中部 社会 2018/2/7 16:43 (2018/2/7 19:55更新)

「1票の格差」が最大1.98倍だった201710月の衆院選は憲法違反として、弁護士グループが選挙無効を求めた訴訟の判決が7日、名古屋高裁であり、藤山雅行裁判長は「投票価値の平等に反する状態にあった」と述べ、「違憲状態」と判断した。選挙無効の請求は棄却した。

 

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名古屋高裁前で垂れ幕を掲げる原告ら(7日午後、名古屋市中区)

 2つの弁護士グループが全国の高裁・高裁支部で起こした計16件の同種訴訟のうち、東京高裁などこれまで10件の判決は「合憲」としており、違憲状態の判断は初めて。判決は3月までに出そろうとみられ、最高裁が年内にも統一判断を示す見通し。

 この日の判決は愛知、岐阜、三重の計24選挙区が対象。藤山裁判長は判決理由で、17年衆院選の格差について「2倍を切っているものの、極めて2倍に近い」と指摘した。その上で「(各都道府県にあらかじめ1議席を割り振る)1人別枠方式を含む定数配分が一部の修正を重ねる是正にとどまり、構造的問題点を抜本的に解消する措置の実現に至っていなかった」と判断した。

 一方で今後国会がより人口比を反映しやすい「アダムズ方式」を導入する点などを踏まえ「投票価値の平等の実現に向けた取り組みが行われてきた」として選挙無効の訴えは認めなかった。

 17年衆院選を巡り、国会は同年施行の改正公職選挙法で小選挙区の定数を「0増6減」し、約3分の1で区割りを見直した。最大格差は1.98倍に縮まり、1994年に導入された小選挙区比例代表並立制の下で初めて2倍を下回った。

 091214年の衆院選では最大格差がいずれも2倍を超え、最高裁は3回続けて「違憲状態」と判断した。

●「政治に忖度せず」と評価 原告側

 名古屋高裁が2017年衆院選を「違憲状態」と判断したのを受け、原告の弁護士グループが7日に名古屋市内で記者会見し、升永英俊弁護士は「奇跡に近い」と評価した。伊藤真弁護士は「政治に過度に忖度(そんたく)せず、裁判所の役割を果たした」とし、「(1票の格差が)2倍未満だから『合憲』という考えは間違っているとはっきり示した」と話した。

行政に厳しい「名物判事」 藤山裁判長
 今回、「違憲状態」の判断を示した名古屋高裁の藤山雅行裁判長(64)は任官40年のベテランだ。多くの行政訴訟を取り扱い、たびたび国などに厳しい判決を下してきた「名物判事」として知られる。
 東京地裁時代の小田急線高架化事業の認可をめぐる訴訟では、「騒音発生の疑念への配慮を欠いている」などとし、着工区間の事業認可取り消しを命じた。首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の土地収用訴訟でも住民側の訴えを認めた。いずれも控訴審で覆った。
 津地家裁所長や名古屋家裁所長などを経て、名古屋高裁に2015年6月に就任した。同高裁では、ネパール人男性の難民申請訴訟、不法入国したイラン人男性の強制退去処分を巡る訴訟などで行政側の主張を退けた。