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さて、今回は…
たくさんの患者さんと接して、その苦しみと向き合い続けてきた経験を通して、折れない心をつくるには、『悲しむ』という負の感情をさらけ出すことが重要、と語るのは著書もある精神科の先生。
・なぜ、悲しむことが折れない心をつくることにつながるのか?
・正しく悲しむポイントは何なのか?
を、今夜は先生の著書から学んでいきたいと思います。
🍀強そうに見えるものは…
先生いわく
「私は大切な方を亡くされた遺族の方専門の精神科医をしています。
レジリエンス外来と銘打ち、喪失と向き合うための集中的なカウンセリングも実践しています。
レジリエンスというのは、もともとは物理学の領域の言葉で、バネが元に戻る・復元力という意味があります。
この言葉が心理学にも流用され、今では一般的な心理学用語にもなっています。
心理学ではこの言葉は、大きなストレスに遭ったときに、それをしなやかに乗り越える力や、一度落ち込んでもまた戻るという、人の心の柔軟性を意味しています。
例えば、頑丈そうに見える樹木があるとしましょう。
幹がある程度以上の太さの木であれば、人間が力いっぱい押したぐらいではぐらつくことはありません。
しかし、一旦すごい嵐が来ると、こういう一見丈夫そうな木はボキッと折れてしまいがちです。
一方、決して頑丈そうに見えない柳の枝は、少しの風でもたわんで形を変えますが、風がやむと元に戻ります。
病気になったり、大事な人を失ったり、ショックな出来事に遭うと、多くの人は衝撃を受け打ちのめされます。
しかし、時間の経過とともに柳のように元の形を取り戻すのです。
もちろんその過程ではさまざまな葛藤があり、一筋縄ではないのですが、このように元に戻るレジリエンスの力が人間の心の中には備わっています。
これまで何千人もの患者さんと向き合い、人間のレジリエンスの働きを目の当たりにしてきました。
そうして、レジリエンスに関する学びが深くなるにつれ、実は『強そうに見えるものは弱い』という確信を持つに至りました。
🍀しっかり悲しみ、しっかり落ち込む
喪失と向き合う際に大切なのは、つらい気持ちを押し殺すのではなく、その気持ちときちんと向き合い、喪の作業をすることです。
例えば…
・そんなことが起きても自分はへっちゃらだ
・そんなことは関係ない
などと何でもないふりをして、現実と向き合うことを避けることは、問題の先送りになり、慢性化して苦しむ時間が長くなってしまいます。
あえてスケジュールを埋めて日々を忙しくし、悲しむ時間をなくすという人がいますが、これも立ち直りを遅らせてしまうことにつながります。
また、結婚式を挙げた場所や、亡くなられた人が働いていた場所などの、思い出の場所に行けなくなる人も少なくありません。
『大切な人が亡くなった。もう会うことはできない』という事実と向き合いたくないとい う心の動きがそうさせるのです。
向き合いたくてもあまりに苦痛が強くて向き合えないこともあるので、実際には簡単ではない事も多いのですが、現実を認めることを避けることは、『喪失と向き合う』という課題が進みづらくなってしまうことは事実です。
ですので、こういう場合のセラピーを行うときには、気持ちの準備ができたら、遺品の整理を積極的にやってもらったり、思い出の場所に足を運ぶようにアドバイスしています。
また、亡くなった日のことを、改めて振り返ってイメージしてもらい、『故人はもういないんだ』ということを実感しながら、積極的にしっかりと悲しんでもらうようにしています。
これらは、大切な人が亡くなった悲しみに暮れている遺族の方にとっては、最初はつらい作業になりますが、過去と別れを告げて、これからの人生を生きていく上で、必要な作業です。
体に傷を負ったときと同じように、心の傷口も痛くても洗わなくてはいけないことがあります。
洗わないままにしておくと、外傷と同じように、心の傷も膿んでしまい、回復が遅くなってしまうことがあります。
🍀心理学的に泣くことは、弱さでなく強さ
最新の心理学に基づいた精神科の臨床では、
『悲しいときは、泣くことを我慢する必要はない。
泣けるのであれば気持ちを押し込めずに泣いた方がいい。それは弱さではなく、実は強さなんだ』
というアドバイスを送るようになりました。
しかしこの心理学の常識は、まだ十分には知られていないように思います。
つらいことがあったとき、気持ちを押し殺してアルコールで憂さ晴らしをする方もいますが、これは最もよくないストレスへの対処法の1つです。
さまざまな危機と向き合うときに、怒りや悲しみといった負の感情には大切な役割があるということを、知っていただきたいと思っております。
私の外来では、無理やり語ってもらうようなことはしませんが、苦しい胸の内を充分に語っていただきやすいようにさまざまな配慮をします。
これは、悲しいときには悲しい気持ちをきちんと表すことによって、自らの力で立ち直ることができるという考えに基づいています。
悲しみの嵐が落ち着いてくると、『起きてしまったことは変えられない』という考えが生まれます。
諦めのようなニュアンスからではありますが、現実を受け入れようとする心の動きです。
そうすると、その現実を前提としてどう生きるかということを考えるプロセスが始まります。
患者さんが『どこに向かうべきか?』答えはその人の中にあるので、私が代わりに答えを出すことはできません。
私は患者さんご本人たちに『あなた自身の力で向き合っていくことができます』と促し、自分で答えを見つけてもらっているのです。
私の外来では、あくまでも主役は患者さんその人です。
なぜなら私は『人間は、苛烈な体験があっても、それをくぐり抜けていく力が備わっている』と信じているからです。」と先生はいいます。
次回は、『正しく悲しむために』について先生のお話を伺っていきたいと思います🍀
