勢いで予約してしまったのは
またまた時間がぴったりだったので
だけどバイトの後では体力が不安、
と、睡魔の心配をしつつの
グランドシネマサンシャイン池袋へ
 
宗方姉妹
 
 
かの小津安二郎監督作品だが
聞いたこともない作品だったので
やばいかも〜と思ったのは杞憂だった
 
宗方家の父は引退して
京都に住っているが、
娘二人は東京暮らしで
体調を崩している父を心配して
京都に訪ねてくる
 
姉のせつこはしっかりもので
小さなバーを経営している
妹のまりこは現代っ子であっけらかん
姉の考えが古いと言い、
姉の夫で無職の三村を嫌っている
 
せつこにはその昔、
結ばれなかった淡い恋があり、
その相手であるひろしは
今は神戸で立派な家具店を経営している
 
今でも親切なひろしは宗方家と親しく、
わがままなまりこに振り回されもしているが
今でもせつこを見守っている
せつこにとってもひろしはいまだに大切な存在だ
 
しかしバーの経営が行き詰まり、
ひろしがこれを支援したことから
三村がせつこを責めたてて
夫婦間は荒れに荒れてしまう…
 
1950年、昭和25年の作品で
松竹かと思いきや、
東宝マークが出て驚く
調べてみたら、新東宝の時代だった
 
小津的キャメラワーク、
ローアングルは教科書通り、
脚本の野田高梧もお手本だ
 
だがもちろん古臭い、
ごきげんよう、の挨拶からして
言葉遣いがまるで違って
まさに化石のようだ
そうかしら、そうだわね、
といった語尾だけでも
こんな丁寧な日常会話って
今はもうないよなぁ、
書き言葉だけだよな、と実感する
 
そんな古めかしい言葉遣いだから
テンポもそれに合わせてゆったりめ
所作もやっぱりおっとりとして見える
 
と、古臭さを強調するようだが、
実は話が進むうちに
なんだかこちらの捉え方が変わってくる
 
確かに和装のせつこは、
これがあの名優の田中絹代なのか、
とびっくりしたが
ときに弱々しく、ときにきりりと、
純日本風のいでたちでありながら
実は強い女を体現している
父の笠智衆と語り合う場面では
互いが見てきた風景を頭に浮かべて
同じ小さなことを美しかったと言う、
そんな心の通い方が素晴らしい
 
妹の方は高峰秀子、
この時代の先端を求めて
ファッションにも興味津々、
嫌なものは嫌と言うし、
姉のライバルになりそうな女には
直接会いに行ったりもする
新時代の女として生き生きと動くが
反面、日本の家庭の常識も守り、
大嫌いな義兄にも喧嘩していても、
きちんと挨拶もするし、
玄関にお見送りにも出る
さらには靴下を繕ったりもするのだから
なかなか細部の描写がすごい
 
この対照的な姉妹二人が
顔を突き合わせて議論する場面が秀逸で
 
お姉さんは古いのよ、
なにもかもが古いわ、
私は違うのよっっ
 
と言い放つ妹に姉は言う
 
新しさってなに、
今年流行ったものは来年には古くなり、
どんどん変わっていく
本当に新しいものは古くならないのよ、
と…(まぁ、要旨ね)
 
さらに別の場面では、
父親が二人を評して、
それぞれがそれぞれいい、と言う
これが潔く、
それこそ今風の考え方で驚く
 
この70年以上前の作品が、
まさに今の新しさを教える、
みたいな感覚にめまいがしてしまう
 
書きだすときりがないので
あとはこれを観ていただくしかないな
眠気どころか
なんだかドキドキと前のめりに観てしまい
終盤ではちょっと泣けてしまったほど
 
ただし、以下ネタバレありだが、
最後の最後、
せっかく幸せを手にできると思った姉は
自らの意思でそれを捨てる
これはもう、観ている方はモヤついて
ちょっとどやさ、ってくらいイラつくが
最後の最後の最後に、
その自己を貫く強さこそが
新しい女であって、
いつまでも変わらぬ新しさと知る
 
それにしても、
こんないい男、振るなんてね〜〜
って、調べたら、
これぞあの、上原謙、だった
加山雄三の父(それすら知らない世代か)
晩年のコマーシャルとかは見たはずだが
本当に若い頃を初めて知った〜
超イケメンなり
 
で、ヒドい夫、
追い詰められていく弱い夫でもあるが、
彼が山村聰さんで、
これまた若い頃を初めてみたかな、
時代劇のレギュラーで
ご一緒させていただいた頃には
すでに大御所で近寄り難かったから
今回の作品ではイメージ違いすぎて
正直かなり引いてしまった…
 
あ、それと忘れてはいけない、
クローズアップのカットバック多用だが
これがまぁ、
堂々たるイマジナリーライン無視っっ
え、小津作品ってこんなんだったっけ…
と思ったが、
そういえば松竹は(これは東宝だが)
記録さん(スクリプター)がいなくって
助監督がその仕事を兼ねていたのは有名
(今は知らんけど)
以前深作監督が松竹で映画を撮った後に
師匠に話していたが、
記録さんにと思って大声で呼ぶと
男の声で返事が来るからびっくりする、
って笑ってたっけ
 
ちなみに今作のキャメラマンも
サイレント時代からの方だそうで
画の流れとかは重視されない時代??
それにしても本当にお見事、
わざとなのか???
と言うしかないほど逆ポジなんだよ〜〜
まぁ、アップすぎて気にしないように…
と、諦観の境地へ
 
それでもやっぱり、
よき作品であって
これがさほど有名ではなく
代表作とも言われないのは
他がさらにすごいからなのだろうが
あまりに惜しい気がする
こんな機会に巡り会えた幸せ噛み締めて
ああ、時間優先でもなんでも、
観てみなくっちゃダメだね
それこそが新しきものとの出会いだっっ
 
やっぱり再上映するには
理由があったってことなのね〜
 
 
 

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