アスペル君の父として -4ページ目

早くも限界。

 夏休みが始まったばかりですが、早くも限界点に近づきつつあります。


 夫婦二人で、息子のやることなすこと全てに我慢がならなくなっています。嫁さんは鬱状態に入りかけています。私は昨夜息子と語り合った……のではなく、一方的に詰問し、責めてしまいました。とてもここには書けないような罵詈雑言も投げつけました。


 とにかく一緒にいるのが嫌で嫌で。これから打開策を練ります。あああ、情けない親だ。


タイミング。

 昔懐かしブラックビスケッツの歌じゃありません(このパターンでしか書き出せなくなったのか?)。


 うちの息子はとにかく「間」が悪い。夫婦で話していると割り込んでくるし、褒めてやろうとすると否定的な発言をするし、部屋の中をウロウロしているとわざわざ進行方向に移動してぶつかるし、こっちが集中しているときに擦り寄ってくるし……。

 とにかく相手との距離感が掴めない奴なのである。よく必要以上にズカズカと近寄ってきてこちらを閉口させる人がいるが、あんな感じである。それに加えてアスペル特有の「空気が読めない」「暗黙の了解が通じない」の状態を併発(?)するものだから、こっちがイライラしたり爆発したりするのである。本人に悪気はまったくないのだけれど。


 有名な心理学用語に「ヤマアラシのジレンマ」というものがあるそうだ。体に棘を持っているヤマアラシは、仲間を見つけると嬉しくて近寄っていくけれど、近づきすぎると自分の棘で相手を刺してしまうし、自分も傷ついてしまう。かといって離れすぎると寂しい。そうやって近づいたり離れたりを繰り返しているうち、お互いにちょうど良い距離を見出すのだ……と、たしかそんな内容だったと思う。


 こら、息子、棘が痛い! パパは血だらけだ、あっち行け! あ、でも離れすぎるな、寂しいやんか。

 あーあ。彼に「適切な距離感」というのは存在しないんだろうな。それで他人から疎まれるというのは、本人に自覚がないだけに、尚更悲劇だと思う。

夏のバラバラ

 君はバラバラ……と歌った田原俊彦じゃありません(最近この導入が多いな。しかも歳バレるし)。


 寝つきが悪く暑がりの息子のために、とうとう我が家は一等地を提供することにしました。即ち、エアコンの真下に彼の布団を敷いたのです。

 これでドライの冷風は彼が独占することに。あとは家中の仕切りを全開にし、その冷風のおこぼれを、私たち夫婦が預かることにしました。嫁さんは息子の部屋に布団を敷き、扇風機で強制的に冷風を呼び込みます。私はエアコン部屋の隣です。見事に一家三人の寝るスペースがバラバラになってしまいました。


 ところが新たな課題が私のほうに発生してしまいました。私は冷房が苦手なので、一晩中駆けっぱなしだと肌が冷たくなってしまいます。

 そこで隣の部屋から漏れてくる冷風を避けるために、エアコン部屋との間にふすまを入れました。私がいる部屋は、寝るときだけ四方を壁とふすまで完全に区切った個室になります。


 夜密閉した部屋で寝ていると、ふすまの隙間から僅かな冷風が……でもその微妙な涼しさだけでも十分で、昨夜は心地よく眠ることができました。扇風機の恩恵に預かっている嫁さんも、「エアコン部屋に寝るよりかえって快適」と言います。


 まさに三方丸く収まった訳ですが、形だけ見ると一家離散状態です。暑がりと寒がりの混在する家族は哀しいですね、うう。

うちの学校。

 以前も書いたことがありましたが、私と嫁さんの夢は、アスペルガー児専門の学校を作ることです。財団か学校法人を立ち上げて、全国からアスペル君を受け入れる。結構本気で考えてます。


 ところで私たちは、お金のコンサルタント、というより幸せな生き方の指南で有名な本田健さんの本をよく読んでいます。

 彼はアメリカに住んでいて、お嬢さんをユニークな学校に通わせているそうです。その学校では一日中生徒が自分のペースで、好きなことをやっているのだそうです。裸で走り回っている子やコンピュータゲームをやっている子、ドラムを叩いている子など、とにかく好きなことを一日やる。その中で自分が本当にやりたいことを意識するのだそうです。試験とかクラスもないんだとか。

 この話を読んだとき、私たちがまず思ったのは、「アスペル君こそこういう学校にふさわしいじゃないか!」でした。そして、将来自分たちが作る学校は、こんなスタイルにしようね、と決めたのです。


「でも日本の教育制度だと、小中学校でこれだけのカリキュラムを終了しなさいって規定があるんだろうね」

「うん、きっとあるよ」

「当然うちの学校のやり方にも、文部省が文句つけてくるだろうね」

「そのときは日本を脱出して、他の国で作ろうか」


「うちの学校」だって。我が家はいま、学級費さえ払えないほど困窮してるのに。

 

 でも、冗談で言ってるんじゃありません、そんな学校を、必ず作るつもりでいます。


 かつて項羽に百敗した劉邦は、どん底から這い上がって漢帝国を建国したといいます。

 どこにも行き場がないアスペル君たちのために学校を作る。それくらい、できなくてどうする!

