アンコール外伝~初恋編~④
【実録初恋物語りⅣ】
ミニ秀二郎は巨大のらいぬから逃げられたと喜んでいたが、こんな深い大きな溝に落ち、どうやって上がるのか、まだ考えてはいなかった。
深いドブ道だが、水は足も浸からないくらいにしか流れていない溝。
一歩足を踏み出した時、
『ツルりんっ、どしゃっ!』
ミニ秀二郎はおもいっきり滑って転けた。
何と下はコケだらけ、慎重に歩かなくては確実に滑って転けるという難易度の高い溝だった。
まるでスケートリンクの様に。
そしてもう1つの重大な壁にぶつかった。
一体どうやってここから上がれるのだろうか?
噛みつかれた痛さ、落ちて打撲の痛さ、歩いて転けた痛さ、どこに続いてどうやって上がれるかわからない不安さ、ミニ秀二郎はボロボロになっていた。
白いシャツ、給食袋はもちろん、コケだらけにもなっていた。
涙が止まらないが、進むしかない。
転ばない様に細心の注意をはらいながら歩きだす。
秀『げぇ~っ!』
ミニ秀二郎の心は再び地に落ちる。
ノロノロ歩調に合わせて、巨大のらいぬが一緒に上から覗きながらノシノシと歩いて付いてきていた。
(心の声)
『もし、あいつが開き直ってここに飛んで来たらもうおしまいだ、こんなヌルヌルのところではもう闘うどころじゃない。』
最悪だった。
とにかく逃げよう。
ミニ秀二郎は無我夢中で進んでいた。
そうこうしている内に、ミニ秀二郎はコケだらけの溝を歩く事?いや、進む事に慣れ、スケートリンクを滑る様にしなやかに進んでいた。
まるで、浅田真央ちゃんの様に!
慣れとは恐ろしいものだ。
よく考えてみると、全てはミーちゃんの為に頑張った結果だ。
後悔しても仕方ない。
ミニ秀二郎はひたすら進んだ。
そんな時、ラッキーが訪れた。
ドブ道と、犬が歩ける道が遂に分かれたのだ!
犬はこれ以上追う事が出来ない!
【不幸中の幸い】
昔の人はうまい事を言ったものだ。
今まで絶望感で泣いていたミニ秀二郎は嬉し泣きに変わっていた。
それも、悔しそうにこっちを見ている巨大のらいぬにコケだらけのお尻をペンペンしながら…!
さて、次はどうやって身長の倍はあろうこの壁を上るかだった。
ちなみに横幅は、車の幅くらいはある溝だ。
ジャッキーチェンの様に、壁と壁に手足を広げ、上る事も不可能である。
ここまで不幸の連続が続くミニ秀二郎に、更なる悲劇の火の粉が数々降りかかる事など知る由もないミニ秀二郎は、とにかくドブ道を進むのだった。
つづく…
【実録初恋物語りⅣ完】