九段下の昭和館は開場したのが1999年3月とありますから、四半世紀も前の話です。

仕事柄、靖国通りは往復することが非常に多く、ざっと計算しても数千回、その前を通過したことになりますが、見学に入ったのは今回が初めてです。

テーマは「慰問-銃後からのおくりもの」

慰問袋があったということは出征した父親と母から、何となく聞いてはいましたが、是非見てみたいと思ったのです。

 

入口の看板

故郷を離れて戦地に立つ兵隊さんたちに、手紙やたばこ、本、缶詰、菓子、文房具、殺虫剤等の日用品を袋に入れて送ることで、少しでも戦意の高揚を図ろうと日本中で奨励されていたそうです。もちろんその中身は検閲されますから、品物はもちろん手紙の文面にも注意することが必要でした。内地に残った女学生や主婦たちが主にたずさわったのですが、考えてみればその慰問品も100パーセント戦地に届くものでもなく、輸送に携わる人々も命がけだったことがわかります。

特に輸送船は民間から借り出されたものが多く丸腰で、物資不足のために周囲の警戒が不十分で、多くが米軍潜水艦の餌食になったそうです。

 

 

歌手や俳優、落語や漫才等の芸人さんたちも慰問団を組んで、戦地の病院を回ったとあります。

また、兵士が届いた慰問袋を開けている時の喜んだ顔は、人は正直だなとつくづく思いました。

 

もちろんこんなことが二度とあってはなりませんし、とても悲しい時代だったと思います。

しかし、特定の人に宛てた手紙と品物ではないのに、戦地の兵士が返事を出して、内地の人と交流ができて心が少し通じあったと聞くと、デジタル全盛で手紙が隅に追いやられている現代でも、手紙の力を侮ることはできないと感じました。

 

物で溢れかえっている今に、じっくり考えさせる実にタイムリーな展示でした。