クマが……

 出没したわけではありません。熊田曜子の話でもありません。いけね、最近疲れてるな。


 連日の猛暑で九州地方は熱帯夜続き。暑がりなのに羽毛布団を引っ張り出して寝る彼にとっては地獄です。

 ちゃんとエアコンを掛けて涼しくはしてるんですが、それでも暑いらしくて。おまけに昨夜は友達と電話で話したので頭の興奮が治まらず、夜中までずっと起きていました。


 やっと12時過ぎに寝たのですが、今度は朝五時頃に目を覚まして、私たちが寝ている部屋の前にぼうっと立っていたそうです。見つけた嫁さんは口から内臓が飛び出しそうなほど驚いたとか。

「かあちゃん、エアコンつけていい?」と聞きたかったそうで。(勝手につけると起こられると思ったらしい)


 結果、今朝起きた彼の目の下にはくっきりとクマができていました。とても辛そうでした。


 暑くて眠れない。それとも、一日の興奮が残っていると眠れない。どっちでしょう。


 嫁さんと顔を見合わせて、(天使先生がおっしゃってた、薬を使うというのも手かなぁ)と話し合いました。暑いのも去ることながら、強制的に脳の興奮を抑えないと、どうも彼に安らかな休息は訪れそうもありません。


 皆さんのおたくではどうですか?


決められない。

 昨日彼は不機嫌な顔で帰ってきました。理由は「先生に怒られたから」。

 その後特別支援の先生からお電話をいただき、事情を聞いたところ、通級クラスの担任の先生に怒られたのだそうです。皆が挨拶するときにしない。鞄をちゃんと直さない。理由を訊かれてもずっと答えなかったそうです。彼が良く見せる反応、「固まる」という奴ですね。

 

 で、私たちが理由を訊くと、彼の答えは「暑かったから」。登校中熱くて、朝の会のときに皆と同じにできなかったのだそうです。「皆と同じにできないんだったら、通級クラスじゃないほうがいいんじゃないか? そのために特別支援教室があるんだし」と言うと、またべそをかいてしまいました。これもいつもの反応。


 で、今朝。トラブルがあった翌日だから休むかな、と思っていたら案の定ウダウダしています。

「どうする? 学校行く? 休む?」

「……」

「休むならそれでもいいから、自分で決めなさい」

「……決められない。どっちがいいと思う?」


 …………


 いや、頭では分かってるんですよ。アスペルガーの子は自由な選択が苦手で、無理に決めようとすると頭がこんがらがるっていうのは。それが天才型のAS脳の特性というのはよ~く分かっています。


 でもね、自分の行動を決められないというのは、一個の人格としてあまりにも……。


 ときどきどうしようもない虚脱感を覚えるのはこんなときです。私たちが指示を与えて、スケジュールを組めば、彼はちゃんとそれをこなす。ときどきそら恐ろしいほどの知識を披露しながら。

 でも、それが無性に虚しくなることがあります。


 いったいこいつは、私たちがいなくなったらどうなるんだろう。

暇を潰す方法

 先週行われたサポート会議で、息子が議題を提案してくれました。曰く、「ひまを潰す方法」。小学生の後輩君や高校生のお兄ちゃんと一緒に、「僕たちが休みの日に暇を潰すには?」について話しあったのです。当然彼が発議した背景には、私が蛇のようにねちっこく「会議で話し合ってくれよ会議でで話し合ってくれよ……」と唱え続けたサブリミナル効果があったのですが、まさか、本当に話し合ってくれるとは。


 で、私たち親は彼らの様子をマジックミラーの向こうから見守ります。姿は見えるが音は聞こえず。しかし身振り手振りと、進行役の天使先生がホワイトボードに書く文字から、大体の様子は分かります。

 まずは三人の特性確認。高機能およびアスペルの子供は自由が苦手で、なにをしてもいいよと言われると戸惑ってしまうよね、ということの再認識から始まります。それは私たちも理解しているつもりなんですけどね。


