私はカナダに2度訪れた。

1度目はトロントに1ヶ月の語学短期留学、2度目は夫と合流する前にバンクーバーへニコニコ


 トロントに行ったのは30代の時だ。

その時働いていた職場はオープンして日の浅い病院で、私は内科急性期病棟の主任だった。

オープンしたてということもあり、患者を受け持ちつつ、トラブル対応や他部署からの要望処理、連絡などに忙殺されていた。

 上司である師長がよりによって病棟経験の無い人で、「私わからないからよろしく。」とほぼ私に丸投げ状態だった為だ。

それなのに陰で私の事を悪く言っていたり、私の休み希望は通さず自分が可愛がっているスタッフの希望だけを通すなどの嫌がらせをしたりされていた。

でも私は自分が頑張らなくちゃと思い込んでがむしゃらに働いていた。


 そんなある日夫が言った。

「仕事を辞めろ。辞めてどこかに英語の勉強をしに行ってこい!」

英会話教室に通っていたので短期でいいから海外留学したいという希望は持っていた。

 でもそれまでどんなに残業して帰宅が遅くなろうが緊急呼び出しで夜中に飛び出して行こうが一切何も言わなかった夫が仕事を辞めろと言った。

 最初は面食らったけど、反発もしたけど、煮詰まっている自覚はあったし、英語の勉強の方に魅力を感じたのもあって休職して1ヶ月短期留学する事にした。


 それで選んだのがトロント。どうせ行くなら日本人が少ない所に行ってみたいと思ったから。

その当時は日本人がカナダに行くと言えばバンクーバーだった。とは言うものの留学会社のオフィスがあり、何かの時には頼れる場所がきちんとあったのも選んだ理由だった。

トロントはカナダの経済の中心地。北米大陸の五大湖の1つ、オンタリオ湖のほとりの広くて綺麗な街だった。


 日本語が全く通じない所での生活は大変だった。

今みたいに通訳アプリなんて無かったし、その時の私の英語力は下の上。

何とかこちらの言いたい事は言えても向こうの言葉が聞き取れずに苦労した。

電子辞書を片手にコミュニケーションを取ろうと必死に頑張った。

お陰で3週間程したら大分聞き取れるようになり、自信もついた。

それまでは心細くて、夫にべそをかきながら電話した事もあった。高い国際電話でえーん

SkypeLINEなんてなかった時代だしね。そもそもWi-Fiが無かったし。


 現地に滞在して2週間が過ぎた頃だったと思う。語学学校が半日で終わる日だったので、ランチを最寄りのフードコートで食べたあと、トロントのシンボルCNタワーに観光に行った。一人で。

タワーの周辺は綺麗な公園になっていて湖のほとりまで行けるようになっていた。のんびりするには最高の場所だった。

通りすがりのカナダ人の女性に声をかけて写真を撮ってもらった。

彼女は快く引き受けてくれて、私が拙い英語で短期留学している事を話すとカナダを楽しんでねと温かい笑顔で励ましてくれた。


 その後しばらくボーッと湖を眺めていたんだけど、ふっと思った。

「私、今までなんであんなに仕事の事ばっかり考えていたんだろう?何やってたんだろう?私だけあんなに頑張る必要あったのかな?」

そしたら目からボロボロっと涙がこぼれた。

それと一緒に心の中にずっと居座っていた重かった石が溶けてなくなったような気がした。


 夫が仕事を辞めろと言った意味をこの時やっと理解した。

自分が心を病んでいた事に初めて気がついたのだ。カナダに来ていなかったら完全に心が壊れていたかもしれない。

仕事から完全に離れ、非日常を送る事が癒しになったのだ。


 この時私は生まれ変わった。私にとってトロントは第二の故郷になった。


 帰国した時、夫は私の顔を見て安堵したそうだ。行く前とは全く表情が違っていたと後から言われた。

荒療治だったかもしれないけど、そうなるように放り出してくれた夫には感謝しかない。

近い将来夫と一緒に私が生まれ変わった場所を訪れる予定だ。ナイアガラの滝も合わせて。必ず!

 留学最後の1週間はカナダ東海岸を観光した。

ナイアガラの滝は語学学校主催のツアーで見に行ったからモントリオールやケベック、プリンスエドワード島を訪れた。

心の重荷がなくなってたから心底楽しかったな。


 バンクーバーは今年の2月に海外周遊中の夫の所に行く前に滞在した。

夫が海外周遊するのが羨ましくて、途中合流するコースを組んで私は私で一人旅をしたから。

夫婦なのになんで別々⁈と周りは呆れてたけど。


 ここも自然豊かな素敵な街だった。坂が多くて歩くの大変だったけど。

有名なスタンレーパークは広過ぎて足が棒になった。休憩してたら若い兄ちゃんにナンパされた。

若く見えたんだろうけどアラ還のおばちゃんナンパしてどーするの爆笑爆笑爆笑

 あちこちに日本人沢山いたけど、それ以上に中国人観光客が多かったのは今時だった。大抵大声で喋ってるからすぐわかる。

後は円安で物価が高いのがネックだったなー。これはどこへ行っても同じだけど。

食費や宿泊費がかかる事だけがねー。キッチン付きのスタジオタイプの部屋を借りて自炊したからマシだったけど。


というわけで(何が⁇)次は南米2人旅を語ってみようと思います。

興味ない方にはごめんなさい🙏



トロントCNタワー



バンクーバー名物蒸気時計