林壮一の『マイノリティーの拳』レポート -35ページ目

ROCKYのポスター発見

 シルベスタ・スタローンは、よくボクシングのBIG MATCHを観戦します。
数えたことはありませんが「リングサイドにやって来ている有名人」と、紹介された現場に何度も居合わせました。ここ数年は、決まってオスカー・デラホーヤのファイトで彼の名を耳にしました。
 確か↓の試合も来ていた記憶が・・・
http://www.byakuya-shobo.co.jp/boxing/reytime_hayashi/reytime17_delahoya.html


 5月5日に大一番を控えたデラホーヤは、アメリカ時間の4月28日にTVインタビューを受けました。その時、デラホーヤの後ろにはROCKYのポスターが貼ってあったんです!! 好きなんでしょうね~。

 5月5日は、スタローンも観戦に来るかな? 次の映画撮影中だと無理か。
ならば、バート・ヤングに会いたいなぁ。この方って、凄くいい雰囲気を出していますよね。

 タイソンに代わって時代を築いたデラホーヤも、選手生活の晩年に差し掛かっております。彼が消えると、ボクシング界は痛いですね。

バートヤング





Goldenboy vs. Prettyboy

number677

 発売中の「Number」677号で、カウントダウン・レポート/デラホーヤ「最後の決闘」という記事を書きました。御一読頂ければ、幸いです。

 デラホーヤを初めてインタビューしたのは、1997年の夏でした。↓こんな記事を書いております。
 http://www.byakuya-shobo.co.jp/boxing/reytime_hayashi/reytime02_goldenboy.html

 最初にデラホーヤの試合を生観戦したのは、同年の1月18日。相手はミゲール・アンヘル・ゴンザレス(東京三太)で、ゴールデンボーイはフリオ・セサール・チャベスから奪ったWBCスーパーライト級タイトルの初防衛に成功します。
 この試合の前座に、プロ3戦目のフロイド・メイウェザー・ジュニアも出場したんです。素晴らしいテクニックとスピードで、初回TKO勝利。「凄い選手が出て来たなー」と感じたことを覚えています。デラホーヤの次戦、パーネル・ウィティカー戦の前座にも登場し、やはり1ラウンドKO勝ちを飾りました。
 しかし、躰のサイズも違うし、両者が闘うなんて当時は予想できなかったですね・・・。

 二人は2月下旬から組まれた記者会見ツアーで全米11カ所を回ったのですが、その初日にデラホーヤはROCKYのテーマ曲をバックに姿を表しました。それを目にしたメイウェザーは、「オレたちがやるのはROCKYじゃない。リアル・ファイトなんだ!」と吐き捨てております。

 ROCKYファンの方、この試合はボクシング界で数年に一度のBIG MATCHです。ご期待下さい。




リアル・チャンピオンたちの物語

ウィザスプーン階段


「オレは、奴隷に過ぎなかったのさ」。
 ROCKYの銅像前に腰掛けながら、元世界ヘビー級チャンプは呟いた。映画の主人公と決定的に違うのは、彼の肌の色だった。米国内で有色人種は、社会的弱者とされる。
 騙され、利用され、使い捨てられていく王者たち。傷だらけで老いさらばえていく反面、彼らは温かく、人間味に溢れていた。踠きながら、苦しみながら、人生と闘う彼らの姿を、私は、どうしても書き留めておきたかった。
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 本日発売になった『週刊新潮』に↑の文章を使用した広告が載っていると思います。宜しかったらご覧下さい。

 ROCKYシリーズで僕が最も印象に残っているのは、第3作中にクラバー・ラング(ミスターT)がロッキーを挑発するシーンです。その際ラングは「この国は、オレが強いのは困る!」という言葉を発します(日本語の字幕で、そうなっていました)。
 ロッキー・バルボアは白人だから人気があるんです。ホワイトが主人公だから、「ROCKY」はハリウッド映画になってヒットするんです。
『レイジング・ブル』『ミリオンダラー・ベイビー』『シンデレラマン』等々、話題になるボクシング映画は白人を描いたストーリーばかりですよね、アメリカ合衆国の一面が覗きます。

 僕が取材を重ねた実在のチャンピオンたちの苦しみは、クラバー・ラングの比ではありませんでした。ヘビー級の元世界チャンピオンが、電話を止められている。3階級を制した名王者が、3ベットルームのアパートで、たったひとつの電球を使い回しながら生活している・・・。
 純粋で心の優しい男だから、他人に食い物にされてしまう----。彼らの叫び、そして現実を書かなければと思いました。

 『マイノリティーの拳』(新潮社)。帯にはROCKY BALBOAの写真が使われております。是非、読んでやって下さい!! どうか、宜しくお願い申し上げます!




