山城新伍の「現代・河原乞食考」 | 夜遊びする頃を過ぎても

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映画を観たり、編みものしたり。←どちらも停滞中。。。
日々の記録帳です。←もはや日々でもなく。

“役者の世界って何やねん?”
山城新伍の
「現代・河原乞食考」

を古本で見つけました。
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帯の永六輔のコメントがいいこと言ってます!
そして中身も面白い!

生まれ育った京都の、保守的な気質について。
芸名の由来、大部屋時代から「白馬童子」主役へ至るオモシロ秘話からその後の役者生活。
若山富三郎、鶴田浩二、美空ひばり、交流のあった大御所との思い出話。
そして、テレビのタブーと芸能界の差別について。

「おこりんぼ さびしんぼ」は相当笑える裏話本だけど、
こちらは、オモシロくも、かなり真顔のメッセージです。

山城新伍の実家は京都西陣。
周りには、今で言う被差別部落やコリアンタウン、花街がある。
お父上は町医者をやっていたが、「まったくの貧乏医者、だが名医だった」。
「本日またまた休診なり」のモデルになったお父上。
よく治療代のかわりにお米や野菜をもらって帰ってきたという。
そんな父上の
「同じ人間として生まれたからにはみな平等でなければいけないはずだ!」という言葉に大いに影響されて育ったのだそうだ。

山城新伍。

第一印象はテレビで見るチョメチョメのスケベなおじさんだったけど、
東映映画で大分印象が変わりました。

この本の中には、お調子者キャラやスキャンダラスな面とはまた違う山城新伍の、人種、家柄、出身地などによっての差別偏見を許さない気骨の姿があります。
チョメチョメの影では、テレビのタブーに挑戦してたのですね。
エンターテイナーとしての信念と、許せない事に立ち向かう反骨精神が伝わってくる本でした。

各章の合間には、思い入れのある映画についてのコラムもあり、映画評論家の横顔もうかがえます。
小話を交えたやさしい文体で知識豊富、読んでいて観たくなった映画がたくさんありました。

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「テレビジャーナリズムは情報操作をしている。」
と語るエピソードがいくつかあって、

2.2.6事件と同年の「阿部定事件」、
長崎市長の狙撃事件と同時期の「勝新大麻事件」、
についての鋭いツッコミは目から鱗です。

大手メディアの情報操作なんて今に始まったことじゃなかったんですなぁ~
メディアのウソは「何を報じているか」よりも「何を伝えてないか」に注目すべし、ですよ!
テレビばっか観てる、そこの奥さん!


そうそう
岡田茂会長の思い出話もおもしろかった!
「日本映画界のドン・コルレオーネ」、まさにピッタリの形容です!

あの愛あってこその迷文句
「東映のお馴染み三角マーク、義理欠く、恥かく、人情欠く」発言で、山城新伍を呼び出した岡田茂会長いわく、
「馬鹿ヤローッ!こんなに義理人情のある会社はねえぞ!…それを言うに事欠いてて、、しかし、うまいこと言うもんだな」
器を感じさせる太っ腹な怒り方!
ステキです。

蛇足ながら、
わたしが東映映画が好きなのは、反権力姿勢と弱者目線がありそれでいて娯楽に徹しているところです。
(逆に嫌いなのは東宝のサラリーマンもの特に社長もの)