経済的、政策的、政治的、それぞれの正しさ | 大串正樹オフィシャルブログ「ぐしろぐ-大串まさきの活動のキセキ-」Powered by Ameba

経済的、政策的、政治的、それぞれの正しさ

政策に関わっていて「正しさ」をどこに求めるかは大切なことといつも思います。

 

コロナ禍でマスク不足に陥った反省から「戦略物資は国産で」という動きがありました。多少高くても国産品を買い続けることで、安定した生産を期待したところですが、巷では中国産のマスクがあふれています。政策的に正しくても経済的には正しく無かったということになります。

 

昨今の半導体不足に対しても、国産で対応すべきという声もあります。しかし、自動車用の半導体は(たとえばラジオ用など)安価なものが不足しがちで、これも国産では採算が合わないものばかりです。

 

経済産業大臣政務官だったときに、日本の石炭火力発電プラントのセールス外交に関わりました。日本の考え方はこうです。世界各国で石炭火力発電の需要は、しばらくはなくなりません。そうであれば、高効率で温室効果ガスの排出量の少ないプラントに置き換えることで環境対策的にも、経済的にも意義があります。途上国で、地元の企業とジョイントして建設すれば産業育成にも貢献できるので、途上国支援としても有効です。

 

(ちなみに、私の関わった案件は、最後は中国が日本の6割の価格で受注。中国のやり方は、資材も人も中国から持ち込んで、建設だけして納入。完成後は、全員撤退するというやり方なので、故障したらそのまま動かなくなっているというケースも多いようです。)

 

しかし世界の潮流は「石炭火力は悪」でした。私が参加したCOP21などの国際会議でも原子力はクリーンエネルギーという位置付けですが、石炭火力は環境破壊の象徴でした。つまり政治的に石炭火力は、あり得ない選択肢となっていました。

 

ICEFでのスピーチ(2017年ドイツにて)

 

 

自動車のEVシフトも同じです。産油国をはじめ周辺産業を維持する上でも、早急な電動化は好ましくなく、ハイブリッド車(HV)の普及から徐々にEVへ移行するのが正しい選択と思います。電力のグリーン化や、EV用のインフラ整備にも時間が掛かるのであればなおさらです。しかし、HVで日本の後塵を拝する欧米を中心に、一気にEV化の流れが出来つつあります。

 

結果的に、日本はガラパゴス化するという運命を繰り返してきています。ルール形成の主導権を握ることこそ、政治の役割であることと同時に、それが「正しさ」の基盤でもあります。