つい最近、元ニューヨークフィルのコンサートマスターが使っていたという200年以上も前のヴァイオリンの修復作業を終えたばかりでした。
新作を作るのとは違った神経の使い方をするし、自分の個性を出すことは避けなければならない仕事です。
新作の仕事とはある意味対極な作業の連続となるのでご依頼を受け入れる前は実のところあまり気乗りがしかなったりするのですが、修復を終え楽器が復活すると素直に「よかった!」とうれしい気持ちにもなります。
これであと数十年は大丈夫だぞ、と。
7~8年前には、Gragnani(グラニャーニ)というやはり二百数十年前のオールド楽器の大修理をやったことがありましたし、さらにその前にはGofriller(ゴフリラー)というオールドチェロの大修理にたずさわったこともありましたなあ。
修理という仕事は、まことに地味といえば地味な作業の連続。修理が完了したあとは、修理の痕跡を残さない、何をどうやったか分らなければ分らないほど“よい仕事”をしたということになります。
数ヶ月間“入院”した楽器にはやはりある種、妙な親近感も起きたりすることもあるのですが・・・それは、一瞬の事。 そして持ち主の元へと戻っていくわけ。