どちらからこういう話になったかは、もう記憶にないのですが、しばらくの時間をいただき、お茶をすることになりました。
お世話になったバンドの先輩方とのつもる話もあるでしょうし、時間を待ち合わせました。
しばらくしてから、駅前まで送ってもらったビビビ君は、私の車に乗り換えられました。
「僕に運転させて!」
と言われ、まだ自分の車も無く、父に借りていたジェミニを運転してもらい、行きつけだった喫茶店に向けて走りだしました。
私は、なんだか夢を見ているようで、ドキドキ緊張もありましたが、嬉しそうにいろいろ会話しました。
「これ、僕が作った曲なんだけど、聴いてみる?」
と、デモテープをカーステレオで聴かせてもらいました。
そうこうしているうちに、喫茶店に着きました。
目の前にマスターのおられるカウンターに並んで座り、東京での生活などを尋ねました。
やはり音楽関係に携わっていて、バイトで重い機材を扱うので、生傷が絶えないと腕をまくって見せてくれました。
又ある女性シンガーのマネージャーをしているとのことで、
「ふぅ~ん、凄いなぁ…。その歌手知ってるわ。
あの歌有名やもんね!」
「私も初めて行ったオフコースのコンサートで、小田さんが舞台から客席に向かって投げられたタンバリンをゲットしたんやで!」などといろいろ話しました。
食事のメニューはママさんオリジナルの洋風雑炊を注文されました。
名前は“ほっ〇ぽっ〇”
新幹線の時間があるので、ひと時の幸せな時間も、もう終わりです。
ビビビ君は、こんなつもりでこちらに来られた訳ではないですが、
偶然にも出会ってしまったから、それも予定を変更してまで、私に最後の精一杯の優しさを与えてくれたのかなぁ……。
駅前まで戻り、
「今日は貴重な時間ありがとう
元気で頑張って
」と、本当にお別れしました。
次のバスが出発するまでの間、私はずっ~と車の中で涙が溢れて涙が溢れて…
ビビビ君にしたら、こんなはずじゃなかった、東京帰るのが遅くなると思っていたかもしれませんが、
「私は出会えて嬉しかったよ…。
気を遣ってくれたんだよね。
思いもかけない、本当に幸せな時間をありがとう…。
ビビビ君、さようなら…」
という思いで一杯でした。
バスを見送り、私のこの不思議な出会いも終わり、日常生活に戻りました……
つづく…………(次回完結)