弦楽器の職人であれば、たいていは弓の毛の張替えという仕事もやります。さらには私の師匠である「弦楽器Ueki」の植木繁氏のように弓そのものにおいても素晴らしい作品を生み出す製作者も稀におります。
(ちなみに植木氏作による弓は、チェロの堤氏が長年愛用、N響のコンマス・山口さんは楽器も弓も愛用されているし、息子さんでチェリストの植木昭雄さんほか、多くの演奏家が使用しています。)
私自身も毛の張替えはもちろん行います。
私は盛岡で工房を営んでいる職人なのですが先週は仙台フィルの方が弓毛張替えに持っていらっしゃったし、定期的に東京から盛岡まで毛替えに来る方もいるんですね。
(盛岡で毛替えして、その帰り花巻温泉に一泊して帰京する、というパターンらしいです。)
北東北に演奏旅行で着たりする在京の奏者、N響の方、東京シティフィルの方など、弓の毛の張替えにお立ち寄り、ということありますし、昨年暮れのように盛岡でのコンサートの直前にソリストが毛の張替えにくることもあったり。
で、そのような演奏家達の弓、たいてい100万円は下らない弓だったりするわけです。
(というか、かなり、はるかに高価!)
楽器製作や楽器調整とはちょっと別の神経を使うことになり、肩が凝るというのとも違って毛を張り終えたあとで「すどーん」というか「どっと」くるものがあります。
私の工房では弓の毛張替え¥6500円で、一般的には「安くはない」という感じかもしれませんが、神経の使い様からすると私的には「これで妥当な金額とさせてください。」
というのが正直なところであります。
(3,000円とかで、毛替えするお店もあるようですけど、私にはどう考えても無理!!!)
弓というのは構造がかなり繊細というか、ある意味きゃしゃに出来ています。
で、弓の毛を押さえている要所となる部分、3箇所にはクサビのような詰め木をはめ込むのですが、このところの仕事にそうとうな神経を使うのです。
この仕事、もう20年以上もやっているし、すでに数千本以上は経験している仕事なのですが、いまだにこの一本で結構神経使います。
まあ、こんなこと書くようでは弓に関して「「お前プロとは言えないね。」といわれてもしょうがないですが・・・。