半クラッチ | まえブログ

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日本の自家用車はほぼオートマチック車だが、

中国の自家用車のマニュアル車率はかなり高い。

 

マニュアルに乗っている人はクルマ好きというイメージがあるので、

たまにマニュアル車に乗っている人がいると

「クルマ好きなんですか?」と聞いてしまう。

 

かく言う私の最初の車も実はマニュアルだった。

理由は単純。

スポーツカーだったからだ。

大のクルマ好きと言うわけではないが、たまたま買ったのがスポーツカーで、

マニュアルだったと言うのが正直な話かもしれない。

 

欧州もマニュアル率が高いと聞いたことがあるが、

なぜ中国でも運転の簡単なオートマを選択せずにマニュアルを選択するのか、詳しい理由は分からない。

 

会社へ行くときにいつも乗っているタクシーの運転手はシルフィに乗っている。

そのシルフィもやはりマニュアル。

日本でセダンのシルフィをマニュアルで乗ってる人はかなりレアだろう。

 

ところで、こんなことを言うのは失礼なのだが、彼は運転がかなり下手くそである。

何が下手くそかというと、走り始めの半クラッチ。

会社に着くまでに必ず一回はエンストする。

なぜマニュアルに乗っているのかが分からないくらい半クラッチが下手くそである。

 

いつものように家を出て車に乗り込んだ。

走り始めるとすぐに体がガクンとなった。

エンストだ。

運転手は慌ててキーをひねりエンジンを再始動する。

まぁいつものこと。

気にはならない。

 

会社までの道のりには当然信号があるので、クルマは必ずストップアンドゴーを繰り返す。

 

信号待ちからのスタート。

当然運転手は半クラッチから始める。

しかしここでもまたエンスト。

 

ブーブーブーブーブーー

 

後方からは、なんでこんなところで、もたもたしているんだとばかりにホーンが鳴り響く。

 

何故この運転手がこんなにエンストするのか、理由は分かっている。

それは、アクセルを開けずにアイドリングの状態で半クラッチを当てているからだ。

 

普通、走り出すときには、まずアクセルを少し開け回転数が少し上がったら、ゆっくりとクラッチを当てていく。

そうするとクルマはゆっくりと進み始める。

進み始めたらさらにゆっくりとアクセルを開けつつ、クラッチペダルからゆっくりと足を離していけばいい。

ただそれだけ。

 

しかしこの運転手はアクセルを開けずにエンジンのアイドリングの回転数だけで一生懸命クラッチを繋ごうとしていることにエンストする理由があると思っている。

エンストするのは当然。

半クラを教えてあげたいが、残念ながら私にはそれを教えてあげるだけの中国語能力がまだない。

 

クルマは会社に近づいて来た。

本来であれば、会社を少し通り越した交差点で左に曲がればいいのだが、

手前の見通しの良い直線道路から左に道路を横切ることができるポイントがある。

対向車線は前からクルマがどんどん来るが、そのすき間を狙って、すっと横切ればかなりのショートカットとなる。

 

中国のドライバーはショートカットが大好きだ。

この運転手も例にもれず、まわりのドライバーと一緒にショートカットに便乗していく。

 

しかしこのショートカットはタイミングが重要。

特にここ中国では、このタイミング、すき間をいかにすり抜けるかで、渋滞を素早く通過できるかがかかっている。

 

運転手は前から来るクルマのすき間を狙って止まっている。

次のクルマが通過すれば、その次のクルマまでには少し間隔がある。

 

ここだ。

 

この次のクルマが通過すると同時にサッと横切ればいい。

 

運転手に目をやると、運転手が少し緊張しているのが見えた。

よく自分でエンストすることを分かっているのだろう。

 

そして私たちのクルマは先頭で道路を横切る順番待ちをしている。

 

もし、対向車線に出たところでエンストしたら…

 

私もその緊張を感じながら、次の対向車が通過するのを身構えた。

そしてその対向車が目の前を通り過ぎた。

 

よし、今だ!

いま半クラッチだ。

 

ガックン

大きく体が前後に揺れた。

 

一番恐れていたことが、まさに今起こっている。

 

クルマは対向車線に出たところで止まってしまった。

右からは対向車がホーンを鳴らしながら猛スピードで迫って来ている。

 

運転手はエンジンをかけるために焦ってキーに手を持って行き、そしてキーを回した。

 

ガックンガックンガックン。

私の体はありえないくらいに前後に揺れている。

 

運転手はパニックなのだろう、クルマのギアを入れたままで、さらにクラッチも繋いだ状態でキーを回している。

 

切れ切れクラッチを切るんや!

左足でクラッチを踏んでからキーを回せ!

 

当然日本語は通じない。

 

クルマはガックンガックン動くだけで、

全くエンジンがかからないことに運転手はパニックになったまま、

右手はシフトレバーを一速に入れたり、ニュートラルに戻したり、

はたまたキーを回したりと、アレヤコレヤと阿修羅のように手を動かしている。

 

運転手は分かっているのか分からないが、

クラッチを切っていない状態だと、キーを回せばガクガクしながらではあるが、クルマは前に進む。

私はガックンガックンするクルマの中でゆっくりと目を閉じ、体をシートに埋めた。

 

パニックがおさまるのを待つしかない。

 

クルマは対向車線の車たちからの大音量のホーンの中、ガックンガックンしながら、対向車線をなんとか通り抜けた。

 

対向車線を通り抜けたところで、エンジンが偶然かかった。

 

運転手はアイドリング状態からフワッと半クラッチをしてギアを繋げた。

しれっとした顔をして。

 

そして何事もなかったようにクルマは会社へと向かった。