広島始発なので乗客は少ない。

のんびりと景色を見たり、ブログ書いたり。

今までは揺れる車内で読んだり書いたりなどは全く出来なかった。

読もう書こうと考えるだけでめまいが起きて吐きそうになった。


めまい止めの2種類、7日から1回減らして朝晩だけにしている。

間もなく1週間になる。

今のところ、特にめまいがぶり返した感じはしない。

次は17日から、朝だけに減らす予定。


水曜日の夕方にこちらに来て、木曜、金曜、日曜日に体に感じる地震があった。

めまいとか言ってられない緊張感。


快適な旅は大阪までだった。
大阪から通路側席に乗り込んできたお客は、すでに酔っ払い状態。
なのに大きな缶ビール、おつまみやパンをテーブルに並べ、ひとりで宴会。

静かに飲んで寝てしまったが、とても酒臭い。
席からズルズルとずり落ちるのが気になってたまらない。
作業服と傷だらけのスーツケース、出張帰りかな。

名古屋を過ぎ、ブログを送信し景色を眺めていると、新幹線は嫌な減速をして田んぼの中で止まってしまった。

原因が分からない停電は昨年11月にもあった。
あの時は京都の手前で止まった。

今度は岡崎から三河安城の間。
家康が生まれた辺りだねと、当時と変わらない景色を探した。

前日は大荒れのお天気、大風が吹いたので飛んでいるものが引っかかったようだった。

20分近く止まり、やっと出発。

大井川を渡った。
酔っ払いは腕組みをして熟睡。
酒臭さに酔いそうになる。

富士山が近くなってきた。
天候が良ければ出入り口のドアから見るが、今回は雲に隠れて望み薄。
酔っ払いがずり落ちそうに寝ているので出られないし。
足元に置かれたスーツケースを跨ぐわけにもいかないし。

ところが、酔っ払いは富士山が真横になると目を覚まして体を伸ばして富士山を見た。
裾野しか見えない。
また腕組みをして寝てしまった。
なんで富士山が分かったのだろう。
酔っ払いって、時々驚くようなことをする。

新幹線は遅れを取り戻すようにぶっ飛ばす。
振り子のように傾きながらぶっ飛ばす。
わたしは振り子電車にはものすごく弱いが、もしも脱輪したら酔っ払いと折り重なって死ぬのかなどと考えると、緊張で酔えない。
最期に吸う息が酒臭いなんて不幸だわ。

新横浜が近づいてきた。
わたしが身の回りを片付け始めると、酔っ払いは目を覚まし、大急ぎでテーブルをしまって足元に寝かせているスーツケースを移動し始めた。
新横浜でわたしが降りると思ったようだ。

「品川で降りるのでまだ大丈夫ですよ」
「えっ、私も品川です」
40歳台の半ばで小柄で細身、汚れた作業服、現場から直行で新幹線に乗ったように見える。

悪意のない笑顔が返ってきた。
人懐っこい笑顔をマスクが覆う。
声を掛けてみた。

「今日は富士山は残念でしたね」
「ほんと、スカッと見えたらいいこと起きそうなのですが」
「いいこと起きてほしいですよね」
酔っ払いは何度も頷いた。

13分の遅れを詫びるアナウンスがあった。

「私、先週金曜日に広島に出張でしたが、2時間も遅れたんですよ」
「2時間もですか!」
「人身事故で…」
「ああ、ニュースで見ました」
「止まったまま全然動かないんですよ」
「新幹線は驚くほど正確だけど、人身事故では仕方ないですね…」

「私、仕事で東南アジアによく行くんですが」
「はい」
「あちらの鉄道なんか時間めちゃくちゃですよ」
「ドイツの新幹線もめちゃくちゃだと息子が」
「ヨーロッパでもそうなんですか!」
「新幹線の正確さは当たり前みたいだけど、素晴らしいですね」
「そう、誇っていい技術です。日本人はすごいです」

酔っ払いは振り向いて前後の客を見回して声をひそめた。
「外国人はマスクしない人が多いでしょう?」
「ほんと、そう思います」
「コロナの流行り初めに中国に出張したんですが、仕事は2日間だったのに前後2週間…」
「隔離されたんですか!」
「そうなんです」

話しているうちに品川に着いた。
心から楽しく過ごせたのはこの時だけだったが。