黄色い花が群生している。

この花は初めて見る。

細い茎がニューッと長く伸びてゆらゆらと風に揺れる。

タンポポのように見えるけど、茎が分岐しているので違うと思う。

ハルノノゲシかと思ったが葉っぱが全然違う。

 

野の花らしく、たおやかで可愛い。

綿毛がふわふわと飛ぶ。

繁殖力強そう。

可憐だが手のかかる雑草。

 

葉っぱはロゼット状に地面に広がっている。

こういう種類の草は草刈り機で刈っても再生する。

抜くしかない。

チチコグサもそう。

腹の立つ雑草。

 

標高920m、窓を開けると寒いような風が吹き抜ける。

黄色い花はもう開いている。

 

一日花で夜にはしぼみ、翌日に咲く次の花が隣に控えている。

今日だけの花。

健気だけど、おびただしい数の種を飛ばす。

 

窓の下を見ていたハイジたちが悲鳴を上げた。

作業員さんが草を刈っている。

 

大変、大変、黄色い花が刈られてしまう。

 

早く早くと急かされて黄色い花の元へ走る。

 

ハイジたちはおじさんが来ないように黄色い花を守っている、つもり。

 

刈らないでとハイジたちが叫ぶが、おじさんには聞こえない。

 

刈られてしまう前に写真を撮ってあげる。

一生懸命に写真を撮っている。

きっと、思ったようには撮れないよ。

ベタに黄色い輝く花はフォーカス合わせにくいんよね。

 

でも、気持ちが嬉しい。

 

おかあさん、わたしが持ってますから撮ってください。

ありがとう!

でも、細く伸びた茎が風に揺れてフォーカス合わせられない。

 

出発の時間が来た。

今日は刈られてしまう黄色い花。

 

黄色い花さん、さようならーーっ。

ハイジたち、柄にもなくセンチメンタル。

 

調べてみた。

この花は外来生物でブタナ、豚菜というそうだ。

豚が好んで食べるというフランス由来のようだが、何というひどい名前。

フランスってそういうところがあるとオリンピックで再確認。

この可愛い花に豚菜なんて。

 

1933年に札幌で初めて見つかったときはタンポポモドキと命名されたそう。

それもセンスを疑いたくなる。

植物の名前って理系が付けた感じがときどき残念ため息。

1934年に六甲山で見つかったときから、フランスにちなんでブタナ。

もう、この国に期待するのはやめよう。

 

花言葉は「最後の恋」。

1本の茎に1つの花、一筋のタンポポとは違って分岐してそれぞれ咲かせる。

いくつもの恋をしたけれど、この人とは一生添い遂げたいという人への告白にぴったりの花、だとか。

 

「結婚してください」

「可愛い、可憐なお花、これは何?」

「ブタナ、豚が食べる花だそうです」

 

恋なんて最後は豚に食べられて終わるのかも。

そう、豚にでもくれてやりたいことって、あった。

幾度も。

 

最後のではなかったけどてへぺろ