 ではなにをするか。息子以外の二人も身に覚えがあるらしく、「こんなのをすれば潰れるんじゃない?」という案が箇条書きで書かれていきます。「クロスワードが一冊あれば」と書かれたときには、私たち親の間から「おお!」とどよめきが上がりました。


 一人のお母さんが「『遊びに行っておいで』って送り出すなんて無理無理。こっちが一日のスケジュールをびっちり入れてあげないと」と言っていました。

 そうかぁ、発達障害の子はやっぱりそこまでしてあげないとダメなのかな。それも結構、親と子の両方にとって辛いものがあるけどね。


 結局会議で決定打は出なかったようなのですが、終わった後彼は「今度暇になったら料理をする!」と言い出しました。なるほど、そういう手があったか。たしかに彼はそういったことが好きだし、意外と実益も兼ねて一石二鳥かも。

 どうせなら、調理のときに汚した台所もきれいに吹き上げてくれな。

自分で決めろ!

 九州地方は台風の接近で生暖か~い風が吹いております。湿気がムンムンして町中がミストサウナ状態です。


 この分だと。今週末も屋内に閉じ込められることでしょう。そうなると、彼の恐怖の攻撃が始まります。


「ねえパパ。何をしたらいい?」


 彼は休みの時間をうまく使えません。誰かが指示をしないと、あるいはたまに友達と遊ぶ約束がないと、なにをしたらいいのか分からないのです。そのくせ「本を読んどきなさい」「部屋でごろごろしときなさい」と言うと「え~飽きた」「え~つまらん」の繰り返し。

 無理だと分かっていても「自分で遊びに行ってこい!」と言いたくなります。「え~どこに?」と訊かれるのが落ちなんですけどね。


 社会性が発達していない子どもを持つと、親は延々と付きまとわれるんです。この辛さは、子離れを寂しがっている親には分からないだろうなぁ。


「休みの日をどう過ごしたらいいか」。これをテーマに、サポート会議で話し合ってくれ! 遊ぶ内容くらい自分で決めろ!

バタリアン。

 わが息子には軽い睡眠障害があります。すなわち、夜眠れない。

 そこでセンターの所長先生のご指導で、眠りに着く前に睡眠導入剤を飲むようにしていました。これまで錠剤タイプのサプリメントを分けていただいていたのですが、都合によって所長先生のお手元に入らなくなってしまいました。

 従って今度は私たちが自分で睡眠導入剤を買わなければなりません。


 そこで考えたことがあります。

 私たち夫婦は最近、アンドルー・ワイルという、アメリカで代替療法を広めた人の著書を読んでいて、その影響で、化学的に合成された薬品にかなりネガティブなイメージを持つようになりました。

 従って、これから息子に飲ませる導入剤も、できれば化学合成されたものではなく、できれば天然成分の生薬を飲ませたいと思うようになったのです。


 いままで飲んでいたサプリメントはメラトニンでした。これも良いのですが、もっと他にないだろうかといろいろ探していたところ、どうも西洋カノコソウの成分が良さそうだという結論に達したのです。一般的な通称は「バレリアン」というそうです。


 じゃあこれにしようかと二人で決めたはいいのですが、私が「オバタリアンみたいな名前だな」と言ったものだから、もうたいへん。その後正式な名前が思い浮かばなくなったのです。


「ほら、なんていったっけ、今度買おうと思ってるオバタリアン……」

「バタリアン?」

「そうそう、そのバタリアン」


 ホラー映画じゃないって。


 という訳で、今日買いに行こうと思います。バタリアン、じゃなかった、バレリアン。



サポート会議

 同程度の発達障害を持つ子供たちが顔をあわせて、いろんな問題を話し合うという試みが、天使先生の声掛けで始まりました。

 先週の金曜日がその第一回目。高機能の小学生君、アスペルガーの高校生のお兄ちゃんの二人に、息子が加わるような形です。


 私は仕事の都合でその場にいなかったのですが、嫁さんの話ではすぐに打ち解けた感じで、特に小学生の男の子とはぐるぐる施設の中を走り回って遊んだそうです。子供ってなんですぐ走るんでしょうね。


 先輩に当たる二人は、とてもよく自分の障害について理解をしているようだった、と嫁さん。うちの子は、のほほんとしたもんです。


 会議は、メンバーの一人の悩みを皆で考える、といった内容を中心に、定期的に開催される予定です。相手の悩みを聞き、意見を出し合うことで、自分の障害に対する気付きにもなるのだとか。


 この会議の様子は随時紹介していきます。