今日も雲1つないいい天気。
風もぼくの好みのいい風。
ご主人様のおうちの庭の木々に飛び移って遊ぶのにもちょうどいいかも?
ねぇねぇご主人様
お空が蒼いよ
とってもきれいだよ。
「ん?
なぁに、ショウちゃん」
ご主人様の前に座って尻尾を左右に振る。
眼鏡をずらしてやさしい笑顔を向けてくれるご主人様。
「もう少し待っててね。もうすぐひと段落着くからね」
ご主人様がぼくを撫でた。
やばい・・・
かまってって催促したつもりじゃなかったのに・・・・
ちょっとだけ寂し・・・・・
あっ・・・。
今のないしょ~~~!!!
「なに、くるくる回ってるの?
目、まわらない???」
ご主人様が声を出して笑った。
「おなかすいたの、また?」
さっきバナナ食べたよね?ってご主人様。
なんだか勘違いをされてしまった。
ご主人様と言葉が通じないのがいいのかどうかはわかんないけど
とりあえずホッとして深呼吸する。
それを見て
「へんなショウちゃん?」ってご主人様が言って
眼鏡を指で直し、視線を元に戻した。
ご主人様は書き物をしている。
気を取り直してぼくもそれを覗き込んだ。
はっきり言って
なんて書いてあるかはいまいちよくわからない。
それは『名簿』と『お客様帳』というものだってこの前奏くんが言ってた。
・・・・奏くん曰く
「兄さんのお客さんは『いろんな』ひとがくるってのだけはわかるよ」
なんだそうだ。
今日の洗濯物を全部干し終わった後、お茶休みしに奏くんがやってきた。
名簿を見て、一番上の文字を指さし
「兄さん、今日の1番目のお客さん、週1で来るんだよね、何時間いたの?」
ご主人様に質問する。
あんまりじろじろ見ないんだよってご主人様が開いてあった名簿を閉じてお客様帳と一緒に棚に戻した。
「は~い」
奏くんは返事しながら
「だって面白そうなんだもん。ね~?」
ってぼくに小声で耳打ちした。
奏くんが気にしてるのは本当は
名簿じゃなくてお客様帳のほうみたい。
ご主人様はやんわりだけど
「だ~め」
って・・・。
お客様帳(お客様カルテだって奏くんが言ってた)は企業秘密だからいくら兄弟でも見せないみたい。
「・・・・えっと、4時間かな?
だんだん長くなってるよ」
「すごいね、それは・・・・新記録じゃない?
2人目のお客様は・・・5分?」
「・・・・・今日は1分10秒。
だんだん短くなってる
・・・・奏くん、いつも勝手に見ちゃダメって言ってるでしょっ」
「はいはい。ごめん、兄さん。
それにしてもおもしろいなぁ・・・・
兄さんのお客さんは・・・・。
あ。
今日はもう予約ないの?
ないならご飯食べに・・・・・」
「・・・・・ごめん、奏くん
今日はやめとく」
ご主人様が奏くんの誘いを断るなんて珍しい。
「なにかあるの?」
「なにもないよ。・・・ただ・・・来るかもしれないから・・・」
「お客さんが?」
「そう」
「予約なしで?
たまにはあるだろうけど・・・・
めずらしくない?」
「珍しいけど、今日は来そうだから」
はっきり理由は言わず、でもきっぱりそう言った。
「・・・ふ~ん。わかった」
奏くんはなんだか納得してない顔して
でもそれ以上なにも言わずに
「じゃあ今日は帰るね。
ショウちゃんそこまで見送って」
って手を伸ばした。
つづく