アナウンサー役が思うようにできなかった女優Cから、本番直後に連絡がありました。
正直に今日の現場を振り返ると反省点ばかりとなりました。
事前にいただいた2種類の長台詞を、ずっとカメラを見て無感情で機械的に言うという内容ですが
緊張し何度かテイクを重ねてしまいました。アナウンサー口調だったのでナレーションのレッスンがとても生かせる場でした。滑舌、話し方、セリフの落とし込み。
現場の雰囲気は和気藹々としていましたし、このままではだめだと途中気分を入れ替えたりしましたが
自分の不甲斐なさにこれまで味わったことのない緊張でした。
わたしは24時間で一番仕事のことを優先して考えているつもりでこの出来は、悔しいです。自分のオーディション、現場への準備を改めて考え直します。
忘れてはいけないし伝えないとと思い連絡させていただきました。
練習の練習をして本番を迎えられない人にはなりたくないです。
お忙しい中失礼しました。お返事頂くに及びません。
彼女とは3年目を迎えています。
文章の端々に成長が見えて、本当に嬉しくなるラインです。
俳優として経験しておいたほうがいい、けれど経験しても気づかず流してしまう人も多い、その体験をしっかりと言語化しています。
素晴らしいです。
すぐにスタッフにこの一連を共有しました。
そして翌日、私は彼女に電話して、彼女も知ってる、ある俳優Dの実話を話しました。
D(ベテラン。とても素晴らしい俳優です)は国民的とも言える有名ドラマに出演した際、急に緊張し他のか、全く思うようにできなくなって、何度もNGを出し、それで撮影がどんどん伸びて夜中に及んだ時、
どうしてうまくいかなかったのか、どうしたかったのか、そのままでは放っておけなくて、
ホテルに向かう途中にあった公園で(真夜中に!)シーンを一人で何回も納得できるまで演じていたそうです。
翌日、ホテルのエレベーターで共演者(彼よりもTV的に有名な俳優)に
「君は随分と熱心なんですね」と声をかけられ、見られていたことを知り赤面しました。
私はCに
「まずいって思った時、どうだった?」
C「頭が真っ白になりました」
私「それで?」
C「……。」
私「なんでもいいから、他に感じたことを言葉にしてごらん?」
Cはうまく答えられませんが、その時の状況を反芻してるのは分かります。
私「私はね、マズイって思うとね、肩が上がって呼吸が浅くなって、耳の奥がボワンってして音が遠くに感じて、ヒャーッて寒くなるっていうか、頭の中の毛穴が開いてゾワってして、心臓が鎖骨のあたりにあるような気がして、喉が渇くわ。
(Cもその通りだと言います)
そうして距離感がおかしくなって自分がその場から疎外されてる感じになるわ。
失敗で終わっていたら、失敗したって記憶が残るじゃない?つまり、今、話した変な感覚がさ、
それで終わってたら、またマズイってなった時にその記憶が蘇って思うように動けなくなるんじゃないかな。
Dみたいに昨日のシーンを演じたいように演じられるまで演じてみたらどうかな?
そうしたら、次に同じような経験があっても失敗したって記憶ではなく、取り戻したって記憶が蘇るのじゃないかな」と話しました。
1時間後、彼女は問題のシーンを演じた動画を「お手隙の際に見てください」と私に送ってきました。
私はCに再び電話をして、その動画を二人で検証しました。
二度目の素晴らしい体験でした。
Cが動画を送ってくるとは想像だにしていなかったので、本当に嬉しかったです。
それから1時間後、Cからラインが来ました。
みゆきさん、お電話ありがとうございました!!
昨日の失敗からどうすれば出来るかを知れた事、
状況を事前に把握することで自分を知れて冷静に対応出来る事、
今後意識していきたいです。
失敗しても成功に変えて成功体験をします。
みゆきさんのおかげで前向きに考えて実践にうつせました。
ありがとうございます。
彼女が私にアクションすることが私がやり過ごしていることにも気づかせてくれ、私の成長にも繋がっています。
「俳優との取り組み」その3もまた、忘れられない経験となっています。