こんにちは。
今年に入って遺言を作成される方も多い印象ですが、
そんな中で、私の事務所で遺言書の作成をされた方が
何名か亡くなられており、遺言執行手続きをする機会が
このところ多くなってきました。
遺言書がある場合の手続き、ない場合の相続手続きをしてみると、
その大変さの違いには、専門家の私ですらびっくりするほどです。
それを皆さんにも体感していただければ、
遺言書の重要性が伝わるだろうなと思いますが、
普通そんなに体験できる機会がないので、
それをいかに伝えるかが私の使命だとあらためて思います。
先日偶々、午前中は3年かかった相続手続きをほぼ完了させるために
とある銀行へ。
一方午後は、最近亡くなられた方で遺言書を作成していた方の
相続手続きで銀行へ。
こちらは、2か月ぐらいで終わりそうな感じです。
当然これだけスピードが違えば、
それは「資産の違い、相続人の人数や関係性の違いでしょ」と
思われるかもしれませんが、
偶然にもかなり似たケースです。
資産の金額、持っている種類(銀行・証券会社など)、子どもがいなくて
兄弟やおい・めいが相続人であり、相続人の関係性も結構似ています。
なのに、かたや3年。かたや2カ月です。
これは、遺言書があるかないかがほとんど決め手です。
そこで、気付きました。
どのようにその体感したことを皆さんにお伝えすれば良いか。
例えて言うと、福岡から北海道まで、仕事で行く場合、
飛行機で行くか、歩いて行くか。
歩いて触れ合うのが目的なら、歩いていくのはもちろん楽しい面もあり、
否定するものではありません。
しかし、
明日の会議に出席するためであれば、飛行機で行くのが
当たり前だと思います。
相続も同じです。
皆さんが、相続手続きのプロセスをあえて楽しみたいのであれば、
別ですが、普通は明日にでも家の名義を変えたい。
お金を自分の手元に移動したい。書類を何度も書くのは嫌だ。
と思われると思います。
相続も旅行・移動手段と同じです。
きちんとした遺言書があれば、飛行機移動と同じように
ひとっ飛びで手続きが進みます。
ですが、遺言書がない場合は、
福岡から北海道への徒歩での移動に近い感じです。
(歩いたことありませんが・・・)
明日の会議など間に合うわけもありません。
まず歩いたら、山口県に着いたあたりでとりあえず1泊。
泊まるためには、宿も探さなければならず。
次の日、広島あたりで、足が痛くなり、マッサージの整体を探すことになるでしょう。
この辺で、会議はもう終わっています。
そのあとも、例えば岡山で台風で巻き込まれて、移動が中断するでしょう。
疲労で倒れることもあると思います。
山を越えられず、迂回して遠回りすることもあると思います。
野宿していて財布をとられるかもしれません。
最初に履いていた靴はすり減り、しかも足を痛めているので
履きやすい高めの靴の購入もしなければいけないかもしれません。
相続手続きもそれと同じで、
遺言書があればひとっ飛びのところ、
ないと、
まず疎遠の相続人と連絡がとれない。
非協力的な人がいる。
考えた内容に反対する相続人がいる。
手続きの書類もより複雑で何度も書き直し。
途中で、相続人の一人が亡くなる。
認知症で署名・押印できない。
そうこうしているうちに銀行の担当者が変わり、
一から説明。
歩きの旅の途中で、色々ハプニングが起きるのと同じように
相続手続きも色々なことが起きます。
上に書いたことも実際に起こったことばかりです。
相続手続きにおいて、
飛行機が良いか、歩きが良いのか。
少しでも遺言がない場合の相続手続きの大変さが
伝わればと思います。