28度の朝。
よく頑張っているジュールヴェルヌ、鹿の子百合。
いつもの朝ご飯。
ローストチキン、紅鮭、きんめの煮付け、ヨーグルト、卵のチラシ寿司。
これで1日のたんぱく質。
あとの2食は本当に適当、夕食はほぼ食べていない。
今日の河内晩柑は、美生柑。
生産地によって宇和ゴールド、愛南ゴールド、美生柑などいろいろな名前がある。
美生柑は生産量日本一の愛南町、多分合併前の御荘町から名付けられたのかも。
美しく生きるって、誰の願望だったのだろう。
旬は春から初夏、今はギリギリ柑橘の体裁を残すが、割とおいしい。
収穫まで15ヶ月近く木にぶら下がったままなので、凍るような寒さには無理。
鹿の子百合、まだしっかりしている。
最初の花が開いて10日になる。
来年も咲いてほしい。
昨夜、姐御が来て千疋屋のジュレを食べながら美和(仮)さんの悪口を言った。
毎回ボロクソに言うのは気になるが、逆らう勇気はない。
同意もしたくないので、ふーーんと曖昧な相づちで聞き流す。
ただ、悪口の根拠が、計算が出来ない、すぐに忘れるなど、微妙に気になる。
そんな美和(仮)さんから電話があった。
宿題になっているくずかごが編めないので教えてほしいそうだ。
1ヶ月も前に習ったのがまだできないとは何でだろう。
だが、今夜は姐御が来そうな感じがする。
鉢合わせになったらかなり危険。
姐御に電話をして、今夜は急な来客があるので明日にしてと頼んだ。
正直に美和さんが習いに来ると言ってもいいが、姐御は爆発的性格なので約束ごとが守れる保証がない。
というか、美和さんを攻撃しかねず、同時にわたしは火の粉を被る。
姐御はいい人だが、劇薬毒薬危険物。
薄暗い道、美和さんを迎えに行った。
かご編みに追われている間に、稲穂は頭を垂れ始めた。
農家は後継者がなくなり、すごい勢いで田んぼが消え、荒れた土地になっている。
気候も厳しくなり、米が足りなくなるのは当然の話。
美和さんはお菓子を持って自転車でやって来た。
このお菓子、賞味期限が今日まで。
二人で、北海道気分で夜のおやつ。
「北海道、行きたいね。涼しいじゃろね」
「北海道を旅行中の人を知っているけど、暑いところもあるみたい」
「ね、ゆきこ(仮)さんに時間ができたら遊びに行こうよ」
「うん、行こう行こう」
と言っても、北海道ではなくそこらの温泉。
一生懸命に編んでいる。
美和さんは編む気分になれていなかったのだと思った。
物忘れが激しいこと、簡単な計算が出来ないこと、美和さんが不安を語る。
何もかもに自信がないが、人の中に出ていかないと、認知の衰えが進む。
やはり、美和さんはわたしより若いが、気になることが起きている。
癌を患っている夫、気性の荒い同居の嫁。
何よりつらいのは、孫のこと。
姉ハイジと同じクラスの孫、ADHDで授業中に歩き回る。
父親である息子は、孫を家庭で厳しく叱りつける。
孫は学校で叱られてばかりだと級友が言う。
それを見ている美和さんは孫が不憫でたまらない。
学校で叱られ、家でも叱られ、とてもつらい。
来年からは学童が受け入れてくれず、他家で迷惑行為をしないか心配。
共働きの両親、孫の監視は美和さんの仕事。
ストレスが大きすぎると適応障害、認知症のような症状が出る。
睡眠が悪く薬を飲んでいる。
美和さんはそれかも知れない。
面白い話をすると楽しそうに笑う。
同じ内容を繰り返しても大笑いする。
本当に楽しそうに笑う。
いつもビクビクしている美和さんとは別人のよう。
語る言葉は優しく、知的な文言、洞察力があり、心配りが行き届く。
あれだけ厳しい言葉を浴びせられている姐御のことも、今まで生きてきた苦労を思うと自分が正しいと譲らなくなるのは無理もないと、理解を示す。
友だちになれて良かったと、わたしへの感謝の言葉を何度も言う。
美和さんは賢い。
姐御とは無理な組み合わせだと思った。
気がつけば22時。
大慌てで帰って行く美和さんの自転車の灯りを見送る。
今夜、姐御が来た。
次に教える作品を持って来た。
今夜も美和さんの忘れっぽさを愚痴る姐御。
「ほんと、美和さんは普通じゃないよ」
「わたし、あんまり知らんのよ」
「役員会だろうが班長会だろうが忘れていて来ないのが当たり前」
「いろいろ忙しいから無理ないんじゃない」
「あいつのことはもうあてにせん。何も相談せんことにしとる」
「そんなこと言わんと足りないとこはフォローしてあげたらいいのに」
「あんたのように仏さんみたいなこと言いよったら上に立つことはできん」
「緊張させないで、優しく助け合う老人会にはできんの?」
「あんたは世の中を知らん。そんな甘いことは通じん、ガツンとやらんと」
弱っている人を助けてどこが悪いのかと、わたしは思う。
排除するだけが能ではないだろう。
でも、姐御が陰のリーダーの組織。
ものすごく頑張っているのは分かっている。
自分は正しいと譲らない一直線で突っ走る。
喧嘩になって組織を分裂させたりする。
嫌いな人は徹底して嫌い、悪口を言いまくる。
この勢いがなければ潰れてしまっただろう人生も知っている。
君、君たらずといえども、臣、臣たらざるべからず
今夜も飲もうかな