木綿のハンカチーフ | 大串正樹オフィシャルブログ「ぐしろぐ-大串まさきの活動のキセキ-」Powered by Ameba

木綿のハンカチーフ

言わずと知れた昭和のヒット曲ですが、地方から東の都会(東京?)に行った恋人が「都会の絵の具に染まって」戻ってこなくなるという切ない内容です。発売されたのは1975年末。この時代は、1970年の万博を経て、高度経済成長も一段落して、さまざまな社会課題が見えてきた時代でもあります。東京一極集中もその一つです。

 

1978年、大平正芳内閣が成立して、自らの国家ビジョンを実現するための以下の9つの政策研究会を立ち上げます。①文化の時代、②田園都市構想、③家庭基盤充実、④環太平洋連帯、⑤総合安全保障、⑥対外経済政策、⑦文化の時代の経済運営、⑧科学技術の史的展開、⑨多元化社会の生活関心。

 

「近代を超える時代」として「文化の時代」「地方の時代」「地球社会の時代」という認識のもとで議論が進められましたが、その中でも特筆すべきものが「田園都市国家構想」です。残念ながら大平元総理は報告書『田園都市国家の構想』を手にすることなく、急逝しますが、当時、国立民族学博物館の館長であった民族学者の梅棹忠夫氏を議長に据えたこともあって、その内容は今でも通じる香り高い報告書だと思います。

 

 

目下、デジタル田園都市国家構想の取り組みを進めているところですが、言葉だけを借りるのではなく、本来的な意味を考えたいと思っています。もちろん40年以上前の話なので、資料もデジタル化されていませんし、そもそも関わった人々が霞ヶ関・永田町界隈にも残っていないのが実情です。

 

私の主な関心は以下の二つ。

Q1:なぜ田園国家都市構想を梅棹忠夫という民族学者に託したのか?

Q2:都市と地方の二項対立を乗り越える上でデジタル技術の果たす役割は何か?

 

恐らく、根底にあるのは、大平元総理の「楕円の哲学」と呼ばれる政治哲学に由来すると思われます。円と異なり楕円は中心が二つあり、異なる概念を対峙させつつ調和をはかるという考え方で、二項対立を乗り越える思考法に通じるものがあります。

 

報告書の中でも、鈴木大拙の「即非の論理」を引用していることからも、この二項対立を乗り越える思考こそ日本文化の本質であり、そこに「都市か地方か」「分権か集中か」という対立概念を据えて議論を組み立てたと推察されます。

 

「分散することによって集中し、集中することによって分散する」という独自の「分散=集中型」あるいは「分権=集権型」の日本の国家システムを、新たに再編成することこそ田園都市国家構想です。これを単に「中央から地方へ」と浅く解釈するのではなく、多極重層のネットワークをもって形成される、ダイナミックなシステムとして捉えるべきものかと思います。

 

文明史的潮流の中に位置づけられる田園都市国家構想は、それ自身が、文明・国家のモデルを形成するという作業ですから、民族学的な方法論はアプローチとして間違いではなさそうです。

 

つづく