特別講師をお招きして演技WSをした後、そのまま事務所に移動する俳優たちがいて、

 

夕方に立ち寄る俳優もいて、

 

マネージャーが出たり入ったりして、にぎやかでした。

 

午前中のWSが朗読の原稿を読みながら、呼吸の使い方を学ぶのがテーマだったことが始まりで、

 

ナレーションのオーディション原稿を練習する3人の俳優の声と

 

翌日のオーディションのセリフ練習をする2人の俳優の声が錯綜する中、

 

近々、始めようとしているナレーションのWSオーディションの打合せをしているから、

 

条件が重なって、皆の注意が「声」に集中していきました。

 

 

私が加藤啓のラジオCMのデータを流すと皆が大笑い!

ボイスサンプルのためのWSオーディションの原稿を自分で探すのに苦労している辻香音には日立ビルシステムのCMナレーションを聞かせてやりました。

 

辻は感動していました。

先にその情報を私から仕入れて知っている金沢沙弥は(ね、いいでしょう!)とインナーボイスで辻に話しかけているようでした。

辻と金沢にもっとヒントになるものはないかな。。。

「そのナレーションって、これ、思い出すわー。なんでやろ?」

 

私は池田文庫から有名俳優が朗読している日本文学を抜粋している本を取り出し、

     (*お勧めの所蔵の書籍を事務所に持ち寄り、貸し借りしています。池田香織の発案なので、池田文庫と名付けました。)

 

「雨ニモ負ケズ」を声に出して読んでやりました。

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル

ここで本を金沢に渡し、代って読んでもらいました。

・・・・・・ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ

ざわついた事務所の空気が少しずつ澄んでいくようです。

 

彼女の声には「淑」があるように思います。

 

他にもないかな。。。

 

あっ!

 

閃くものがあって、鳥谷の様子を見ると明日のドラマの読み合わせの準備に集中しています。

中断させるのは悪いな。。。と思うのですが、こういう時、私は我慢できない性質で。。。

 

申し訳ない気持ちを込めて高村光太郎の「レモン哀歌」を読んでもらうように頼みました。

そんなにもあなたはレモンを待つてゐた

 

ピーン。

 

その一言で水を打ったような静けさが訪れ、鳥谷の声が響きます。

かなしく白くあかるい死の床で
私の手からとつた一つのレモンを
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ


トパアズいろの香気が立つ
その数滴の天のものなるレモンの汁は
ぱつとあなたの意識を正常にした・・・・・・

鳥谷の声には「哀」の響きがあるので、この詩を選んで正解!いいでしょう?って訊こうとして

辻と金沢を見ると

 

 

二人が鳥肌を立ててるのが分かりました。

 

 

ある人の声にピッタリの作品を探して選んで読んでもらって確かめて、思った通りピッタリだと感じて、他の人が感動してくれるのは

 

自分のレシピで料理して喜んでもらった時に似ていて、とても楽しいです。

 

俳優の「声」の中にある「哀」や「澄」や「香」を感じて引き立たせるボイスサンプルが作りたいなぁって思いながら、

 

ミッシングピースの俳優の一人一人の声を思い起こしていました。