修羅の痔獄-夢への階段編-
前回のあらすじ
東京を拠点に全国制覇まで後一歩になった巨大組織白竜会。
その末端の組員、水元秀二郎(40)は、数々の死闘を繰り広げ、血で血を洗う抗争、世にいう桃尻抗争を繰り返し、後先のない物語りの中へと進んで行くのだった。
【修羅の痔獄-夢への階段編-】
抗争の最中、いつもの様にリーゼントでタバコをふかしている水元秀二郎(40)
皆の期待を背負い、この先どうなるのか不安で仕方ない顔つきで横になっている。
そこに携帯電話が着信する。
プルルル、プルルル…
目を携帯電話へ向けると
(白竜会長)の文字。
秀二郎は前回の自爆をも恐れることなく飛び起きると、元気に電話に応える。
秀二郎『お疲れ様ですっ。』
白竜会長『おう、抗争頑張ってる様子やな。そこで末端の枝じゃ話にならんやろうから、そろそろ一家を持て。末端と言えども直参やったら少しは違うやろ。抗争も大変やろうが、ゆっくり気張りすぎるなよ。』
秀二郎『はい!ありがとうございますっ!』
すると電話が切れる。
会長の気張りすぎるなよという言葉に応える返事をする為に気張りすぎた秀二郎は、お約束通り流血していた。再び戦場へ行くと、さすがに慣れた手付きで洗浄し、薬を塗り発砲すると、ガーゼを付けて出て来る。
歩き方は今までと違い、少し軽快になっている。
警察からの道路交通法違反や、迷惑防止条令違反を回避する為に早く歩く様に心掛けたのはもちろん、白竜会長からの直々の盃をもらえる喜びからか、割れる程痛いケツが痛くなかったのだ。
しかしケツは最初から割れている事にまだ気付いてはいなかった。
秀二郎『ついに俺も直参かぁ、今回の抗争で会長も認めて下さっているんだ。もっと若い衆を集めてドンパチやらなきゃいかんな。』
秀二郎は【痔】になって良かったと。むしろ【痔】になった事を誇りにさえ思っていた。
やはり学歴の無さからの失態であるが、痔という漢字を
【侍】さむらい
と勘違いしていたのだ。秀二郎は侍として会長に認められたものと思い違いをし、更なる強固な組織化を図るべく早速若い衆を集め始めたのだった。
白竜会
系 水元組とし、
組長に自身を、
副組長には漢字は違うが同じ水本というだけの理由で
水本タカブー(のちの宝飾屋)
若頭に荒川ピッコロ(のちの定食屋のオヤジ)
舎弟に石井ガリバー(のちのスーパー内の焼鳥屋)
若中にどう見ても数日飯を食えてなく痩せている様に見える井口亮平(のちのラーメン屋)
を組員として招集に成功したのであった。
秀二郎『これで直参になったらこの抗争に勝つ!絶対に勝つ!』
秀二郎は新たな夢に向かい希望を持つのであった。
しかし問題は、秀二郎が一体誰と闘っているのか、見ている読者にも、組員たちにも伝わらない程のバカさ加減である事をまだまだ気付いてはいなかった。
秀二郎は早速各組員たちに電話した。
秀二郎『おうタカブーよ、白竜会長から直参の盃を貰うからよ、抗争も頼むぜ!』
タカブー『はぁ。。。』
秀二郎は同じく、若頭の荒川、舎弟の石井、若中の井口にも同様の言葉で電話した。気持ちと気分は、どんな末端な組員にも気を配り、心配する白竜会長の真似をしているのだった。
全員返事は
『はぁ。。。』
であった。何とも元気も覇気もない返事だったが、秀二郎はポジティブだった為に、
秀二郎『こいつら緊張してやがるな。まっ最初はこんなもんやろ。』
と楽観的に考えていた。
この後待ち構えている風呂場の湯船という新たな現場で、更に血で血を洗う抗争に発展し、更に更に、そんな抗争など小さな出来事にしか過ぎない大惨事を迎えることなど、この時の秀二郎にはまだ知るよしもなかった。
-夢への階段編-
【完】
あとがき
どうも、原作者の秀痔郎です。
第2話、自爆編までは、最初に手術というキーワードを出した為に読者の皆さん、関係者の皆さんに大変ご迷惑、ご心配をおかけしたと思い物語り仕立てで病状の進行を書きましたが、あまりにも物語りの反響があり、面白い!
次はどうなりますか?
辛いことが多い日々に笑いをありがとう!
本当にバカだよね!
と、多々ご意見ご感想を頂きましたので、3話目くらいからは、任侠風コメディタッチで、時にリアルな病状の経過を折り込みながらお楽しみ頂いております。
登場する人物、団体名等はフィクションの為、一部を除き実在するものでは一切ございませんので御了承下さいませ(笑)
もう少しで症状も収まり完結するかと思います。
今しばらくお付き合い下さいませ。
原作者 秀痔郎より

