行政書士の試験は直接実務に役立ちそうな知識は出題されないんですが、2012年の問題46は実際にありそうな相談内容の問題でした。行政書士も遺言の相談を受けることがあります。
終活、エンディングノートなどの新しい単語も生まれ、遺言書の書き方、内容など興味のある方も多いのではないでしょうか。
(最後に、実際の問題、行政書士試験研究センターの解答例、根拠となる民法の条文を挙げておきます。)
相続させたくないときは廃除という方法もありますが、問題文を読む限りでは廃除の要件には該当しないでしょう。
①被相続人に対して虐待をしたこと
②重大な侮辱を加えたとき
③推定相続人にその他の著しい非行があったとき
第892条(推定相続人の廃除)
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
この相談者は「財産一切を慈善団体に寄付する。」という内容の遺言をすることになったのでしょう。
息子さんは「遺留分減殺請求をして、」相続財産の2分の1を相続したんでしょうね。
《問題46》
次の文章は遺言に関する相談者と回答者の会話である。〔 〕の中に、どのような請求によって、何について遺言を失効させるかを40字程度で記述しなさい。
相談者「今日は遺言の相談に参りました。私は夫に先立たれて独りで生活しています。亡くなった夫との間には息子が一人おりますが、随分前に家を出て一切交流もありません。私には、少々の預金と夫が遺してくれた土地建物がありますが、少しでも世の中のお役に立てるよう、私が死んだらこれらの財産一切を慈善団体Aに寄付したいと思っております。このような遺言をすることはできますか。」
回答者「もちろん、そのような遺言をすることはできます。ただ「財産一切を慈善団体Aに寄付する」という内容が、必ずしもそのとおりになるとは限りません。というのも、相続人である息子さんは、〔 〕からです。そのようにできるのは、被相続人の財産処分の自由を保障しつつも、相続人の生活の安定及び財産の公平分配をはかるためです。」
解答例
「遺留分減殺請求により、被相続人の財産の2分の1の限度で、遺言を失効させることができる」(42字)
第1028条(遺留分の帰属及びその割合)
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
一直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の3分の1
二前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の2分の1
第1031条(遺贈又は贈与の減殺請求)
遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。