チャンプに訊く『ロッキー・ザ・ファイナル』

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 ついに日本でも『ロッキー・ザ・ファイナル』が始まりましたね。前出のケルビン・デイビスに、ちょこっと感想を訊いてみました。

 「もう、最新作のDVD、4回も観たよ。ボクシング・シーンがイマイチって言う声も多いけど、オレはスタローンの演技に努力の跡を感じるね。ターヴァーの俳優ぶりが、ちょっと鼻につくかな(笑)・・・」
――クラバー・ラングに似てるって言われたことない?
ケルビン あるよ! ミスターTのファンなんで、非常に光栄。嬉しい言葉だね。
――6作の中で、一番好きなのは?
ケルビン 全部大好き。1~6までで一つのストーリーだと思って観るから。ボクシングを盛り上げてくれるところも、この映画が好きな要因さ。
――個人的には、今、クラバー・ラングがどうなってるのか、気になるんだよね・・・。
ケルビン そうだね。もう引退しただろうな。俺も気になるけど、続編でもう一度ラングをって訳にはいかないだろう。
――ところで、ハリウッド映画において、黒人が主役ってのはなかなか難しいよね。
ケルビン そりゃあ、そうさ。でも仕方ないよ。オレたちには、やっぱり差別がある。アメリカってのはホワイト中心の国だからな。幼い頃から、分かってるよ。
――それでも、ROCKYが好きな理由を敢えて挙げるとしたら?
ケルビン 貧しい生活を送っていたスタローンが、この作品で勝負を賭けて、夢を勝ち得たところ。まさにアメリカン・ドリームだろ。オレも頑張ろうって気になる!




孤独なチャンピオン

ケルビン・デイビス


 『ロッキー3』でミスターTが演じたクラバー・ラングって、強烈なインパクトでしたよね。
写真の彼と、ちょっと似ているように感じるのは僕だけでしょうか? この選手の名は、ケルビン・デイビス。2004年5月1日にIBFクルーザー級タイトルを獲得しています。
 ・ ・・が、一度も防衛しないまま、タイトルを剥奪されてしまいました。当時、契約していたプロモーターのドン・キングが、まったく防衛戦を組もうとしなかったからです。いわゆる「飼い殺し」にされたチャンピオンです。
 キングとの契約を終えた後、タイトル奪還を目指して頑張っていますが、なかなかチャンスを手にできません。けれど、腐らず、黙々と汗を流しています。そういう孤独なところが、僕にはあのクラバー・ラングと重なるんですよね。

 『ROCKY BALBOA』のDVD、何度も観ているそうです。「ROCKY、大好きだ!」と語っています。





マイク・タイソン

マイク・タイソン

 『ロッキー・ザ・ファイナル』には(ほんの数秒間のシーンに過ぎませんが)、あのマイク・タイソンも出演しております。
 このカットが撮影されたのは2005年12月4日です。前日にラスベガスで行われた統一ミドル級タイトルマッチの会場&リングを片付けずに、撮影で使用たんです。
 僕が現場を訪れると、ちょうどタイソンが演技をしているところでした。「おぉ、巧いじゃん!」と思いましたねぇ。
 
 しかし、今、目にすると、哀しい光景です。『ROCKY BALBOA』がアメリカで公開になった直後の昨年12月29日、タイソンはコカイン所持で現行犯逮捕され、またまた塀の中に入ってしまいます。映画出演は、彼にとって最後の陽の当たる場所だったように感じざるを得ないんですね・・・。

 現在は、カリフォルニア州のドラッグ・リハビリセンターを出て、裁判中の身である元統一世界ヘビー級チャンピオン。最悪の場合は、懲役7年半の実刑を喰らう可能性があります。

 同世代のライバル、レノックス・ルイス(こちらも元統一世界ヘビー級王者)をインタビューした際、「10代の頃は凄くいいヤツだったのに、何であんな風になっちまったんだろうなぁ」と語っていましたが、本当に何であんな風になっちゃったんだろう。




シルベスタ・スタローン

スタローン


 昨年の5月5日、アメリカ・ボクシング・ライターズ協会のパーティーでスタローンと一緒になりました。彼が<Lifetime Cinematic Award>を受賞し、表彰されたんです。

 前出のターヴァーもブランブルも、「素晴らしい人だ」と声を揃えていましたが、本当に感じのいい人です。それは『ROCKY BALBOA』の撮影現場を取材した折にも感じました。監督・脚本・主役をこなしながら、周囲のスタッフへの気配りを忘れないんですね。やっぱり成功する人って違うんだなーと思いました。

