長い間美術品を見続けていると、時々、見たことも聞いたこともない作家の展覧会に出くわします。映画や演芸と同様に時々外れがあるので、行く前には慎重に考えるようにしていますが、第一に今回はふりがながないと読めない作家です。行くか迷った末に、最終的には住友財閥の眼を信用してみました。

会場は六本木の泉屋博古館となります。

 

 ウェブサイトには「近代の日本洋画に本格的な写実表現をもたらした」とあります。会場入り口すぐの「マルソー将軍の遺体の前のオーストリアの参謀たち」は、博古館の所蔵品で以前に見たことがありましたが、好きな絵で圧倒的な描写力です。その作者ローランスから鹿子木孟郎が教えを受けたと知り、俄然見る気が沸いてきました。

 

最初の展示「野菜図」は14歳で描いた作品で、画塾が天彩学舎とありますが、見た瞬間に天才学舎の洒落ではないかと思いました。水彩の色遣いがケタ外れに上手で、少年時代の作品とは信じられないのです。その後に並ぶ鉛筆や木炭のデッサンの陰影と細密さは、こんなの見たことないというほどのレベルでした。水彩も併用した「横向きの男」などはもうセピア色の白黒写真と見まごうほどです。一体どうしたら、空気感というか画面に額の輝きが表現できるのかと思いました。

 

ノルマンディーの浜(撮影可)

 

時系列に並ぶ作品を見ていて素人目にも、いっとき作風に迷う時期があったのではないかと感じさせますが、それを乗り越えて独自の世界を築き上げていきます。

 

パンフレット裏面

 

パンフレット右上の油彩「木の幹」は、他の作家が誰も考えないようば構図で、見ていて巨樹が森の中の目の前にある感じがしました。

 

見に来て大変満足した展覧会でしたが、欲を言えばショップの作品はがきに、鉛筆や木炭のデッサン画があればなーと思いました。

会期は4月5日(日)まで、お薦めです。