132 心の安全地帯 | 読むカウンセリング

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親からの虐待、両親の蒸発、いじめ、不登校、対人恐怖症、うつ、母の死は私のせいという罪の意識から解き放たれた心理カウンセラーが、自ら体験した心の癒し方をお伝えします。

初めての方へ

この物語は
トラウマ(心の傷)に関するカウンセリング
テーマにした架空のお話です。
まずは、プロローグからお読みくださいね。


――


132 心の安全地帯


「私がカウンセリングを支えている?」

カウンセラーの言葉を
妻は理解できていないようだった。

「そうです。
 さらに言うなら、もしご主人が
 あなたに出逢っていなかったとしたら

 今より酷い状態になっているか
 最悪の場合
 命を落としていたかもしれないと
 私は考えています」

妻は無言だった。

「今、ご主人と行っている
 カウンセリングでは
 かなり深い部分まで自分の心を
 見つめる作業をしています。

 自分の心、特にこれまで避けてきた
 本音と向かい合おうとするとき
 
 何があっても大丈夫と思える
 心の安全地帯が必要になります。

 どんな自分の状態でも
 受け入れてもらえる安全地帯がないと
 本音と向き合うことが
 とても困難になります。

 本音と向き合うことは
 心の危険地帯に突入していくこと
 でもあるからです。

 奥さんの存在、あなたの存在こそ
 ご主人が心の危険地帯から
 帰ってこれる唯一の場所なのです。

 私には心の危険地帯から安全地帯へ
 ガイドをすることはできても
 ご主人の安全地帯となり
 生活を共にすることはできないのです。

 あなたがいるからこそ
 ご主人も私もカウンセリングに
 集中することができるのです。

 私は、あなたの優しさを信頼しています。
 ご主人も、きっと同じ思いだと思います」

カウンセラーの言葉に
心が揺り動かされた。
確かに妻がいなければ
僕は今、どうなっていたのか分からない。

それに、僕の気持ちを
カウンセラーが代弁してくれたようにも
思えた。

妻の顔からは憂いがなくなり
輝きを取り戻していた。
頬に一筋の涙が流れる。

今日初めて見る、妻のうれし涙だった。