 実は僕、ライターになる前、少しだけTV業界で働いていたことがあります。あんまり下らないので9カ月で辞めましたが、ドキュメンタリーが作りたかったんです。
 日本のこの"業界"って何を勘違いしてるのか、自分は天才って思ってる輩ばかりなんです。「お前、何様?」っていう(まぁ、この件に関しては機会があったら、お話します)。少しはスタローンを見習ってほしいものですな。
還暦なのに、腹が6つに割れてるしね(o^▽^o) 




ロッキー・ザ・ファイナル 裏話

ランブル


 「ロッキー」最新作には、2作目のデュランのように、「え?」と唸る方が出演しております。台詞はないのですが、チラッと映るだけでも存在感は抜群。
 ロッキー・バルボアが上がったリングを、目を凝らして見て下さい。彼の顔を"発見"できますので。
 この人の名前は、リビングストーン・ブランブル。現在46歳の元WBA世界ライト級チャンピオンです。バージン諸島、セント・クロイに9人きょうだいの6番目として誕生しました。妹を苛める近所の悪ガキに対抗する為に、ボクシングを始めています。
 1984年6月1日に、当時スター王者だったレイ・"ブンブン"・マンシーニをKOで下して王座獲得。2度防衛に成功しました。小学校の教員免許を持っているだけあって、非常に知的なファイターです。

 1年前に会った際、「撮影は凄く楽しかった。スタローンは本当に紳士で、実に素晴らしい人だった。公開が待ち切れないね!」と語っていました。今は彼女と一緒に、DVDを観まくっているそうです。



石の拳

 「ROCKY」の第1作に元世界ヘビー級チャンピオンのジョー・フレージャーが"出演"したことは前々回に記しましたが、第2作には、<石の拳>と恐れられたパナマの英雄、ロベルト・デュランが起用されました。
 ↓そのシーンです。
http://www.youtube.com/watch?v=tFG6Do4IcuQ

 「ROCKY II」がアメリカで公開されたのは1979年。ですから、撮影はその前年だった筈。デュランは1978年1月に統一ライト級王者となり、その後、タイトルを返上。増量し、ウエルター、ジュニア・ミドル、ミドルと4回級制覇を成し遂げます。

 スタローンも、こんな選手をさりげなく使うところにボクシングへの愛を感じさせますね。

 パナマの貧困家庭に育ったデュランは、幼い頃から靴磨きや新聞配達、洗車などをして、僅かなお金を稼いだそうです。が、スターになってからは、酒を飲みながらバーで遊ぶ時間が増えてしまったと笑っていました。
 彼は何と、50歳まで現役を続けました。今年、国際ボクシング殿堂入りを果たしました。

※写真は2004年9月に、彼をインタビューした後、記念に撮ってもらったものです(^-^) 


RobertoDuran




Antonio Tarver

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 『ROCKY BALBOA』(ロッキー・ザ・ファイナル)で、ロッキーと闘う統一ヘビー級チャンピオン役に抜擢されたのはアントニオ・ターヴァーという現役選手です(4月22日に次戦が予定されています)。

 アトランタ五輪ライトヘビー級の銅メダリストなのですが、2003年までは無名のファイターでした。同年3月1日、彼が追い続けていた同じ歳のスター選手、ロイ・ジョーンズ・ジュニアがヘビー級のチャンピオンとなります。元々72・5キロの王者だったジョーンズが、最重量級(90・7キロ以上)のタイトルを手にした偉業に、ボクシングファン・関係者は胸を打たれました。

 試合後の記者会見でプレスに混じってマイクを握ったターヴァーは、「おめでとう! でも、“最強”を名乗るのは、オレを倒してからにしな!!」と、ジョーンズを挑発したのです。まさに、映画のワンシーンのような光景でした。

 ターヴァーとジョーンズは3度闘い、第1戦はジョーンズの判定勝ち。第2戦はターヴァーの2回ノックアウト勝ち。第3戦もターヴァーの判定勝利に終わりました。

 スタローンは当初、今回の相手役にジョーンズを起用しようと考えていたのですが、「ジョーンズを倒した僕にチャンスを下さい!」というターヴァーの願いを受け入れた、とアメリカでは報じられています。


 出演を熱望しただけに、ターヴァーの演技はお世辞抜きに上手いです。元々コメンテイターとかやらせても巧い器用な男ですが、あんなに演技力があるとは驚きでした。
 ですが、映画に気を取られ過ぎたのか、撮影が終了した後の試合にはボロ負けしました・・・。
 
 彼の役柄名はメイソン・“ザ・ライン”・ディクソン。注目です。