は、加盟者との関係で取引上優越した地位にあり、加盟者が廃棄した商品の原価相当額の全額が加盟者の負担となる仕組みで見切り販売を制限することは、加盟者が自らの合理的な経営判断に基づいて廃棄に係る商品の原価相当額の負担を軽減させる機会を失わせているので、そのような制限行為を取りやめなければならないとし、再発防止と独禁法遵守のためのプログラムの作成等を命じました。

   そして、セブンイレブンも、最終的にはこれを受け入れ「廃棄ロス原価の15%を本部が負担する」とした上で、独禁法遵守のためのガイドラインとしては「値下げは販売期限の1時間前を目安に行う、仕入原価を下回る価格で加盟店が販売した場合には損失は加盟店が負担する、ただし天候の急な変化など不測の事態発生による売れ残りなどは仕入原価以下の販売による損失でも本部が一部負担するケースもある」としたようです(根本「公正取引委員会のセブン‐イレブン・ジャパンに対する排除措置命令に関する基礎的検討」マーケティングジャーナル29巻2号16頁以下)。

3 以上は、セブンイレブンに関する判断ですが、公正取引委員会は、加盟者との関係で本部が優越的地位にあることを認めました。ただ、本部と加盟者との関係はどこも似たようなところがありますので、その判断が他のフランチャイズ・システムを営む本部に影響を与える可能性は大きいです。

確かに、公正取引委員会がこのような判断をした背景には、セブンイレブンの巨大さがあると思われます。しかし、公正取引委員会が取り上げないまでも、このような判断(本部が優越的地位にあること)を根拠として加盟者が民事訴訟を起こすことは十分考えられ、また、現実に起こされるケースも増えています。

そこで、本部としては、このような訴訟に対する対応、また、このような訴訟を起こされないようにフランチャイズ契約の内容をどのように改善していけばいいのか、といった点に悩むところです。この点、当事務所が得意とするところですので、関心あれば、当事務所にご相談ください。

 

 

 

文責 弁護士 村上博一